さて、DJI Mini 3 Proのファーストインプレッション記事、後半の「その2」だ。ちなみに前回(前半)の記事はこちら。
今回は実際に飛ばしてみた感想を書こうと思ったのだが、ならば動画を一本作ってしまえ、ということでファーストインプレッション動画を編集して作ってみた。
これを元に某GIG○ZINEとかの、有象無象のYouTube動画に全ておんぶに抱っこの動画解説手抜き記事のようにお気軽に書いていこうと思う。いや嘘だ。ちゃんと動画の情報をより詳しい考察で補完していこうと思う。
操作感覚
操作感覚で真っ先に感じるのは、左右の回転がかなり敏感なことだ。Mavic miniの頃もそうだった気がするのだが、今はDJI Air 2Sの操作感に慣れてしまっているので、どうも違和感がある。
また、上昇はかなり遅く感じられるが、水平方向はそれほど遅いとは感じられなかった。
動作に関する各種パラメータだが、一般的な動作モードであるだろうNモード(Mavic MiniはNモードがないのでPモード)で比較するとこのような違いがある。
Mini 3 Pro | Air 2S | Mini 2 | Mini | |
---|---|---|---|---|
最大上昇速度 | 3m/s | 6m/s | 3m/s | 2m/s |
最大下降速度 | 3m/s | 6m/s | 3m/s | 1.8m/s |
最大飛行速度 | 10m/s | 15m/s | 10m/s | 8m/s |
最大角速度 | 75°/s(注1) | 90°/s | 60°/s | 130°/s |
(注1)アプリでの調整可能範囲:20°/s〜120°/s
と、まとめたところで実はMavic Miniが角速度が圧倒的に一番速い、ということに今更気がついた。そして実際はDJI Air 2SよりもDJI Mini 3 Proの方が最大角速度が遅いのだ。ならばなぜDJI Mini 3 Proの方が回転動作に敏感さを感じさせられるかと考えると、おそらく機体重量の差により、加速が速いのだと思う。
最大飛行速度がMini 3 Proが10m/sに対してAir 2Sが15m/sもあるのに、それほどMini 3 Proが遅く感じられないのも同じ理由かもしれない。上下方向は3m/sと6m/sで倍も性能が違うために、流石にカバーしきれていない気もする。
ところで、スペック上はMini 3 Proは最大角速度の調整がアプリで可能と書いてあるのだが、DJI Flyのどこをみてもそのようなパラメータは見当たらない。「制御」の「詳細」中に次のような画面があるのだが、これはコントローラのスティックの倒し具合と実際の動作との関連を設定するもののようだ。
ただし、上で見てきたように実際にはMini 3の最大角速度はAir 2Sよりも遅いため、過剰な俊敏さの原因が慣性の問題であるのならば、むしろこういう操作感の方で調整した方が適当な可能性もあると思う。ということでNモードの回転に関するパラメータを0.2から0.1に落として、反応を鈍めにしてみた。次に飛ばす時に試してみよう。
デジタルズームによる望遠
DJI Mini 3のセンサーは48メガピクセル(つまり8K)と、DJIのコンシューマ向けドローンとしては最大の画素数を誇っている。だが実際に8Kでそのまま写真を撮る必要性はあまりないと思うが、まずはこの恩恵を感じられるのはデジタルズームだと思う。
動画では望遠で機体を静止させる動画を載せたが、望遠で機体を移動させてもなかなか面白い効果が得られる。ズーム範囲は4Kで2倍、2.7Kで3倍、FHDで4倍となっている。
60度まで上方を向けるジンバル
DJI Mini 3 Proのジンバルはなんと60度まで上方を向くことができる。これもDJIのコンシューマ向けドローンでは最高スペックとなっている。ちなみにAir 2Sが拡張モードで24度、Phantom4が30度、Mavic 3が35度、Inspre2が40度、FPVが58度まで上を向くことができる。ただしFPVは下方を50度までしか向くことはできない(DJI Mini 3 Proは90度まで下を向くことができる)。
実際に上を向けてみると、最大角で上を向かせて、画角も考慮した計算で上方85度くらいまで写るようになった状態にしても、プロペラが全く写り込むことはない。おそらくMini 3 Proの前方のアームがかなり長く設計されていることも、この視野の広さに寄与しているものと考えられる。
ただし現状では、パノラマ機能のスフィアモードの撮影に、この上方を向けるジンバルが活用されているようには見えない。DJI Air 2Sのスフィアモードと同様の実効的な画角となっているようだ。カメラを縦向きにしてこのジンバルと一緒に撮影すれば、上下方向180度の完全な撮影も可能となると思われるので、ぜひ今後のファームウェアアップデートで機能追加をお願いしたい。
クイックショット
ドローンにありがちなカメラワークを自動的に撮影してくれるクイックショットはなかなか面白い。衝突防止機能が追加されたため、Mini 2よりは安心してクイックショットを試すことが可能だろう。ロケット的な上に引いていく動作からシームレスにスフィアモードのリトルプラネットに移行していくアステロイドモードはなかなか面白い(Mini 2にはアステロイドモードはないようだ)。
ただし、クイックショットモードでは最高画質が1080pのFHDモードとなるようなので、画質としては今一つと言える。
NDフィルターとND/PLフィルター
DJI Mini 3 Proのカメラはf1.7と非常に明るくなっているが、本体には絞りが用意されていないため、本来はこのような明るい場所で撮影する時にはNDフィルターで光量を落とすことが望ましい。
まだNDフィルターを入手していないために、今回の動画では今一つの画質になってしまっている可能性があるし、各フレームのシャッタースピードが非常に短くなっているためにガクガクした印象のある動画になってしまっている。
DJIからも純正のNDフィルターがリリースされているが、今回はこれを購入していない(今見ると在庫切れだし)。
なぜかというと、DJI Air 2SではFly More Comboでついてきた純正NDフィルターではなく、PolarPro社のND/PLフィルターを常用していたからである。Mini 3のFly MoreキットPlusにはNDフィルターがついてこないが、いずれにせよサードパーティ物を使うつもりだった自分にとっては都合が良い(まだFly MoreキットPlus届いていないけれども)。
以前Polar Pro社のAir 2S用フィルターを紹介した記事はこちら。本当にひどい品質やひどい設計のものも珍しくない怪しい中華フィルターと異なり、ドイツ製の偏光板を使った非常に高品質のフィルターだ。その代わり中華フィルターより3倍高いのだが。
で、Mini 3 Proに関しても、PolarPro社が7月中旬にND/PLフィルターのセットであるVivid Collectionなどをリリースするようなので、直販で注文してしまった。Air 2S用のVivid Collectionと同様、ND8/PL、ND16/PL、ND32/PLの3枚組みらしい。
出典:https://www.polarprofilters.com/collections/filters/products/mini-3-pro-filters
まあ、国内で通販予定の業者さんもあるようだし、おそらくリリースされればAmazonなどでも買えるはずだ(Air 2S用はAmazonで購入した)。おそらく$25の送料がかかる直販より安いはずなので、そちらの方がおすすめだろう。
今回の動画でもこの、ドローン自身の影を中心にブロッケン現象のように放射状の模様がキラキラとするこのシーンが結構気に入っているのだが、高品質なND/PLフィルターの導入でさらに綺麗な海が撮れるのではないか、と期待している。
静止画撮影
静止画のサンプル、動画中でもこっちの写真を使った方が良かったかな。まあいいや。センサーのスペックに余裕があるためか、静止画も非常に綺麗に撮影できる。AEB機能もついているので、今度手動でHDR写真を撮影するのにも挑戦してみたいかも(そうすると曇りの日でも飛ばすモチベーションが増えるな)。
標準的な画質は4:3モードで4032x3024の12MP。48MPによる撮影は通常の静止画とは別モードになっているので注意。
12MP撮影時は2倍のデジタルズームが可能。これもとても綺麗。
パノラマ撮影
最近、DJI Air 2Sでもパノラマ撮影の広角モードが結構気に入っていたのだが、DJI MIni 3 Proでもこの広角モードはかなり良い写真を作ってくれる(軽いHDR処理がかかっているように思う)。写真のサイズは7200x5376ピクセル(ブログの制約からフルサイズでは載せていない)。
上の写真から一部を切り出すとこんな感じだ。悪くない。
180度パノラマ写真もなかなか綺麗に仕上がってくれる(水面などシビアな場所では多少の上下のズレが出るのは仕方がない部分もある)。
先ほども書いたが、360度パノラマ写真を撮影するスフィアモードでは、残念ながらまだ上方を向けるジンバルが活用されていない。
是非ともそこを解決した上で、より美しい360度パノラマ写真を撮影できるようになってほしいと思う。下の画像をクリック(タップ)すると、360度パノラマ写真を見ることが可能だ。
もちろん360度動画を撮影することはできないのだが、それはMavic Air 2やDJI Air 2Sに取り付けて360度動画を撮影するInsta360 Sphereが先日発売されたばかりなので、そのような専用デバイスに頼るのが、現在のところ正解であると思う。ちなみにこちらも注文しているのだが、なかなか発送されたという連絡がない。
実に面白そうだよねこれ。以前のInsta360 One Rのドローンオプションは、GPSを塞いでしまうためにATTIモード下での操縦となってしまうなどの問題があったようだけれども、こいつはGPSを含む一切のセンサーを塞がないとされているので、その点も期待している。
(追記)Insta360 Sphereを購入したのでファーストインプレッションを書いた。
前回書き忘れた件の補足(バッテリーの軽さ)
前回重要な件を1件書き忘れていたので補足する。Mini 3 Proを購入して最初にびっくりしたのはバッテリーの軽さだ。DJI Air 2Sのバッテリーは197.5gある。ほぼMavic Miniの機体重量と同じである。
それに対してMini 3 Proの標準バッテリーは80.0g。実に半分以下の重量だ。
もちろんMavic Miniのバッテリーは50.0gなのでそれには及ばないのだが、何しろ容量が半分以下で、18分しか飛ばないバッテリーと比較しても仕方がない。Mini 3 Proは標準バッテリーでも34分飛行するのだ。
まとめるとこんな感じだ。
Mini 3 Pro | Air 2S | Mavic Mini | |
---|---|---|---|
バッテリー重量 | 80.0g | 197.5g | 50.0g |
容量 | 2453mAh | 3750mAh | 1100mAh |
最大充電電力 | 37W | 38W | 18W |
ちなみにまだMini 3 ProのインテリジェントフライトバッテリーPlusは手元に届いていないが、スペック上は約40gの重量プラスで121g容量は3850mAhとAir 2Sのバッテリーを越える容量となるはず。なんと最大充電電力は58Wだそうだ。これでもまだAir 2Sのバッテリーの約60%の重量に収まる。これはすごい。
まとめ
ということで、DJI Mini 3 Proは非常に面白いドローンである。確かに飛行性能や安定性ではDJI Air 2Sの方が上なのだが、旅などに持っていくことを考えるとボディの小ささや軽さは実に魅力的である。一方で、物理的サイズに左右されない機能や性能的部分に関しては、実に挑戦的な性能や機能が実現されており、Proと銘打たれていることが納得できる仕様となっている。
DJI RCは、まだ真夏の猛暑下で使っていないのでその点の不安は残っているが、なんと言っても飛行前のセットアップが圧倒的に簡単になるし、スマホのバッテリーの心配をしたり、直射日光下で全く見えなくなったりしないところは非常に良いと思う。
ということで、お値段が張ることもあり、初心者にはちょっと敷居が高いと思われるのではあるが、実に良いドローンだと思う。おすすめ。
ところでDJI RCのmicroSDスロットって何に使うの? 本気でわからなかったりする。WiFiで動画とか転送してきても、所詮microSDに記録されるなら結局、本体のmicroSDを抜いてPCとかに突っ込んだ方が楽だよね? 以前スマホのストレージを溢れさせそうになった経験から、DJI Flyのキャッシュ保存機能は真っ先に設定で止めているけど、もしかしてキャッシュをmicroSDに残す機能があったりするのかな?
(追記)リモートID登録に関してはこちらの記事を書いた。
xckb.hatenablog.com
こちらの記事に続く。