(徐々にネタバレを含みますので、本作を未読の方は適当なところでパスしてください。一応、1巻程度の軽いネタバレで済むあたりに警告を入れておきます)
いや、何度かこの漫画については書こうと思っていたんですよ。でも一気に1〜3巻を読んだ時点では忙しくて書く暇がなく、4巻を読んだ時点でもやっぱり忙しくて書く暇がなく、5巻を読んだ時点では…(今となってはアレなのですが)「ん? ちょっとイマイチ?」とか思って書くモチベーションがなく…、だったのですが、今回ばかりは何としても書かざるをえない、ということで、やっと重い腰をあげることにしました。
そんな衝撃を味わったのは、発売されたばかりの漫画「僕だけがいない街」の第6巻なのです。
- 作者: 三部けい
- 出版社/メーカー: KADOKAWA / 角川書店
- 発売日: 2015/07/04
- メディア: Kindle版
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既にそこそこ有名な作品になってきていましたし、来年1月からノイタミナ枠でアニメ化されることも決定したので、ご存じの方も多いでしょう(公式ハッシュタグはやはり「#僕街」になったようです)。
この漫画は、基本的には連続少女殺人犯を追うミステリーではあるのですが、そこに「再上映(リバイバル)」といういわばタイムリープの概念の入った、SF的要素を含む物語です。
これだけ要約されると、あんまり面白そうだと思えないかもしれないのだけれども、まあとにかく騙されたと思って1巻を読んで欲しい、と思います。私は3巻まで出ていた時にたまたま1巻をKindleで買って、止められなくなってその日のうちに3巻まで全部買って読み切ってしまいましたが、それに飽きたらず、同じ作者(三部けい)の他の作品も全部買って読んでしまいました。この人、すさまじいページターナーですね。
- 作者: 三部けい
- 出版社/メーカー: KADOKAWA / 角川書店
- 発売日: 2013/05/18
- メディア: Kindle版
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主人公は、何らかの重大事件や事故に遭遇する、もしくは遭遇しそうになると、自分の意志とは関係なく「再上映」という現象が起こって過去に戻ります。この「再上映」は何度でも繰り返します。そしてそこで事件・事故を防ぐなど、何らかの大きな変化が生じると、時間は再び元に戻る(しかし具体的にどのような条件で「再上映」が終了するかは、現在のところ明らかではない)、という基本設定です。
そんな基本設定の上に、ドラマは展開します。「再上映」の能力で人を救った結果として交通事故で大怪我をして、入院した主人公のところに母親が上京してやってくるのですが、この母親が突然殺されてしまいます。さらに主人公はその犯人の罠にかかり、母親殺しの殺人犯に仕立て上げられ、警察に追われる身となります。
そしてその真犯人は実は、主人公の少年時代に周囲で犯行を繰り返した連続少女殺人犯である、という事が明らかになります。この結果として、未だ体験した事のない、18年も昔の少年時代の「再上映」、つまりタイムリープが発生します。
少年時代の姿となった主人公は、母親を救い、自分の未来も変えるため、そもそもの連続少女殺人事件を防ぐための行動を開始する…というところから物語は始まります。
(このあたりでネタバレの関係上、未読かつ読む気がある方は先に漫画を読んだ方がいいかも)
この「僕だけがいない街」は、ミステリーにタイムリープという要素が加わった物語ですが、そもそもタイムリープって能力が反則すぎるだろうとか、タイムリープの終了条件が明らかとなっていないという点で、色々とミステリー的にはアレなのかもしれません。
しかし、その中で繰り広げるドラマは実にタイムリープモノとして良くできていて、時にホロリとさせられ、また巧みに散りばめられた伏線が、事件の真相に近づいていく様はミステリーとして実に見事です。
ただ、その伏線の収束が想像したよりもかなり早く、4巻あたりでほぼ真犯人は特定できてしまいますし、主人公の周囲の事件はあらかた良い方向で解決がついてしまいます。
そして5巻ラストでついに真犯人が明らかになる…のです。これを読んで、「ああ、これで次の巻あたりで大団円で終わってしまうのかなぁ、そうするとやや拍子抜けだな。序盤は無茶苦茶面白かったんだけどなぁ」とか正直思ってました(はじめに書いたとおり、これが5巻が出た時に、何も書かなかった理由です)。しかし…。
見事にミスリードに引っかかってた! 俺はバカだった。 悔しい、悔しすぎる!!!
この6巻を読んで、あまりの衝撃の展開に口あんぐりですよ。そういえば、「再上映」の終了条件は今も明らかになっていないのです。そして様々なドラマに涙腺が緩くなり、さらに忘れていたような伏線をいくつも見事に回収した後、おおっ、謎の再会がっ!という実にいいところで今回もクリフハンガーされてしまいます。しかし本当に、どれだけ巧みに練られたストーリーなんだろう、これ。
そういえば原作の三部けい氏は、以前のインタビュー記事で、次のようなことを語っていました。
――たしかに衝撃的でした。いまストーリーは、どれくらい先まで完成しているのでしょうか?
三部 まだあんまり決めきってはいなんですけどね。話を考えるときは、途中でストーリーが枝分かれして、いくつもの結末ができあがるんです。そのなかから最終的に何を選択するか、という話ですね。
――ではラストがどうなるか、先生自身にもまだわからない、と。
三部 ラストを決めてない……というわけではないんですが、そう大きく違わないモノがいくつかある感じ。先々を考えてネームを考えるんですけど、そこからまた分岐してしまう。毎回ネームを書くときに、頭のなかに4個も5個も枝分かれしたものがあるんです。
――むかし流行ったゲームブックみたいな感じでしょうか?
三部 まさにそんな感じです。だからエンディングも、何パターンか考えてますよ。
――第1巻のあとがきでは、ストーリーに関しては「計算とアドリブで半々」と書いてました。
三部 今この場で「ラストまで話して」と言われたら、話せるんですよ。でも、その通りの内容になるとは限らない。エンディングが変わるかもしれないし、あるいはラストだけ一緒で途中すべてが変わるかもしれない。
うーむ。あれだけ綿密な伏線を散りばめつつ、複数の着地点があるのか…。
どうやってもう一度犯人に近づくのか? あるいは異変を知った犯人の方から再び動き出すのか? どのような形で最終回を迎えるのか? …もう本当に楽しみで仕方がありません。できれば同じノイタミナ枠でアニメ化ということで、「四月は君の嘘」のように、アニメと原作でタイミングを合わせてほぼ同時に終了、という大技を再びやってくれると嬉しいかなぁ、と思ったりもします。
ところで、アニメ化となったということで、聖地巡礼はやはり苫小牧がメインとなるんですかね? 1980年代の資料とかを集めるのはとても大変だと思うけれども、ぜひ街と時代のリアリティを感じさせる美術をアニメ版には期待しています。
結論:超オススメ!