xckb的雑記帳

身の回りにあったことを雑多に語ります。

Amazonから注文していない商品が次々と届く、しかし代引きではない…

さて、先日から自分のもとに、全く身に覚えの無い謎の雑貨の類が次々とAmazonから届くようになった。これが代引きなら典型的な送りつけ詐欺なのだけれども、代引きではない。

そんな体験をしたことがあるだろうか。

と言うことで、このような現象が何を目的として、どのような人によって引き起こされているかの推理し、対応策を考えるのがこのブログ記事の目的だ。こんな感じの目次でいってみようか。

なにが起こったのか

では、この一連の件を時系列的にまとめてみよう。

突然送られてくる謎の商品

COVID-19の影響でますます増えるAmazonからの荷物。そんな中で、ふと届いたAmazonの箱を開けると、全く身に覚えのない雑貨が入っている。

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間違えて注文したか、誤った商品が送られてきたのかと注文履歴を見てみるが、そんな注文は全く存在しないし、今日届きそうな他の注文もない。もちろんほしい物リストを公開しているということもない。

Amazonから身に覚えのない荷物が届く、というのはググるといくつかのパターンがあって、主要なパターンは以下の2つのようだ。

  • 代引きで送られてくる送り付け詐欺
  • 転売ヤーが自分の在庫を持たずにAmazonから送り付ける

だが、代引きでもなく、また転売ヤーからは宗教上の理由で物を買わないので、このいずれでもない。不思議だ。

もう少し検索してみると、代引きでも転売でもない体験談もある程度引っかかってくる。どうやら2018年ごろから少しずつ観測されているようだ。だが、明確な理由を説明できているブログなどは発見できなかった。

本ブログも、ほぼこれで確実な理由だ、ということは言い切れない点ではそれらの記事と変わらないのではあるが、それなりに理由が説明つく程度には考察してみたいと思う。

Amazonのカスタマーサービスに連絡

まずはカスタマーサービスに連絡。チャットでサポートを受ける。伝票番号を伝えると「ギフトで配送されたもの」だという。誰が送ったものかと聞いてみるが、それは個人情報上の問題で回答できないとのこと。まあそれはわかる。ただ、ギフトとして知り合いが送るにはあまりにチープすぎて、自分だったら絶対に送らないぞこんなの、という点でかなり疑問が残る。

しかし、周囲の人間が送った可能性も100%否定はできないということで、とりあえず謎が判明するまで使わずに置いておくことにしたのだ。

さらに次々と送られてくる不審な商品

そこで終わっていればそれまでだったのだが、そこから大体2週間おきくらいに、次々と謎の商品が送られてきたのだ。

身バレ防止のために正確な商品情報は紹介しないが、価格帯や商品の雰囲気的には大体こんな感じのものだ(リンクされている商品は実際のものとは異なり、マーケットプレイスの業者も今回の件とは無関係)。

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出典:
https://www.amazon.co.jp/dp/B098JCB1VX/
https://www.amazon.co.jp/dp/B08DKW86FH/

何があってもこんなもんいらん、的なものと、こんな気持ち悪い背景がなければ、タダなら使ってもいいかも程度のものが混じって送られてくるところが何というか。

もう面倒くさくなって毎回カスタマーサービスに連絡することもなく放置してしまったのだが、一方でこの件の発生理由について色々考察していた(後述)。

再びカスタマーサービスに連絡

とはいえ、あまり放置しておくのも気持ち悪いため、前回の連絡から数ヶ月が経ってしまったものの、Amazonのカスタマーサービスに再び連絡。

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とりあえず聞いてみたかった疑問点としては、これらの注文は同一人物からの発送かどうか、ということだが、案の定それは個人情報上の事情でお知らせできないということ。

ただ、複数回こういうことが続いたということは明らかに不審ではあるので、こういう事象のための報告用のフォームを教えてもらい、伝票番号を全て登録した。なるほど専用のフォームがあるということは、それなりに発生している問題ということなのかな(一応、通常のカスタマーサポートのページからのリンクは発見できなかったので、ここではURLは紹介しないこととする)。

ちなみに、商品自体はすぐに捨てても問題ないとのこと。

…というのが今までの流れだ。

よくありそうな疑問への回答

ということで、あまりこういう状況に陥った人は少ない(少なくともオフラインやFacebookの友達に聞いた限りでは一人もいなかった)と思われるため、よくありそうな疑問にはここで答えておこう。

配送拒否すればいいのでは?

AmazonのギフトはAmazonのアカウントに対して配送されるのではなく、注文者が配送先の住所をギフト送付先の住所氏名に設定することで注文が行われる。つまり、自分のAmazonのアカウントから配送拒否する方法はない。

ギフトはAmazonのアカウントを持っていない人にも当然送れる(自分も送ったことがある)ということから想像すれば、その困難さはわかるだろう。

ちなみに、ラベルをよく見ると住所にもやや不自然な点がある。いつも自分のところに送られてくる時のAmazonのラベルの住所と微妙に違う(というか日本国内の住所の形式がよくわかっていない人がコピペしたような間違いがある)。怪しい。

返品すればいいのでは?

Amazonでの返品は基本的には注文者が注文履歴から行うもので、一方的にギフトで送り付けられた方が行うものではない。

一応、ギフトの返品というメニューもあるにはあるのだが、返品して自分に何の得があるのか。

返品は面倒な手続きや配送依頼などがあって、自分の時間を取られる。このご時世だが集荷なので置き配的なこともできない。それで自分に返金されるならともかく、この場合は何らかのおそらく悪意のある人物に返金されるわけだ。そんなことをしてやる義理はどこにもない。

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何が原因なのか

代引きであれば送り付け詐欺ということで、目的は明確でわかりやすい。だが、代引きでない商品を送り付けることに何のメリットがあるのか。

まずは送られてきた商品に何か共通するものはあるかどうかを調べてみた。

  • 国内のAmazonの倉庫から、Amazonの箱や袋で発送されている
  • 商品のキーワードで検索をかけてみると、Amazon-JPの直接販売ではなく、マーケットプレイスで売っている商品の可能性が高そう
  • 製品は中国製で、取り扱っているストアの詳細を見ると、中国の住所がほとんど
  • 価格は1,500〜4,000円程度

ということで、おそらく中国の業者が、日本のAmazonの倉庫からの発送を行うサービスである「フルフィルメント by Amazon」(以下FBA)を利用してマーケットプレイスで販売している商品の可能性が高いという結論に達した。

その上で、まずは2つの可能性を考えてみた。

  • 在庫処分説
  • ソーシャルハッキング説

それぞれ説明したい。

在庫処分説

FBAを利用している場合はAmazonの倉庫を利用していることになるので、当然保管料がかかる。無駄な在庫が長期間Amazonの倉庫を占有することは望ましくない。なおかつ、中国から出品の場合は中国まで返送する費用もかかるため、返送してもらうくらいなら適当な客にギフトとして送り付けたほうが良い、という説。

配送先の住所は、過去にストアで買い物した客の住所を使えば良いだろう。個人情報保護的には間違っている気がするが、そもそも高評価レビューすれば2000円Amazonギフト券上げます的なガッツリ規約違反の出品が横行しているAmazonの中華ストアにそんな細かい倫理は通用しないと思う。

ソーシャルハッキング説

住所とネット上のアイデンティティにある程度対応がついた状態で、例えばどう考えてもおかしな商品が連続で送られてくるなど、Twitterとかにツイートしたくなるだろうということで、最後の答え合わせをソーシャルハッキングで行った、という説。

仮説の検討

しばらく考えていたのだけれども、やはりソーシャルハッキング説は根拠が薄いな、という結論になった。そんなまどろっこしいことをやるならもっとコスパに優れたソーシャルハッキングの方法はあるし、そもそもそんな大者でもないし、知ってる人は知ってるし、的な感じで。

さらに先述の、住所の文字列がおかしい件に関しても、そもそも住所をソーシャルハッキングする気ならそんな間違った住所に送らないだろうし、むしろ国外の業者が日本の住所の文字列を適当に扱ってる方が説明がつくと思う。

一方で在庫処分説に関しては考察のしがいがあるので、ここでは感覚的な話ではなく、具体的な数字を使って考察してみよう。

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在庫保管にかかる費用

FBAを利用している場合、在庫は常にコストを発生し続ける。具体的な費用は在庫保管料として公開されている。

2021年8月21日現在、通常の商品で、標準的なサイズの場合は1リットルで月額(日割りあり)5.160円(1〜9月)、7.760円(10〜12月)だ。ただし、長期在庫保管手数料というものがあり、在庫保管期限が365日を超えると、1リットルあたり17.773円が月額徴収される(日割りなし)。

おそらく長期在庫補完手数料は在庫保管料にプラスして請求されると思われるため、1年を経過した商品に関しては、1 リットルあたり22.933円(1〜9月)、25.533円(10〜12月)が月額で徴収される。

在庫保管制限

FBAを利用する各ストアには在庫保管制限というものがあり、小口出品者では0.28立方メートル、すなわち280リットル分が割り当てられる。

これをオーバーした場合は、在庫超過補完手数料というものが発生する。これは1立方メートルあたり月額31,727円を日割りにするようなので、1リットルで換算すると月額31.727円となる。

返送・廃棄にかかる費用

返送、廃棄に関する費用は容積ではなく重量で行われるようだ。小型および標準サイズの場合は次の費用体系になっている。

重量 費用
0~200g 商品1点あたり30円
201~500g 商品1点あたり45円
501~1,000g 商品1点あたり60円
1001g~ 商品1点あたり100円 +
1,000g*を超えた分の1,000gにつき40円

なお、国外への返送はできないため、希望する場合はサードパーティ業者に依頼して転送してもらうことになるようだ。

そもそものAmazonに出品するための手数料

Amazonに出品する場合の手数料は、出品プラン、販売手数料、配送料、その他の費用の合計となる。出品プランは定額なのでここでは置いておこう。販売手数料は、今回自分に送られてきた商品のカテゴリだと次のようになっている(具体的なカテゴリー名は身バレ防止のために出さない)。これは商品が売れるたびに支払う費用だ。

カテゴリ 販売手数料の割合 最低販売手数料
カテゴリA 8% 30円
カテゴリB 10% 30円
カテゴリC 15% 30円

FBAで配送する場合の配送手数料は、今回自分のところに届いた商品の多くは標準サイズ区分2となるはずなので、1商品当たり434円だ。

以上の数字の分析

さて、今回送られてきた商品の典型的な価格とサイズ、たとえば2,500円で容積が1リットル、500g、販売手数料10%のカテゴリの商品を考えた場合、次のような試算ができる(1円未満四捨五入)。

  • 廃棄する場合の料金:45円(国際返送はこれに加えてサードパーティ業者に払う費用が必要)
  • この先1年在庫する場合の在庫料金: 70円
  • すでに1年在庫していてこの先さらに1年在庫する場合の在庫料金: 283円
  • 在庫補完制限にかかった状態で1年在庫する場合の在庫料金: 450円
  • 誰かに送りつけた場合にAmazonに払う費用: 684円
    (破棄による在庫処分を比較対象の念頭に置いているので、在庫処分の損失は計上していない)

すなわち、かなり有利な条件を考えたとしても、これだけでは適当な人に送り付けることに金銭的なメリットがないのだ(在庫しておいてもその方がずっと安いし、廃棄が一番安い)。Amazonさんもあれだけ多くのマーケットプレイス業者を抱えられるということはそれなりにリーズナブルな料金にしているということだろう。

在庫処分以外の動機は?:ブラッシング

ということで、以上の計算が間違っていなければ、在庫処分だけの理由では、このような送りつけを行う合理性はないということだ。

実は、2つ目の商品が来た時点でその商品を特定し、どのような出品者が売りに出しているのかを見ていたのだが、その際にその業者の「フィードバック」(ストアレビュー的なもの)が「とても良い」「とても良い」「とても良い」のような不自然に短く画一的なレビューが並んでいたので、もしかしたらこれが狙いではないか、とその時閃いた(画面キャプチャを撮り忘れたが、今検索するとすでに商品のエントリ自体が見つからなかった)。

そんな考察を入れて、友人限定でこの件を相談したFacebookで、ブラッシングと呼ばれるネット商取引上の詐欺的な行為が今回の件に似ているという指摘があった。

たいていの電子商取引サイトでは複数の基準で販売者を評価し、その評価を顧客に示している。良い評価は売り上げを伸ばすことに繋がるため、こうした評価は販売者にとって非常に重要である。普通、売り上げた商品の数は、評価において重要な要素となっており、その評価を上げるために偽の注文を行うのがブラッシングである。

販売者は、偽の注文のためにブラッシング詐欺業者にいくらか支払うか、あるいは単に他人の情報を使用して自ら注文することでブラッシングを行うことができる。電子商取引サイトにおいて、ある注文が有効とされるには、通常、出荷済であることが前提となっている。それゆえ、販売者は空箱や安い商品を頻繁に出荷する。こうした偽の注文は、ばれることがなければ、販売者の評価を高め、電子商取引サイト上での検索結果の上部に自分の商品を表示させることができる。

出典:ブラッシング (インターネット商取引) - Wikipedia

確かにそうだ。FBAの商品は先ほどデータを紹介したように、できるだけ在庫を長期間保持しないような形で各種手数料の形態が組まれている。ここで、在庫処分とブラッシングの双方の効果があるということになれば、廃棄するよりは誰か適当な人に送って注文数を水増しし、さらにフィードバック(ストアレビュー)を絶賛の嵐にする、という動機付けは十分に現実性がありそうだ。

Wikipediaの記述によると、2019年に米国のAmazonを舞台にブラッシングが行われたことが報告されているようだ。なので、日本のAmazonでも同じことが行われる可能性は十分にあると考えられる。

先程の試算結果だと、廃棄する場合と送り付ける場合の差額は639円である。マーケットプレイスで購入した商品に真面目にストアレビューまで書く一般人はおそらくごく一握りだろう。一方でブラッシングを行えば、それらの注文の100%に対して、高評価をつけることが可能だ。なので、ここで不正を行うことはかなり意味があるのではないだろうか。特に悪いレビューをつけられた後などは。

在庫処分を兼ねて、数千円程度で「フィードバック」の最初のページから悪評を追い出すことが可能(「フィードバック」はページングをしないと最初の5件しか表示されない)だし、さらに5つ星ストアレビューを増やすことは、出品者一覧の中で選ばれる可能性を大きく増やすこととなるだろう。

何しろ、先ほども書いたがAmazonの中華ストアは、良いレビューを書いたらAmazonギフト券2000円プレゼント、的な不正が堂々とまかり通っていたりするのだ。それに比べたら639円なんてコストは遥かに安い。

では我々はどう対抗したらいいのか

もしこの仮定が正しいとすれば、このような詐欺的な手法をなくすには、ブラッシングへのペナルティを適切かつ速やかにAmazonに下してもらうしかないはずであり、そのためにはこのような不審な荷物が届いたときには速やかにAmazonのカスタマーサービスに連絡を入れ、伝票番号を報告することが望ましいと考える。

今回は自分も2件目以降は面倒くさくなってカスタマーサービスへの連絡をサボってしまっていたが、もし今後も届くようであれば直ちに報告をするようにしようと思う。

ということで、同じような体験をした人の参考になれば。