さて、先日うちのMac mini (2018)をM2 Pro Mac miniにリプレースした。まあこの件は後で別途書くとして、そこでやや困った事実に気がついてしまったのである。
なんと、この新しいMac miniにはデフォルトでCourierのフォントが存在しないのだ。ということで、今回の内容は消えたCourierの謎である。
今回の目次:
Courierとはどういうフォントか?
Courierははるか昔からMacに存在していた欧文等幅フォントで、タイプライターの文字をモデルとしたものだ。一方Windowsには3.1の頃からMonotype社が作成したCourier Newというフォントが存在しており、これもmacOSには存在しているのだが、はっきり言ってこのCourier Newは気に食わない。
WikipediaのCourierに関する記述によると、Courier Newは次のような由来のフォントだそうだ。
「IBM Selectric typewriterの “ゴルフボール(タイプボール)” から直接デジタル化し」、タイプライターでインクリボンを使って印字した際に太くなることを考慮しなかったことにより、細身になっている。ClearTypeのレンダリング技術にはスクリーン上でフォントを読みやすくするためのハックが含まれているが、印刷すると細いままである。
(Wikipedia上の出典: Why is Courier New so Thin?)
なるほど、あの不自然なほどの細さはこういう理由だったのか。あんなのタイプライターの文字じゃないだろ、と思っていたらそういうことだったのか。サンプリングするなら紙に印刷した文字の方を使うのが当然なのではないのか? なんでそんなことをしたんだろう。
ともあれ、この新しいMac mini上に入れたWordで、Courierを使おうとすると…Courierがないのだ。Courier Newしかない。何度確認してもない。
俺はMacを使う意味の一つに、デフォルトでCourierが入っている、を理由に挙げていたのだが(半分本気)、その理由が一つ消えてしまった…。
いつCourierはmacOSから隠されたのか
実は自分としては今までVenturaを使っていなくてこのMac miniが初めてのVenturaだったのだが、いつCourierが消えたのか調べてみると、ちょっと訳のわからない現象になっている。
まず、Venturaに入っているフォントはここに一覧がある。
macOSに入っているフォントは「インストール済みまたはダウンロード可能なフォント」と「書類に対応したフォント」の2種類があり、前者は普通に使えるフォント、後者は「そのフォントがすでに使われている書類や、そのフォントが名前で指定されている App の中でだけ利用できます」という、いわば過去との互換性などのために残されているフォントであるようだ。そしてVenturaでは、Courierフォントは後者に入っている。
だが実際のところ、Ventura上のWordでCourierの入った文書を開くと、勝手にCourier Newに変換されてしまうようだ。つまり使えない。
で、いつまでCourierが「インストール済みまたはダウンロード可能なフォント」だったのかを調べてみると、実はBig Surまではちゃんと入っていたようなのだ。
そしてMonteleyで「書類に対応したフォント」に移動している。
MonteleyからVenturaへのアップデートで検証
だが、今までMonteleyでCourierが使えなくて困ったと言う経験はないのだ。また今回のように、Courierを使った文書を開くと勝手にCourier Newに変換されたりという動作には全く記憶がない。そこでまだMonteleyのMacが1台あったので検証してみた。
まずはWordだが、間違いなくフォント選択画面にCourierはあるし、普通に使える。だが、俺はWordでよくCourierを使うので、Wordが時々使っているフォントとしてCourierを覚えていただけかもしれない。
実際、Word以外で検証してみようということで、CotEditorというテキストエディタで、以前フォントをCourierに設定していたので見てみると、現在のフォント設定は確かにCourierの13ptなのだが…
なんと肝心のフォント選択メニューのところにはCourierがないのだ。等幅フォントの選択項目にあるCourierファミリーはCourier Newのみである!
Appleのワードプロセッサ的なPagesも、すでにMonteleyでCourier Newのみとなっていた。
もちろん、Font BookでもCourierで検索して出てくるのはCourier Newのみなのだ。
つまり、WordでCourierが使えていたのは多分何かの手違い、というのかも知れない。
ここでOSをVenturaにアップデートすると…。やはりWordでもCourierは消え去ってしまった。残ったのはCourier Newのみだ。さようならCourier。Courierを含むWordファイルを読み込ませても、その部分を選択してフォントメニューを見るとCourier Newになってしまっている。それWindowsと同じやん…。
Regular, Bold, Italic, Bold Italicが英語表記になったのはなんでだろう…?
Courierの代替フォントは?
Courier Std (Adobe)
Courierの代替フォントを探そうということで、まずはAdobe税の納税者としてはAdobe Fontsを検索してみた。そうすると、Courier Stdというフォントがあるのだが、Adobe CCのライセンス対象のマシンでしか使えず(つまり通常は2台)、しかもCourier Newほどではないものの、Courierよりは細身である。
ちなみに上のWordファイルを、Adobe CC対象外のマシンに持っていくとどうなるかというと、概ね次のように表示される。
- Courier Stdの文字はCourier Newで表示される
- だが、Courier Stdの文字を選択してフォントの設定を見ると、Courier Stdとなっている
ということで、Adobe CCのライセンス問題もありやや悩ましい。
Courier Prime (free)
フリーのフォントにCourier Primeというものがあり、これはかなりオリジナルのCourierに近い(特にウエイト感)。
さらにフリーで配布されているため、Courier Stdのようなライセンス問題がなく、必要なマシンにはどんどんインストールしておけば、とりあえずは消えてしまったCourierの代替とはなるだろう。
CourierがMacから消えてしまったのは非常に残念だが、とりあえずはCourier Primeに移行することとしようか。こちらからダウンロードが可能だ。本当にありがたい。