xckb的雑記帳

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篠原美也子25周年ライブ「海の底、空の果て」:篠原美也子の音楽がある人生は少しだけ豊かだ

2018年4月21日、渋谷TSUTAYA O-WESTで開催された篠原美也子25周年ライブ「海の底、空の果て」に行ってきた。何と25周年だよ25周年。俺が定期的にライブを聴いている人の中でも圧倒的に長いし、今回のライブで、すでに人生の過半をこの人の音楽とともに過ごしてきたことにあらためて気がついた。

今までも、10周年、15周年、20周年とライブはあったのだが、実は20周年ライブは子供が乳児だったために参加できなかったのだ。そんなわけで、アニバーサリーワンマンライブは実に10年ぶりか…。

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とりあえず今回は真面目にライブレポ的なものを書く気はない。俺がこのライブで思い起こされた記憶、特にかなり古い記憶を中心に勢いで語ってみようと思う。真面目なライブレポはたとえばこちらにあるので、ずっとオススメだ。

篠原美也子さんの25周年ライブが最高だった話 | スパイラルなブログ〜Another Spiral World〜
http://y-pon2.com/blog/miyako-shinohara_25th_anniversary_concert/

まあなんというか、篠原美也子の音楽は、俺が一応大人になってからのほとんどの時間を共に過ごしている音楽というべきものだ。

俺が篠原美也子の音楽に出会ったのは、まさに25年前、ただしデビューシングルの発売から1ヶ月ほど経った1993年の5月、発売されたばかりのデビューアルバム「海になりたい青」を、たまたまタワレコのCD試聴機で聴いたときだ(デビューシングル発売の1ヶ月後にデビュー・アルバム発売ってところが当時っぽい)。今は既にない、タワーレコード新宿ルミネ店のスタッフの誰かが試聴機にこのアルバムを入れておいてくれたことについて、俺は今でも深く感謝している。

海になりたい青

海になりたい青

当時の映像がこれだ。俺が試聴機で真っ先に撃ち抜かれた曲もこのデビューシングル曲の「ひとり」だった。

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まさに俺が求めていた音楽はこれだと思った。こんな歌詞の音楽があったんだと思った。

何をしても誰かが笑ってるようでなぜか不安で
言葉たちはいつかあやふやを愛して背中を向ける
忘れたくないことよりも忘れたいことが増える
見上げる夜空は青 海になりたい

篠原美也子「ひとり」

初ツアー以降、毎回ライブに通った。ところが1998年末のアルバムとツアーを最後にあまり活動を聞くことはなくなり、そしておそらくその翌年の1999年、彼女はメジャーレーベルを去り、音楽活動を停止する。

当時は今のようにアーティストがWebサイトやブログやSNSのアカウントを持ち、直接ファンに語りかけられる時代ではなかった。通常、アーティストが事務所を抜ければ人々の目の前から消え去ることを意味し、記憶から消え去っていく。

今では信じられないことだが、当時はライブ情報などはほとんどネットには載っておらず、今はなき雑誌の「ぴあ」などを買い、その情報からプレイガイドに電話したり、街角のプレイガイドの店舗に並んだりしてライブのチケットを買っていたのだ。そんな中、2000年の暮れに眺めていた「ぴあ」で偶然「篠原美也子」のライブの小さな情報を見かけたのだ。しかもワンマン。

そんなわけで早速チケットを取って訪れたO-Nestは、今回の会場のO-Westの上のフロアにあるとても小さなライブハウス。そしてこのワンマンライブを聴いた感動は今でも忘れられない。メジャーレーベルをクビになった後の初めてのワンマン。特にメジャー終盤の東芝EMI時代は色々と迷走感もあり、辛いことも色々あったのだろうけれども、まさにそんな様々なくびきから解放されたような、自由なライブだった。多分このライブの最後で聴いた新曲「秒針のビート」は、そんな原点に戻ったようでもあり、そして新しい彼女の音楽を感じさせた。

誇り高くありたいと願えば日々はあまりにせつない
勝ち負けで決まるならきっとずっと人生はたやすい
動機を見失ったまま過ごす日々は何てはかない
遅すぎるかもしれない
だけどこんなところで待っているよりは

篠原美也子「秒針のビート」

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新しい羽根がついた日

新しい羽根がついた日

それから既に18年。メジャーで過ごした期間をインディーズになってからのキャリアの長さが上回り、そして2倍となり、さらに3倍となった。その間に、少し俺より先輩の彼女は結婚し、子供を持ち、様々な人生の転機を迎えつつそれでも音楽を続けてくれた。様々な人生の転機に残された音楽たちは、今でも変わりなく自分の人生のさまざまな時に重ねて聴くことができる。

人生にはうまくいかないこともあり、負けることもあれば、それらが原因となって良いこともあったりする。達観しているようで達観もしきれず、悲観的になるようでそうもなりきれず、なんだかんだでトータルで言えば結構楽しい。篠原美也子は人生でその音楽を体現しているし、音楽がその人生を表現している。25年前に出会ったときと今の違いは、積み重なったそういう時間だ。

そんな25年間を振り返るライブが、今回のワンマンライブだった。

それにしても長かった。いつも結構ライブは長いんだが、今回はひときわ長かった。アンコール無しの本編が3時間45分、アンコール入れて4時間33分って、俺が今まで聴いたことあるワンマンライブの中でも最長だったのではないかと(美也子さんのライブでも今までの最長記録は、記憶している限りでアンコール入れて3時間45分だったかと)。

今回はバンド構成のライブ+一部はピアノ弾き語り。

第一部は、メジャー時代の曲を中心にしたセットリストだった。タワレコの試聴機で聴いて衝撃を受けた「心のゆくえ」「ひとり」「青」はいつ聴いてもいい。MCで「春の歌」ということだったのでやっぱあの曲かな、と思ったらやはり「前髪」。当時のライブで初めて聴いたときから大好きな曲だ。

そして第一部最後の曲は「LIKE 17」。メジャー時代最後のアルバム「magnolia」で色々あったけれども今でも大好きな曲ということ。俺もだ。

第二部はまずはゲストとのセッションから。っていうか、なんて豪華なゲストだったんだ…。ゲストは出演順に次の通り。

拝郷メイコさん、最近美也子さんと新しいイベント「星と灯台」を始めたようで、そのイベントのテーマソング「星と灯台」も美也子さんと歌ってた。加藤いづみさんは「休息」、榊いずみさんは「永遠のパズル」(これは橘いずみ時代の曲だな)を歌ってました。

こぼれおちるもの

こぼれおちるもの

MUSIC

MUSIC

そして加藤いづみさん、榊いずみさんと美也子さんといえば、2009年にあったイベント「MAMA DON'T CRY」だなぁ。当時小さい子のママだった彼女らの企画で、子供のいるママさんでも安心して参加できる託児室つき母の日ライブイベントだった。そのイベントテーマの「MAMA DON'T CRY」、当時聴いた時は想像でしか聴けなかったけれども、家に乳児のいる生活を体験した後だとやっぱり色々と心に響くものがある。

やはり色んな意味で、人生の節目節目に篠原美也子、なのだと思う。

奥井亜紀さん、やはり東京百歌の常連メンバーだったな。あまり詳しくなかったけれども、今回歌った「大樹」はインディーズ初の作品だっんだな。

大樹

大樹

そして懐かしの奥井亜紀篠原美也子ユニット「福娘。」の「夏ノ花」。いやー本当に懐かしい! もうこれも15年前、2003年だったのか。

夏ノ花

夏ノ花

以前から時々ギターのサポートに入ってくれていた松田文さん(SIONのギターで有名だけれども現在は引退)は、「誰の様でもなく」のサポートに入ってくれていた。

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この曲も2枚目のアルバムに入っているメジャー時代初期の曲だけれども、実際はさらに昔に作られた曲だったような。色々な装いをまといながら長生きしている曲。この曲に出会った25年前とは色々受け止め方が違っているけれども、今はこの青臭い若さが、元気な若者を眺めているようで好きだ。多分、もう少し時間が経つと、別の受け取り方ができるようになるんだろうなと夢想する。

そしてゲストコーナーが終わった後は、インディース時代の曲を中心に。「遥かなる」は去年の曲だけれども、最近の曲では抜群に気に入っている。そして、「秒針のビート」は、先程も書いた、2000年のインディーズでの復活劇を思い出して泣けてくるよな。

Lighthouse Keeper

Lighthouse Keeper

本編最後を飾った、「Journey」は2005年の曲か。もうあれから13年経ったんだな。「ひとり」という曲でデビューした篠原美也子がこんな詞を書く様になったんだな。と感慨深かった曲だ。

ひとりではなくひとつだと
not one but it’s one
私ではなく私たちだと
not me but us

篠原美也子「Journey」

そういえば子育ては二、三歩先を越されたんだけれども、結婚したのは美也子さんよりちょっと早かったんだよな、なんてことを思い出したりする。まあそれはともかく、同年代の人がこれだけ頑張っている姿を見るのはやっぱり嬉しい。

アンコールに入ってからがまた長いのが篠原美也子ライブ。そしてこの時点でもう3時間45分経ってる。アンコールは「S」から始まり、インディーズ時代の曲からメジャー時代の曲へ。いやー、「S」好きなんだわ。そしてメジャー時代からは「満月」と「愛している」と、最初期の曲で素晴らしいシメ。…だったはずなのだけれども、さらに諦めの悪いことでは定評のあるファンたち、さらにアンコールを要求し、最後にアカペラで「Flags」…。

ということで、総計4時間30分を越えるという前代未聞の長さのワンマンライブだったが、今回は特に、不思議なほど短く感じた。何故だろうと思うのだが、やっぱり四半世紀を共にしてくると、その分だけ自分も美也子さんもそれぞれの人生を歩んでいて、全然違った人生であってもそこかしこの部分で、前後しながらも同じようなことを体験したり、同じようなことを感じたりした時々が音楽になっていて、それを盛りだくさんで一気に体験したからかな、などと思ったりする。

そんなわけで俺は言いたい。篠原美也子の音楽がある人生は少しだけ豊かだ、と。若い新しいファンにも言いたい。篠原美也子の音楽には今君が共感できることと、未来の君が共感できることが詰まっていると。

四半世紀を振り返る素敵なライブをありがとう。次は50周年を楽しみに生きるしかないな。

第一部

  1. 心のゆくえ
  2. Dear
  3. ありふれたグレイ
  4. 前髪
  5. 風の背中
  6. ひとり
  7. 感傷
  8. LIKE 17

第二部

  1. セカイ(拝郷メイコ
  2. 星と灯台拝郷メイコ篠原美也子
  3. 休息(加藤いづみ
  4. 永遠のパズル(榊いずみ
  5. MAMA DON’T CRY(加藤いづみ榊いずみ篠原美也子
  6. 大樹(奥井亜紀
  7. 夏ノ花(福娘。)
  8. 誰の様でもなく(松田文・篠原美也子
  9. カーラジオ
  10. 遥かなる
  11. 名前の無い週末
  12. 秒針のビート
  13. 逆光
  14. 向日葵
  15. Journey

En.1

  1. S
  2. 願わくば
  3. 422
  4. 満月
  5. 愛している

En.2

  1. Flags