xckb的雑記帳

身の回りにあったことを雑多に語ります。

感想・レポート「第144回アニメスタイルイベント 南極到着記念!『宇宙よりも遠い場所』を語ろう!!」

アニメスタイルイベント初参加!

さて、4月9日に阿佐ヶ谷ロフトAで開催された「第144回アニメスタイルイベント 南極到着記念!『宇宙よりも遠い場所』を語ろう!!」というイベントに行ってきた。登壇者は「宇宙よりも遠い場所」のいしづかあつこ監督にキャラクターデザイン・総作画監督サムシング吉松こと吉松孝博さん、そしてアニメスタイル編集長の小黒祐一郎さん。

イベントの内容自体は、たとえばこのTogetterや一部まとめサイトあたりでもまとめられていたりするので、今更トークの内容だけ書いても仕方がないかな、と思うため、自分の雑感などを含めた内容として、書き連ねていきたいと思う。なお、録音したりしていたわけではないので、多少の間違いはあるかもしれないためその点、ご容赦いただきたい。

togetter.com

なんかチケットはかなりの争奪戦だったようで、速攻で売り切れたみたい。もちろんイープラスでヨーイドンで頑張ってゲットしたわけだけれども、整理番号は75番。もう少し遅れていたらアウトだったろうな。

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ところで、アニメスタイルって現在は結構な不定期刊で、アニメ作品の放送や上映などが終わってしばらく時間が経ってから、大特集とかをドーンとやるイメージの雑誌(ムック)なんだけれども、なにげに趣味が合うのか結構買ってる。

商売っ気よりも編集が気に入ったアニメだけを積極的に扱う事を優先するスタンスや、ひたすら文章が多くてしかも熱いところなどから、俺は勝手に「21世紀のアニメック」と呼んでいる(俺としては最高の褒め言葉のつもり)。

特にこのアニメスタイル006号(「SHIROBAKO」と「四月は君の嘘」の特集号)なんてもう神すぎて、俺としてはもはや伝説の域に達していると言ってもいい、素晴らしい俺得刊だ。両作品のファンでまだ読んでない人がいるなら、まだ在庫があるから今のうちに読んだ方がいいぞ。

アニメスタイル006 (メディアパルムック)

アニメスタイル006 (メディアパルムック)

で、アニメスタイルがしょっちゅう色々なイベントを開いているのは知っていたのだけれども、なかなか足を運ぶきっかけがなかったんだよね。Facebookで知人が足を運んでいるのを見て、面白そうだなーと思うことは何度もあったんだけれども…。そんな時にふと知ったのがこの「第144回アニメスタイルイベント 南極到着記念!『宇宙よりも遠い場所』を語ろう!!」だったわけ。これはもう行くしかないよな。

会場の阿佐ヶ谷ロフトAに行くのは実は初めて。ロフト系列は新宿ロフトNaked Loft下北沢シェルターは何度も行っているけれども、ここは初めての箱だし初めてのイベントだからやっぱり勝手がわからないので、一応ある程度腹ごしらえしてから行ったのだけれども、結論から言えばそんな必要なかった。

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なんという盛り沢山なイベントコラボメニュー! これらのメニューはサムシング吉松氏の渾身のアイデアらしい。

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そして、最低限チャージの500円を越えた部分に関して、500円ごとにイベント最後に行われる抽選の、抽選券を1枚ずつ配布するという企画。最初この制度を全く把握しておらず、とりあえず「南極よりもいカクテル」のアルコール入りの方を1つだけ頼んだのだけれども、抽選券はなし。

というわけで、結局その後「屈辱の魚肉ソーセージステーキ」を頼んだら抽選券が来た。なるほど。よりもいカクテルはカルピスにブルーハワイ的な感じ。そしてトークでも触れられていたけれども魚肉ソーセージ、結構いいやつだったのか、全然屈辱っぽくなかった。まさに科学すごい。

基本酒飲みなので甘い酒は一杯にとどめ、その後は軽くハイボールを飲んでた。

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肉じゃがやたこ焼きもうまそうだったな。今にして思えば「オーロラ」も飲んでみたかったけど、甘そうだったし、まあいいか。

第1部:吉松孝博さん×小黒祐一郎さん

第1部は吉松孝博さんに小黒祐一郎さんが尋ねるスタイル。乾杯のコールは「よりもい!」だった。このパートだけはネット中継されていたので、会場に来られなくても見られた方も多かったはず。

今回のイベントのタイトルが時期外れ

そもそも今回のイベントのタイトルが「南極到着記念」になっているのだが、ストーリー上南極に着いたのは第9話で放送は2月27日。なんかおかしくない? という件に関してだけれども、実はこのイベントはアニメスタイルのイベントには珍しく、放送終了してすぐにイベント開催していると。

で、第5話を放送した時点で吉松さんがノリノリだったこともありこの企画を決めたんだけれども、そもそもその時点でいつ南極に着くのかわからない、という状態だった関係で、こんなやや時期外れなタイトルになったらしい。

小黒「そもそも、これ南極着くんですよね?」

そういえば俺も第5話見てるあたりまで、本気でそういう疑問を持っていたなぁ…。少なくとも、南極ついてからの時間が十分にあるのだろうかと疑問視していた。

「よりもい」のキャラクターデザイン

2015年に「よりもい」の原型となる企画がスタートしていたのだけれども、その時に「吉松さんキャラクターデザインですよ」という指名をもらって、でも「ギャルもの? えっ?」という感じだったらしい。まあその頃は全然南極と関係ない企画だったということだけれども(後述)。

実は俺、吉松さんキャラクターデザインの作品ってどのくらい見たことあるのだろうと思って吉松さんのWikipediaを見てみたんだけれども、見事なまでにほとんどかすってない。えっスレイヤーズも、と言われそうだけれどもあの時期はアニメから距離をおいていた期間だったから、もう「吸血鬼ハンターD」や「超獣機神ダンクーガ」まで遡る必要がある感じ。まあこれはどちらも共同名義で実際は一部キャラクタのデザインを担当ってことらしいけど、でも、リストにあったダンクーガのシャピロとか今でも覚えてるぞ。人気キャラやん。

そんな時代の人が今でもこんなスマッシュヒット作品にキャラデザかつ総作監で関わっているって実に嬉しいよね、おっさん世代としては(そう言えば前期は最近OP職人のイメージもある梅津泰臣さんが「刻刻」ではOPだけでなくキャラクター原案もやってたりもしたしな)。

そんなわけで、いしづか監督から今風の目尻の書き方を指南されたり、「けいおん!」とかの京アニ作品のキャラデザなどを見ながら、「新境地開拓」のキャラクターデザインをやっていったというエピソードはなんか微笑ましい。

とは言え、女子高生がわちゃわちゃ、という情報に釣られてやってくるヲタ層が想定するキャラクターのイメージと「よりもい」のキャラデザは、たしかに少し異質なんだろうな。異質なだけであって、異常ではないと思うんだけれども。

どうも、ハードコアなヲタ層の一部には、PVや第1話の段階でキャラデ切りだのなんだの言っていた人達もいたみたいだけれども、逆にそうじゃない層にはより受け入れられやすいデザインだと思うんだよ。髪の色とかもナチュラルだし。というか、俺としては第1話で見た時からいいデザインだと思ってたから、そこまで拒絶するヲタ層の気持ちは、正直今でもよく分からんのだ。

まあ、門前払いしたり序盤で抜けてったヲタ層だって、この「よりもい」みたいに巷で話題になっていれば、今はネット配信なりでキャッチアップして戻ってくるわけで。それが第11話以降の伸びっぷりの原因の一つだろうな。

そんなこんなで第1話が放送されると、吉松さんとしては「いしづかさんが大量に出してくるラフに従っていただけ」のはずだったのに、「吉松全開」とかネットで評されたりで、これはいしづかさんの言うことを聞いていればOK、と思われたそう。

失敗点としては、OPでチョークで絵を書いているところで、髪の毛が風で煽られるとキャラクターの区別がつかなくなることがある、ということで途中で二重にしたりと微調整を行ったりしたらしい。そういえば俺もあのシーン、最初の頃は似たような事を思ってたから、修正前だともっと顕著だったんだろうな(1, 2話のOP時点では、まさにその二重になったキャラと思われる結月が本編では未登場だったし)。いやあのシーンは超大好きなんだけれども。

で、監督には監督の起用意図があったようだけれども、それは次の監督のセッションのところでまた詳しく触れることに。

溢れ出るハロプロ

とにかく笑ったのは随所から溢れ出るハロプロ愛。そしてキャラクターのイメージのアイデアのかなりの部分にハロプロのメンバーが存在しているらしい。とは言っても私は今のハロプロには全く詳しくないし、そもそも昔からそれほど多くは知らないのだけれども、今回の話の中で出てきたのはこんな感じだった?

小淵沢報瀬のインスパイア元は植村あかりさん(Juice=Juice)。ほほう、この人か。ああなるほど、なんかわかる気もする。

www.youtube.com

鮫島弓子のインスパイア元は徳永千奈美さん(Berryz工房)。ああ、なんかわかるような気もする。とりあえず、色指定時に「地黒にして」というリクエストを出したというのは理解できた。

www.youtube.com

玉木リンのインスパイア元は星野にぁさん(妄想キャリブレーション)。この人はハロプロじゃないのか。でもなんか実にわかるな。タイムボカン24(キャラクターデザイン)のEDつながりらしい。

というわけで、名前が出たのはこのあたりだったと思うけれども、その他のキャラクターたちもきっとハロプロのモデルがいるに違いない。っていうか弓子さんまでそうならその他大人組もモデルがいてもおかしくないよな。その道に詳しい方は色々と想像なり妄想なりしてみると良いのではないだろうか。ところでめぐっちゃんのモデルは誰だろう?

「24」方式(笑)

いしづか監督のことは、Supernatural the animationの時にあまりにエモーショナルな回を作っていたので「エモやん」と呼んでいたということ。エモやんって…。それにしてもSupernaturalにアニメ版ってあったんだ。やっていたらしい2011年は、「まどか」と「シュタゲ」に誘われて俺がアニメを再び見始めた時期だけど、知らなかった。

吉松さんによると、シナリオの3話を読んで感動して、これは「勝てる」と思ったらしい。で、実際に1話が放送されると、「たかだか新幹線で出かけるだけ」でこんな凄い話になるというのを見て、これは「すごい、勝った」と。

もうエゴサーチするのが楽しくて、たとえば我々がネットで毎回「いい最終回だった」とか騒いでいたことは「最終回伝説」と呼ばれていたらしい。結局本当の最終回まで「最終回伝説」は見事に続いていたからなぁ。

で、「第3話が受けてるな」と思うと「でもお前ら、まだこの先、第5話があるんだぞ」と思い、第5話が過ぎても「イヒヒヒ、まだ第7話が…」とか思えてなんか楽しかったらしい。四天王かよ。

ああ、でもなんか俺も今、再放送初見の人の感想とかをtwitterで見ながら似た気分になってるかもしれない。単なる視聴者でもそうなんだから、自分たちがこの作品を作り上げていたクリエイターであり、しかも世の中誰も先のストーリーを知らないという状況ならば、もうこれは至福だろうな。超わかりみがあるわ。

しかし、自身が最大のファンを自認しているが故に、先のストーリーを各種資料でネタバレ食らってしまうのが最大の悩み、ということで、できるだけ先のネタバレを食らわないように読まなかったらしい。小黒さんに「それはどうなんですか?」とかツッコミを食らっていたけれども。

吉松「24(twenty four)方式です」

洋ドラの「24」では、役者に対してこの先誰それが死んじゃうとかの、先のストーリーを知らせずにその時点での役者の気持ちになって演じてもらうということで(そういえばそんな話を以前聞いた気がするな)、それと同様に先を知らずに描くことに意味があると。

吉松「(先を知ってると)絵が濁る」

って…、いやなんかすごくいいこと言ってるようだけど、それ、言い訳ですよね? と結月に突っ込まれそうだよ吉松さん。

まあそのかいあってか、たとえば7話はオールラッシュを見て号泣で監督にスタンディングオベーションだったそうな。ああ、これだけ作り手が楽しんで作ってれば、作品にそれが滲み出ても何の不思議もないな。

いしづか監督について

いしづか監督はとにかくドラえもんが好きで浮き世離れした人らしい。オタクじゃないのになぜかオタクのハートを掴める謎の人。オタクじゃないというハンデを背負いつつすごく勉強しているイメージ。アニメ見てないのにアニメ作れる人…だそうです。ここで名言が一つ。

吉松「まあ、アニメ見ててもアニメ作れない人はいますからね」

そりゃそうだ。ここで水野晴郎と「シベリア超特急」の話とかまで出てきて大笑いだったけれども、ここで第1部は終了。そしてネット配信はここで終了。ネット配信だけだとちょっと消化不良だっただろうなぁ。ともあれ、休憩タイムに入ったのでハイボールを注文。

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第2部:いしづかあつこ監督×吉松孝博さん×小黒祐一郎さん(1)

第2部は、第1部のメンバーに加え、ついにいしづかあつこ監督が登場。

監督の人となり

監督の第一印象、こんな若い人だとは思わなかったわ。なんかアイドル然とした雰囲気に、頭のいい人だなぁ、という喋り方。むっちゃこういうトーク向きの人です。なるほどこういう人が監督やってたのね。なんというか、この人ならものすごく緻密に計算した上で感情を刺激する作品を作れるってのがなんか雰囲気で納得できるというか、さらに主人公たちともそれほど年が離れているわけでもない女性ということも、物語にいい影響を与えていそう。なんかペンギン饅頭号の大人組女性陣にいそうな雰囲気。

製作中は鬼のようにリテイクを出すということで、「きっと『マジないわ』とか言われてる」「デスクに陰で5回くらい殺されてる」らしいのだけれども、吉松さんによればそれでもニコニコとリテイク受けてしまうとのこと。

撮影監督には「ロマンを足して」(7話の船のシーン)とか、「青春感アップ」(どの辺かな?)とかの、もっと無茶な指示を出していたけれども、ちゃんとそんな感じで上げてきてくれて素晴らしい…。すごいな。

そんなわけで、第2部の乾杯の音頭は「ざまーみろ!」

なぜ吉松さん?

というわけで、第1部から謎だった、なぜ吉松さんにオファーしたのかという件について。元々吉松愛があってやってみたかったとのこと。プロデューサーには心配されたけれども、「大丈夫、吉松さん、何でも描けますから」と説得したらしい。そんなわけで第1部でも語られた「目尻指導」したりしてキャラクターを固めていったらしいのだけれども、やりたかったこととしては、記号的ではない、筋肉で動く、いわゆるマンガ的ではない表情で、表情の幅を広げたいと思ったとのこと。

いしづか「次、何やりましょうね」

ということなので、今後の何か全く違う作品も期待してしまうな。

そもそもの企画はどうだった?

「よりもい」の元の企画がラブコメやらタイムリープやらの企画だったというのは既にインタビュー記事で語られていることだけれども、一体どんな企画だったのか。その謎についても一端が明らかに。

www.excite.co.jp

実は元々、TV版「ノーゲーム・ノーライフ」頃に考え始めて、女子が頑張る話にしたいと企画を練っていたと。で、恋愛だったりの話がありつつ、突然「机からネコ型の女の子が出てくる話(!)」に変化。タイムリープってそっちかよ! 記事の中で「藤子・F・不二雄好き」の話が出ていたのは読んでいたけれども、まさかそこまでストレートな展開だったとは。

記事にも書かれている通り、キマリは最初の頃の企画から名前も変わらずずっといて、この「ドラ○もん」的企画ではいわゆる「の○太」的ポジションだったとか。まあ主役なので当然か。

いしづか「服が黄色いですよね」

なるほど。いやそれはそれで見たかったような。別枠で。先程の記事によれば他の3人も一応の原型があったそうなので、結月は青くて遠くからやってくるからやっぱドラ○もんだろうとか、報瀬はし○かちゃんで日向がジャ○アンとか…。で、日向はどこかで意外な面を見せる…。いや、これ実は意外に元のイメージ残ってるんと違う? 妄想捗るなー。

で、そこから何故か「ここではないどこか遠くに出かける」という話から突然「南極に行く」というアイデアが出てきて、現在の「よりもい」の企画につながっていく…らしい。

ロケハンについて

シンガポールの描写は現地でもTVニュースになったらしいけれども、実は「よりもい」のロケハンとしてシンガポールに行ったわけではない…らしい。ノーゲーム・ノーライフの関係で行ったことはあるけれども、その際もマーライオンは見ていないと。

で、さらになんと吉松さんはどこにもロケハン行ってないらしい。

吉松「ハロプロとかぶってたから…」

…流石ですよ師匠。

館林には2回、うち1度は1泊で行ったとのこと。それだけであの再現度は凄いな。ある程度目星つけてまわっても結構時間かかると思うんだけれども、どこを使うのか考えながら回っていたとしたらそれは凄いなぁとしか。だって自分で回った時でも、ちゃんとマップがあった状態にもかかわらず、結構時間かかったよ。その上で色々取りこぼしているし。

xckb.hatenablog.com

製作中の裏話

やはりオリジナル作品なので、出すまでお客さんの反応がわからない部分があるんだけれども、ある意味ラッシュを見た時の吉松さんの反応でわかる…とか。

「毎回最終回」と呼ばれていた件に関しては「正直狙ってました」とのこと。話を引っ張りすぎず、一話ごとに得られるものを重視して、ちゃんと片づけていく。そうすることで、どれか1話だけを見ても楽しめるように意図していたとのこと。

吉松さんが絵コンテを読んでない件に関しては、「ま、いいか」とのことだけれども、それに対する吉松さんの「だってネタバレしちゃうじゃないですか…」は実にひどい(笑)。

花田さんの関わり方とキャラ造形

主要メンバーで今回来ていない脚本の花田十輝さん。基本、脚本に関しては花田さんのやりたいようにやってもらう方向性だったとのこと。オリジナル作品なので原作の縛りもなく、花田さんノリノリで脚本書いてたらしい。ああ、やっぱり原作モノだと色々思うところがあるのね。

1話を始める前にプロットは全て決まっていた上で、脚本先行で作っていった。大体、最大で7〜8稿位まで直していた回もあったけれども、最後の方はだいたい2〜3稿で仕上げていた、とのこと。

キャラクターの造形に関しても花田さん主導だったらしい。しかし、報瀬は当初の花田イメージではあそこまでポンコツになる予定ではなかったものの、監督の意向でいきなり第1話から鼻水流すようなキャラになったとか、日向の巨乳は監督の「もっと盛って」リクエストゆえだったとか、色々面白い話も聞けたな。そしてここで名言がまた一つ。

吉松「僕、胸に興味ないんですよ」

わはは。そうなんだ。

日向はともするとガサツなイメージで描かれがちなので、「ガニ股禁止」通達とかで、そういうイメージによらないように色々気を使ったらしい。OPの日向の水着ウィンクシーンは本編でもやりたかったそうなのだけれども…、今からでも遅くないから短編集とかで是非お願いしたい!(ついでにその後ろのスク水報瀬も)

あと、日向のTシャツ、報瀬のメーテル帽、結月の犬の帽子はすべて吉松さんのアイデアらしい。結月の犬の帽子は、本来はワッペンがいくつかついているだけの帽子だったのが、「アビイ・ロード」ネタのあのイラストを描く際に、犬に変化したらしい。

大人組のキャラクターたちも、なんか実際に南極に行った人たちにもこんな感じの人いたわー、的な部分はあるらしい。

貴子に関しては、想像に任せる部分はあるけれども「キマリが賢くなって、大人になったような感じ」という発言もあった(さすがにあのキマリのままでは子育てできんということらしい)。ああ、前回この記事で「吟はキマリの中に過去の貴子の姿の一面を見ているようにも思えるし、もしかすると報瀬も(意識しているかどうかわからないけれども)、キマリの中に自分の母のイメージの片鱗を見ているのかもしれない」って書いた時は、さすがに穿った見方すぎるかなぁ、と実は思ったのだけれども、意外に的を射ていたのかもね。

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ついでに思うんだけれども、これだけ数多くの暗喩に満ちた「説明しすぎない」作品だけれども、いろいろな人の感想を読んでもそれぞれのシーンの解釈にブレがあまりなくて(つまり、良い意味でわかりやすくて)、おそらく作り手の込めた意図がそのまま伝わっているというのは、それはそれで凄いことだよな。俺は解釈が難しい物語も大好物だけれども、この作品みたいに論理よりも感情がずっと重要視される作品に関しては、やはりわかりやすさは正義だと思う。

キャストについて

というわけで、貴子のかやのんボイス、とても合ってたよねという話からキャストの話へ。

基本的にオーディションで選んだんだけれども、もうあの4人はあまりに合いすぎていて他が考えられないくらい。まあ、これはみんな思ってることだよね。わりとイメージそのまんまの人が集まった気がするけれども、花澤香菜さんはあんなにポンコツではないぞ、ということ。が、水瀬いのりさんはアフレコ現場に豪快な忘れ物をして慌てて取りに戻ってきた逸話から、実はキマリ的なのでは疑惑も。

そういえばオーディション関連の話は、ラジオの方でもちょいちょい出ていたような気がするな。

制作現場

ここで、最終回近くの制作現場や「じんから」での最終回リアタイ視聴プチ打ち上げなどを吉松さんが撮影したムービーが上映。そして最後のオチがAmazonのアニメ円盤ランキングのスクリーンショット。この時のやつかな。3月29日に1〜4位を独占した時。まあ、あくまでAmazonのランキングでしかないんだけれども、やっぱりクリエイターとしてはこれ嬉しいよね(俺も実はAmazon書籍ランキング1位をやったことあるから少し気持ちはわかる。まあ15年以上前で共著だけれどもな)。

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12話

やはり12話が最もやりたかったことだった。最後に成し遂げるものとしての12話。ラッシュチェック段階では、いつもなら「お疲れー」的な雰囲気になるところが「ずーん」とみんな沈黙している状態。動けない。

だろうなぁ…。

そんな感じでいい余韻を残したところで、吉松さんから監督にまた名言(?)。

吉松「南極に連れてきてくれてありがとう」

さらにハイボールを追加して第3部を待つ。これで抽選券は3枚。

第3部:いしづかあつこ監督×吉松孝博さん×小黒祐一郎さん(2)

EDでみんなの頭から生えている花は、監督が描いたイメージを元にしたもので、みんなの夢が育っていくことを表現しているらしい。

ということで、第3部のスタート。乾杯の音頭は「ざけんなー!」。

設定資料を見ながら(衣装を中心に)

1話ごとに凄まじい厚みの設定資料がやってくるということで、実物をプロジェクターで見ながらのトーク。いやー、凄い厚さだわ。ところどころ、書籍などでは見せられないアレやコレなどを交えながらの楽しいセッションだった。クリスマス関係が色々あったから、多分10話の設定かな。

報瀬のクリスマス仮装のトナカイの参考にしたものは、実はチワワ用のクリスマス衣装だったとか、サンタコスはちょっとセクシーなお姉さんのサンタコス写真だったとか、あとは南極観測隊の色々な行事の写真とか(多数の女装含む)、でもこういう色々なリサーチを元にあの細かい描写は成立しているのだなと納得。

衣装に関しては、防寒具などの小物が多く凄まじいバリエーションがあるために、このシーンからこのシーンではこの組み合わせ、という事細かな設定があり、このチェックが大変だったと。そういえば本当にそういうバリエーション多かったよなぁ。

ヘルメットに関しても、たとえば日向がヘルメットとゴーグルの両方をかけている場合は、ヘルメットのライナーと、日向の髪の横の部分のあのツンツンと、ゴーグルのゴムはどのような上下関係になっているのか、さらにヘルメットの上にゴーグルをのけている時は、その部分はどうなるのかなど、事細かな設定が必要なのだ。凄いな。

衣装に関しては、このツイートが「まさにあのシーンの意図通り」と絶賛されていたな。たしかに「女子高生がわちゃわちゃ」アニメとしては実に独創的な演出だよねこれ。

日向のTシャツ、サンドイッチは時々具が増えたりパンが増えたりしているらしい。エビフライは、お弁当の具の代表格ということで入れたんだけれども、色にブラックを使わないという方針でいたために、色がエビフライというよりはえび天風になってしまった、という裏話も。

結月のiPhoneだけカバーがかかっているのは、ガードの固さを表しているらしい。

めぐみのパジャマ姿は、なんかシマシマで囚人服っぽいという意見もあった。

弓子のキッチンでの姿のイメージは、「じんから」の大将の竪谷博さんだとか、性別を超えたイメージ移行もあったのね(いつか「じんから」行ってみようっと)。

夢さん、極地研の人に「船上でタイトスカートはありえませんから」と言われたんだけれども、

いしづか「でもアニメですから」

で押し切ったと。ということで、ついでに色々話題になった第8話の例のシーンに関してもまあ、同様ということで。

いしづか「嵐の中、外出たらダメだぞ! 知ってた」

ははは。

(そう言えば前回の記事で書こうと思った上であえて落としてたんだけれども、あれも第3話のホテルでの結月の夢のシーンとペアの、反復されるモチーフの表現なんだよね。第3話の時点では、そもそもなぜホテルの窓のシーンで、外は嵐だったのかという点が不思議。第3話では結月がキマリに引っ張られてホテルの窓から外に出て落ちるんだけれども、第8話では結月が自ら進んで船の扉から外に出て、なんとか戻ってきているという対比で、やっと意味を持つようになっている)

敏夫に関しては、イケメンにならないようにということに注意したとのこと。で、生え際を後退させたりとか(そこか…)。

昭和基地内部の生活に関しては、実際に靴下で歩き回る文化が定着しているということで、そういうアットホームな感覚を再現した。ああ、南極に行ってもやっぱり基地の中は日本なのね。ベッドはロフトベッド的になっているんだけれども、床暖房があるので床で寝る人が結構多いと。ということで、キマリの部屋では既にベッドに登るはしごが置いていないらしい。まあ、キマリなら危険なベッドに登るよりも、床で寝たほうが伸び伸びできるし安全でいいだろうな。

質問コーナー

ということでラストは会場から質問を募るコーナー。

キャラクターに家族の描写に差があるのはなぜ?

キマリと報瀬は家族の設定がドラマの上で重要だからしっかりと描く(ちなみに報瀬の父親は、第4話の休学申請書の保護者欄が「小淵沢小梅」となっていることから、何らかの事情でいないと推測できる)。結月は母親のみを描く。日向は一人で頑張っているということを表現したいので、家族に関しては全く描かない。

いや、このアニメ、本当に描く部分と描かない部分の思い切りがはっきりしているよね。だから1クールであそこまで濃厚なストーリー展開にできたんだろうな。

3人が館林で結月だけが北海道という意図は?

結月は途中から参加するということで、距離があったほうがいいと思った。そこで、日本一寒い場所(北海道)から日本一暑い場所(館林)に来るということにしたかったし、結月の持っている孤独感を表現するには北海道出身という設定が適切だった。

なるほど。日本一寒い場所から日本一暑い場所という発想はなかった。

日向が「胎内くぐり」に一人だけ行っていないという意図は?

既にずっと4人で活動してきていているので、別に一人だけ置いて行かれても平気になっているということを表現したかった。別に悔しくもないし可哀想でもない。そういう関係になったということを表現したかった。

ああ、そしてここからキマリの「ここで別れよう」に繋がるわけだな。もはや常に顔を合わせたり、一緒に行動することがなくても、ずっと親友のままだと。

続編とかは考えているか?

それはプロデューサーに聞かないと…。旅のゴールに辿り着き、結論が出たストーリーなので、次のゴールが見つかればだけれども…。でも劇場版とか…(みんな期待の反応)。

個人的には、短編集的な外伝なら見たい気がする。たとえばあのOPで出てきた船上や南極での各シーンのストーリーとか。

単純な総集編的な劇場版だと、もともと密度が濃すぎる作品のうえに、1話1話の独立性が高すぎるので、思い切りテーマを絞らないとわけの分からない映画になってしまうと想う。まあ、前後編にまとめれば何とかなるかもしれないけれども、それなら映画館での全話一挙上映とかのほうが嬉しいかな。

10話でのめぐみのシーンはめぐみの部屋なのか北極なのか?

部屋にゲーム機が置いてあるままなので、あれはめぐみの部屋。

まあ、あれはどう見てもそうだよね。地球の歩き方を読んで計画を練っているのだろう。まあ、あの写真見るからに背景に木が生えているから、北極と入っても北極点とかじゃなくて北欧やカナダあたりの北極圏だよね。だからまあ、わりと普通に行けるし。

ということもあってか、小黒さんから最後の質問。

めぐみはどうやって北極に行ったのか?

実はルートとかどうでもいい。めぐみはキマリから最も距離を取りたかった。

いしづか「地球の端っこと端っこ、どこよりも遠い場所に行った二人は、家族よりも近い友だちになった。そういうことを描きたかった」

まさにシメにふさわしいいしづか監督の名言で、このイベント本編も終了。ああ、なんともディープなイベントだったな。最高だった。

…で、普通なら終わるところだったのだが。

抽選会

まだ抽選会があった。ということで、3枚の抽選券を持って望んだわけだが、いしづか監督のかわいいイラストの色紙は見事にハズレ。

が、なんと! 吉松さんの色紙が当選! 思わず抽選券を二度見してしまった。第3部前に、「んー、あと一杯」という感じで最後のハイボールを頼んだ時の抽選券だった。いやはや、俺、今までの人生で一番、酒飲みで良かったと思った瞬間だったわ。「あと一杯」で失敗してきた過去の苦い思い出が全て吹き飛んだと言っていい。

というわけでこの素晴らしいクオリティの色紙。いしづか監督が、日向の髪のところに間違えて結月の三つ編みを書こうとした跡があることを突っ込んでいましたが、逆に言うと鉛筆の下書きがそのまま残っているということなのです。それを含めて貴重。大事にします。ありがとうございました。

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ということで、先程額装完了。いや、これは文句なしの家宝だな。なんか最近、異様にくじ運に関しては強運続きなので、ちょっと怖くなっている(ポンコツじゃない花澤香菜さんのサインを含む顕著な例)。

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まとめ

さて、今回は実に面白いトークイベントをありがとうございました。

やはりここは「アニメスタイル014」あたりでぜひ「よりもい」の巨大でディープな特集をお願いしたいところ(「013」が出るのが5月末らしいけれども、こちらには「よりもい」記事はないらしいので、多分「014」待ち。いつになるんだろう…)。俺の最高のお気に入りの「アニメスタイル006」を越えるやつを是非! 楽しみにしてます。

アニメスタイル013 (メディアパルムック)

アニメスタイル013 (メディアパルムック)