「たちばな」の思い出
さて、自分が一番人生で長く通っていた飲食店はどこだろう、とか思うと、やはりその1つとして候補に上がるであろうお店は、矢上(横浜市港北区日吉)にあった食堂「食楽部 たちばな」だ。学生の頃は本当に毎日のように通い詰めたし、その後も近所に用事がある時や、時に用事がない時にも顔を出して、おそらく都合30年以上、ちょくちょく通っていた食堂だ。特に院生の頃とか目の前のキャンパスにほぼ住んでいたも同然だったので、1日2食はここで食うことも多かった気がする。
開店から約50年、間に休んでいた期間もあったようなので、48年の長きにわたって、学生たちの腹を満たし続けてくれたということだが、そのほぼ後ろ半分以上の時間をお付き合いしてきた自分としては、本当に感謝している。その食堂が、2024年10月末で閉店となるということを知り、本当に名残惜しかった。
「たちばな」は、学生向けの食堂であり、閉店直前まで昨今のインフレにも関わらず、リーズナブルなお値段で食事を提供し続けてきてくれたのだけれども、それにも関わらずなかなか個性的なメニューを揃えていてくれていて、しかも美味しいという実に素晴らしい食堂だったのだ。Insta360 X4で撮影した360度写真を残しておく。
(自分を含むお客さんの姿をAdobe Photoshop & Fireflyで可能な限り隠したのだが、一部難しいところがあってちょっとイマイチになっているがご容赦)
ということで、閉店情報を聞いて以来、あらためて何度も伺いながら、懐かしいメニューを食べていったのでその記録を。
ちなみにこちらがメインのメニュー。10月に入ってからどんどんできるメニューが減っていった。こちらは基本的に昔から変わっていないメニューの認識。
さらに、カウンターの上にもう一つメニューがあった。これらは変わりゆくメニューという認識。だがそんな頻繁に変わるわけではなく、自分が学生で亡くなってから加わったメニューは、とりもも肉トマトソース煮定食と、ナスの甘辛炒め定食だ。この辺りのメニューは学生の頃の記憶がないので実は食べたことがない。
そして学生の頃にはあったのになくなったメニューは、ランチタイムのスパゲッティに、アジフライ定食だろうか。アジフライ定食は、自分が学生の頃に追加されて、そしてその後なくなってしまったメニューである気がする。ランチの和風スパゲッティは、自分が学生だった頃の定番の1つだったこともあり、なくなってしまい実に残念である。
閉店前の訪問
ということで9月20日、同じ研究室の同期のM君(学生の頃は俺と同じくらいここに通っていたと思う)と。ここで2人で食うって、まあ学生の頃は何度もやった気がするけどそれ以来だな。ということでまずはビール。夜は研究室でのメインの活動時間なので、当時は酒を飲むことは原則なかった。ということで、ここでビールを飲んだのは実は過去に数回しかない。
そして餃子。この餃子もなんとも懐かしいのだが、ビールと飲むとまた餃ビーで実に良い。学生の頃に味わっていないこういう組み合わせもいいものだなー。
俺がメインで頼んだのは、ポテト・ニンニクの芽細切り炒め定食、略称ポテにん。
今なら中華料理の炒土豆絲(チャオトゥードゥースー)のアレンジだなとわかるんだけれども、あんまり町中華では見ないメニューをこうやって半ば学食な場所で提供し続けてきてくれたのは嬉しいな、と思う。美味いのだよこれが。
M君は肉茄子炒め定食。肉と茄子の炒め物ながら、味噌炒めではないところがいい。生姜炒めで茄子。最高の組み合わせである。俺は味噌炒めよりもこちらの醤油生姜炒めの方がずっと茄子という素材に合っていると思う。最高だ。
ただ、俺が学生の頃はもう少し汁が多めだったと思う。そこが昔との違いかな?
そして焼きそば! これは俺が学生の頃に一番頼んだメニューだったと思う(時に、ラーメンセットのアレンジ裏メニューとして、焼きそばセットというものができるということを知ったのだが、それで頼んだことも多かった)そして、このソースでも醤油でもない塩焼きそばが、実に美味かったのだ。
麺も蒸し麺ではなく、おそらくラーメン用の麺をその場で茹でて使っていたと思う。これに胡椒をふっていつも食べていたのだが、途中から辣油を味変に使うと最高だった。
この日の後は一人で行ったり、あるいは家族と一緒に行ったりしたのだけれども(実は妻もこの界隈に勤務していたので割と通っていたらしい)、その時に食ったメニューを、あまりダブらない範囲でを紹介していこう。
こちらは焼きそばセット。本当はラーメンセットがメニューだったのだが、ラーメンを他の麺類に変えることができるという裏技があったので、いつも焼きそばセットで食ってた。焼きそばとミニチャーハン、唐揚げのセット。
こんな感じで焼きそばは胡椒を振って食ってた。
ミニチャーハンと唐揚げ。学生時代はこの唐揚げは手羽元の唐揚げだったが、今は普通の唐揚げになっていた。クリスピーで良いのだ。
ある日行ったら、たまたま知人がいたので一緒に食ったのだけれども、一人で焼きそば大盛りとチャーハンの大盛りを食っていて圧倒された。ちなみに麺の盛りには、並、中、大があって、それぞれ1倍、1.5倍、2倍、チャーハンの盛りには並と大があって、それぞれ1倍と1.5倍だった。が、チャーハンには裏メニューでダブルがあって、それは2倍という体系になっていたな。
流石に学生時代の俺も、この2つのうち1つが限界だったなぁ。
こちらはうちの少年が食っていた焼肉定食。これも結構食ってたなぁ。美味かった。
うちの少年はこのチャーハンと焼きそばが大好きだった。
この肉詰めピーマンフライも最高だった。
若鶏の和風唐揚げ定食は、確か俺が学生だった頃に追加されたメニューで、結局最後まで生き残った。
クリスピーな唐揚げに甘酢あん的なソースをかけたこれ、結構気に入っていたぞ。
ちなみに実際はこの時はレバニラ定食を食べたかったのだけれども、閉店に向けてメニューが絞られてきていたのでレバニラやロースとんかつ、。カレー系は真っ先になくなっていたのだった(ロースとんかつがなくなったので、割とよく食っていたカツの甘酢あんかけが消えていたのも残念だった)。
最後の方では、麺がなくなってしまったので麺類が食べられず、焼きそばがもう一度食べられなかったのが心残りだな。最後に訪問したのは10月28日、オーダーしたのは焼きそばの次に多分回数を頼んでいたであろう肉なす炒め定食。
こちらがもう食べられないのはもう残念すぎる。
というわけで、意図せずに30年以上のお付き合いになったけれども、ありがとうございました。もうこの風景が見られないのは残念ですが、最高でした。
以前閉店でショックでブログ記事を書いた「名前のない餃子屋」の時も本当に残念だったんだけれども、今回はそれよりもずっと付き合いが長いからなぁ…。
再現レシピ準備中
とはいえ、もうこの味が食べられないのは残念なので、自分が最も頼んでいたメニューベスト3の、焼きそば、肉なす炒め、ポテトにんにくの3つに関しては、家でお手軽に割と近い味に再現可能なレシピを探求しているので、出来次第ここで書いておこうと思う。今一番レシピが完成に近いのはポテトにんにくだな。
この写真だと本物よりもジャガイモ細めに見えるけど、実は単に3人分くらい盛っているだけで大盛りなんだよね。あと、本家では豚コマ使ってるのはわかっているんだけれども、ここでは豚バラ薄切りを使ってる。豚コマで美味しい炒め物を作るのは結構実は難しいのだ。豚バラの方が楽。そんなノリで、正確さではなく、素人でも可能な限り簡単に近い味を楽しめそうなレシピ、に仕上げたいと思ってる。
というわけでもうちょっと待っていてくれ。さらに再現度を上げたいので。
関係資料
横浜日吉新聞(2016年9月29日)「慶應矢上キャンパス前で45年、理工学生待つ「たちばな」の忘れられない家庭的な味」
hiyosi.net
慶應義塾大学理工学部同窓会(2024年10月24日)「【悲報】創業48年の老舗定食屋「たちばな」10月末に閉店(動画を公開しました)」
www.dosokai.st.keio.ac.jp