xckb的雑記帳

身の回りにあったことを雑多に語ります。

あなたもいつの間にかTwitterからBanされてる?: Search Suggestion Ban調査

さてこの記事では、自分が9年半使ったTwitterアカウントを先日捨てるきっかけとなった「Serach Suggestion Ban」という機能制限措置について調べたことをまとめてみたい。色々と酷い話ではあるのだが、可能な限り冷静に記事を書いていきたいと思う。

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まずは「自分はそんな凍結とかBanとかされちゃうような悪質なユーザーじゃないから無関係」とか思っていても、一応診断サイトで自分のTwitterアカウントがSearch Suggestion Banされているかどうかを調べてみることをお勧めする。まさに自分がそう思っていたのに、調べてみるとBanされていたので。診断サイトはこちら。

shadowban.eu

このサイトではSearch Suggestion Banの他にも、Search BanやThread Banと呼ばれる複数の非公式なアカウントBan(ここでは「シャドウバン」と総称されている)の状況を調べることが可能である。チェックするためにアカウント連携などをする必要もなく、アカウント名を入れるだけで結果が即座に表示されるので、気楽に入力して調べてみるのが良いだろう。自分以外のアカウントを調べることも可能だ。

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もし残念なことに、上の画像のようにSeach Suggestion Banと判定されてしまったら、以下の記事を真剣に読んで今後の対応を考えることをお勧めしたい。Search BanやThread Banと判定された場合は(仮にSearch Suggestion Banも同時に判定に入っていたとしても)おそらくそれほど長くない間おとなしくしていれば、まとめて解除されるようなので、そのようにすることをお勧めする。そのどちらでもなかった場合は、今後の可能性もあるが比較的気楽に以下の記事を読んでいただけると嬉しい。

(2019年6月6日)この記事を書いてから気がついた、最も誤解が広がっていると思われる3点について、短くまとめた記事を別途用意した。

xckb.hatenablog.com

目次

まずはよくあるアカウント凍結の話から

まさにこの記事を書いているときに頃合いもよく、Twitterで謎のBan祭りがあったらしい。なんとあの楠正憲さんまでアカウントを凍結されたということで、実にびっくりした(しかも先日某イベントで直接お見かけしたばかりだったこともあり…)。

しかし最も驚いたのは、楠さんのようなアカウントが凍結されたということ自体よりも、楠さんのようなアカウントを凍結するときでさえ、Twitterは何の事前の警告もなく突然凍結を行い、さらに凍結後も何も理由を説明していないらしい、ということだ。

(2019年6月3日 追記) どうやら異議申し立てによる解除後にご本人に説明はなされた模様。要するにスパムアカウント判別ロジックの誤判定ということらしい。凍結時に説明がなかったのは事実のようなので、上の記述は今のところ削除訂正しない。

また、もう一つ衝撃だったことは「楠さん、一体何書いたんだろう?」と思って、凍結を知った直後にtwilogを見に行ったのだけれども、楠さんのtwilogまでもが表示されなかったのだ。なんと、Twitterを凍結されたユーザは、twilogも見えなくなるらしい。これはTwitterの規約に準拠するために最近改修されたとか書いてあったのだが、つまりtwilogをTwitterのツイートの万が一のバックアップのつもりで使っているユーザって割といそうだと思うんだけど、それはバックアップになっていないのだよ、ということなのだ。

要するに、Twitterの胸先三寸で、今までつぶやいてきたツイートと共にtwilogも消え去るということだ。コンテンツの一貫性という点ではわからないでもないのだが、これはかなりショックな話である。

一方で、楠さんは海外出張中にもかかわらずすぐに対応し、異議申し立てを行い、アカウントは割とすぐに復活した。このような早急な対処がなぜ可能だったかといえば、さすがにアカウントが凍結されれば、本人はログインすることですぐに分かるし、フォロワーにも第三者にも「@」のリンクをたどれば凍結されている旨が表示されるので、誰の目にも明らかであるためだ。

しかし、Twitterはこのようなよく分かるようなプロセスを用いることなく、アカウントの機能を大きく損なう制限を加えた上に、異議申し立ても不可能な状態で放置することがある。その一つで非常に厄介なものが、俗に「Search Suggestion Ban」と呼ばれるものだ。

Search Suggestion Banとは何か

ここでは、Search Suggestion Banとはどういうものなのかを自分の実例を元に紹介し、その性質などについて考察したい。

実際にどのような影響があるのか

Search Suggestion BanとはTwitterが公式に認めたアカウントBanの種類ではない。おそらくシャドウバンという、ユーザに可能な限り知られない形で機能制限を行うアカウントBanが発見され話題となり、その判定サイトshadowban.euにおいて「Search Suggestion Ban」と判断されるタイプのBanがすなわち「Search Suggestion Ban」と呼ばれている、ということのようだ。

しかしこの名称、何度読んでもなぜ「Suggestion」なのかがよくわからない。Twitterを検索すると、この「Search Suggestion Ban」という名前から、「検索時のおすすめユーザに名前が出ないだけでしょ、その程度なら別に大したことないじゃん」などと安堵している人も見かけたりするのだが、ぜんぜん違うから。

で、さらに混乱を招いていると思われる理由の一つが、shadowban.euで出てくるSearch Suggestion Banの解説がわけがわからない、というより多分間違いなんじゃないか、ということだ。軽く翻訳してみよう。

Search Suggestion Ban
このタイプのbanは、ログアウト時に検索された際に、アカウントを検索候補や人々の検索結果に入れることを妨げる。Twitterは結びつきの強さや同様の指標を考慮しているようだ。結びつきの強いユーザに対しては検索候補に加えられるかも知れないが、その他のユーザからは隠される。

出典: shadowban.eu

何言っているのかわからない。この「ログアウト時に」というのは本人の意味なのか、検索側なのか。本人の意味であれば、たとえばTwitterのスマホアプリを利用していれば、あれは多分OAuthトークンでログイン状態を管理しているのでそもそも普通はログアウトなんてしない。検索側の意味ならば、そもそもログインしない状態でTwitterって検索できたっけ?

(2019年6月14日追記)ログアウト時にも検索は可能。たとえばTwitterにログインしていないブラウザを用意して、そこにツイートへの直リンURLを入れてみると、その画面から検索ボックスに到達できるので、そこから検索が可能となる。本稿の大筋には影響はないが補足しておく。

で、この記述が伝言ゲームで孫引きされて、多くのブログ記事やツイートにそう書かれているのだけれども、さらにこれを真に受けて「ログアウト時にしか影響がないなんて大したことじゃないんだな、まあいいや」とか正常性バイアス満載のツイートしている人とかもわりといるようで、実に胸が痛い。

自分のアカウントは冒頭に書いたとおり、いつの間にかSearch Suggestion Banを適用されていたので、そのアカウントと新しく作ったいくつかのアカウントを使って、様々な説を検証してみた。その結果、以下の振る舞いがSearch Suggestion Banという状態のそれなりに正確な記述であると信じている。

  • Search Suggestion Banは、ハッシュタグを検索対象にした場合を含むTwitterのツイート検索機能において、ユーザやそのツイートの発見可能性を大きく低下させるペナルティ措置である。
  • 以下の例外を除いたすべてのユーザの検索結果から、ペナルティ対象のアカウントのツイートを排除する。
    • 例外1: ペナルティ対象ユーザ自身
    • 例外2: Twitterの検索設定で「センシティブな内容を表示しない」をオフにしているユーザ(デフォルトはオン)
  • 排除の対象となる検索結果は「話題」(Web版では「話題のツイート」)タブだけではなく「最新」(Web版では「すべてのツイート」)タブも含まれる
  • 検索結果以外には影響はない。たとえば検索設定で「センシティブな内容を表示しない」をオンにしているユーザも、次のような場合はペナルティ対象ユーザのツイートを読むことができる。
    • あるユーザがペナルティ対象ユーザのツイートをリツイートした場合、そのユーザのフォロワーは通常通り、タイムラインでペナルティ対象ユーザのツイートを読むことができる。
    • ペナルティ対象ユーザのプロフィール画面に移動すればそのユーザのツイートを読むことはできる。
  • この制限が発動しても、Twitterからは何の連絡も来ないし、どのような理由で制限が発動したのか知る手段はない。
  • この制限は長期間、もしくは全く解除されないことが多い。少なくともある対策を行えばたいてい解除される、などと知られた方法は存在しない。

つまりこの制限が発動すると、仮に対象ユーザーがハッシュタグをつけてツイートしても、それはタイムラインで通常通り読めるフォロワーと、少しの例外ユーザーが検索経由で読めるだけで、大多数のユーザーには存在しないのと同じことになるわけだ。しかも、多くの場合は無期限で。

しかし一方、たとえば強力なインフルエンサー的なフォロワーがいた場合、その人にリツイートされると普通にツイートが広く拡散されたりする。まさかそのような状態のアカウントが実はbanされた状態であり、自力での記事拡散などが困難なゾンビアカウントになっているとはたいていの場合、思いもしないだろう。

ということで、ここまで知ったらなおのこと、何が「Suggestion」なのかわからない。どうもこのあたりを読む限りでは、次のような経緯があるように想像できるが自信はない。

blog.twitter.com

以下はあくまで憶測である。

  • 当初Search Suggestion Banには、上のような制限に加えて、ペナルティ対象ユーザが検索時のお勧めユーザ的なところに出現しないという制限があった
  • ところが、当然そのユーザがおすすめされて当たり前の検索結果に表示されない、ということが話題になってしまった
  • これが政治的な議論についての問題だったっため、言論弾圧ではないかとシャドウバンが不本意な形で有名になってしまった
  • Twitterがこのお勧め機能に関してのみバグとして修正した結果、Search Suggestion Banという名前だけが残った

ともあれ、以上の内容を読んで、このSearch Suggestion Banはひどい機能制限だと思うだろうか、それとも大したことないと思うだろうか。

Search Suggestion Banは悪質か

人によって考え方は異なるだろうし、Twitterに求めるものも異なるだろう。だから絶対にこうだと意見を押し付けるつもりはないが、自分はこの機能は酷いペナルティだと思う。少なくとも9年半使った4桁フォロワーの、しかも(もはや再取得できない)4文字アカウントを捨てる程度には邪悪な呪いだと思うのだ。

まずはユーザ自身とそのフォロワーからは検索結果に対象ユーザのツイートが含まれるという点である。なんとなく温情措置のようにも見えるのだが、悪意を持って見れば、ユーザ自身とフォロワーから機能制限に気づかれることを防ぐための機能としか思えない。自分も、たまたまSearch Suggestion Banを食らった人のツイートを見て、絶対に自分には無関係と思い戯れに診断サイトに自分のアカウント名を入力してはじめて、自分がBanの対象だったと知ったのだった。

そして「センシティブな内容を表示しない」をオフにしているユーザにはきちんと表示されるという点。つまりSearch Suggestion Banを受けるユーザのツイートはすべてセンシティブであるという考えなのだと思われるが、そもそもこのオプションを知っているユーザはどの程度いるのだろうか?

Twitterのツイートに関するセキュリティ設定には、次の4つがある。

  1. センシティブな内容を含む画像・動画を表示する(デフォルトオフ)
  2. 画像・動画を含むツイートをする時に、センシティブな内容であると設定する(デフォルトオフ)
  3. 検索時にセンシティブな内容を表示しない(デフォルトオン)
  4. 検索時にミュート・ブロックしているユーザのツイートを表示しない(デフォルトオン)

まずは2.はツイートを読むときではなく書くときのオプションなので今の議論には関係ない。

では、1.の「センシティブな内容を含む画像・動画を表示する」はどのように機能するのか。これがデフォルトのオフになっていると、たとえばWeb版のTwitterでは、この条件に合致したツイートは次のように表示される(たまたまリツイートでみかけた、あるエロ漫画家の方のツイートを使わせていただく)。

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ゾーニングなどを正しく意識しているエロ漫画家の方などは、2.の「画像・動画を含むツイートをする時に、センシティブな内容であると設定する」をオンに設定している。これを設定していると上のようにツイートの下の画像・動画の部分が隠されて表示され、その上で「表示」のリンクをクリックすると、隠された画像や動画も表示することができるのである。また、設定を行うことでいつでも読めるようにできるということも、表示中に示唆されている。

ただし、公式スマホアプリで同じツイートを表示してみると、次のように画像・動画だけではなくツイート全体がセンシティブなものとして隠される。これは2.の設定項目から読み取れるゾーニングのポリシーに対してオーバーキルであるように見えるがいかがなものか。

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まあ一応ツイートをタップして詳細表示にすると、設定次第で読めるようになるという情報とモバイルWeb版設定画面へのリンクは示されるようにはなっているのだが、アプリ内での設定はできないので、もう一度Web版にログインする必要があったりと少し面倒くさい。

このような、Web版と公式スマホアプリでの扱いの違いについて、さらに大きな不満と不信感を持ってしまうのが、実はSearch Suggestion Banの扱いなのだ。

Search Suggestion Banは上の4条件のうち3.の「検索時にセンシティブな内容を表示しない」が関係している。だが、この設定項目は公式スマホアプリには存在しないのだ。公式スマホアプリのセキュリティ設定は、実はこれだけである。

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以前は1.の「センシティブな内容を含む画像・動画を表示しない」も設定項目にあったらしいが、とりあえず現在の設定項目はこれだけだ。ということは、スマホでTwitterに登録して、アプリでのみTwitterを利用している大多数のユーザは3.の条件の設定を変更することはできないし、そもそもそのような設定項目があることすら知ることができないのだ。

(2019年6月4日 追記)実はAndroid版のTwitterアプリでは「検索時にセンシティブな内容を表示しない」の設定項目は存在するとの情報をいただきましたので、実マシンで確認したところ、たしかにAndroidのTwitterアプリ最新版では設定できるということを確認しました。以前はiOS版アプリも設定できたという情報も頂いているので、もしかしたらAndroid版もそのうち設定できなくなるのかもしれません。一方で、iOSのみで設定できなくなっているのはiOSアプリに対するAppleの審査の影響ではないかという説も考えられるようですので、どちらの原因かは今後のAndroidアプリが同様に設定できなくするかどうかで推定できそうです。いずれにせよ、不明瞭な基準でユーザに知らせることなく、異議申し立てを受け付けることもなくユーザのツイートをすべてセンシティブコンテンツであると設定しているのはTwitterであることに違いはありません。もしiOSアプリがそのような方針であるのだとしても、その状況をわかった上でSearch Suggestion Banを今の形で運用しているTwitterに責任があると考えます。

そして、さらに重要なことは、Search Suggestion Banを食らったユーザのツイートは、上の「センシティブな画像・動画」のように、ここにセンシティブな画像や動画がありますよ、という情報すら表示されることがなく、検索画面から単純に除外されるのだ。ユーザはそこに本来ツイートがあったということすら知ることはできない。これはスマホアプリもWeb版も同様である。

たとえば、このブログのホスト名であるxckb.hatenablog.comをキーワードとして、Search Suggestion Banを受けたアカウント自身からの検索した結果(最新タブ)が左で、デフォルト設定ユーザからの検索結果(最新タブ)が右だ。

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検索画面で「最新」タブ(Web版では「すべてのツイート」)を選べば誰にも同じ結果が表示されると信じている人には驚いてしまう話だと思うが、右の画面で2番目に出てくるツイートまでの間に、左の画面では10個の自分自身のツイートと、1個の他ユーザのツイートが存在しているのだ。

なぜ自分以外のツイートにも表示されていないものがあるの? と思ってshadowban.euで調べると、そのツイートをしたユーザも、同様にSearch Suggestion Banを食らっていたのだった。ご愁傷様。

このように、Search Suggestion Banは、対象ユーザに可能な限り気が付かれないように、フォロワー以外の人間との接点を可能な限り妨害するという設計思想で作られている機能のように思える。つまり、Twitterで今のフォロワー以外にも自分の書いたものを読んでもらいたいとか、コミュニケーションを取りたいと考えている人には最悪の機能制限であり、なおかつこれを本人やフォロワーに発覚しないように設計していることは、非常に邪悪な設計であると考える。

絵師やミュージシャンなどの人々にもこのSearch Suggestion Banを食らっている人が多くいるようだが、そういう人たちが最もTwitterに求める機能は、まさに被検索可能性ではないのか。本当に可哀想だ。

(2019年6月16日 追記) 実際にどのくらいのアクティブユーザーがSearch Suggestion Banを食らっているのかの調査・推計を行ったので、新しく記事を書いてみた。
xckb.hatenablog.com

(2019年7月2日 追記) 上記記事の推定をさらに現実的な仮定で計算し直してみた。こちらのほうが実際の感覚に近い数字となっている。
xckb.hatenablog.com

Twitterは公式にどのように表明しているのか

さて、TwitterはSearch Suggestion Banを含むシャドウバンを公式には認めていない、という記事やツイートもよく読むのだが、これも判定サイトであるshadowban.euの記述が元と思われる。少し長くなるがこちらもさらっと翻訳しておく。

2018年7月のブログ記事においてTwitterは、シャドウバンを故意に誰かのコンテンツを本人に知られぬように投稿者本人以外に発見できないようにすることと定義した上で、彼らはシャドウバンを行っていない、と主張している。もしTwitter自身の定義に厳密に従うのであれば、重要なことは発見可能性であり、この主張は間違いとは言い切れない。この後にTwitterは、あなたがフォローしているアカウントのツイートは常に読むことが可能である(たとえそのツイートを見つけるために、たとえばそのユーザのプロフィールを直接見に行くような余計な手間を掛けなければならないかも知れないけれども)と主張することで、この定義の欺瞞性に関するヒントを提供してくれている。問題は明らかである。すなわち、ツイートを発見することに余計な手間が必要であるということは、もしTwitterがそれを定義することを許すのであれば、シャドウバンではないのである。たとえスレッド中のツイートが他のユーザに対して不可視にされていても、またフォロワーのタイムラインにツイートが表示されなくても、それらのツイートはプロフィールの「ツイートと返信」のタブに行けば見つけることができるのである。Twitterとは異なり、我々はそのような状態はシャドウバンであると理解する。なぜなら他のユーザはそのようなナビゲーションを行うことなしに、そのツイートが存在することを知ることはできないからである。

出典: shadowban.eu

ここで触れられているブログ記事は、先程もSearch Suggestion Banの語源に関する憶測のところで紹介したものと同じだ。スレッド中のツイートが不可視となったり、フォロワーから完全にツイートが不可視となる、とかいきなり出てくるのだけれども、これはshadowban.euが扱う(扱っていた)他のタイプのシャドウバンを指していると思われる(前者はThread Banだが、後者は現状のshadowban.euには該当するbanはないようだ)。

いずれにせよ、Twitterはシャドウバンというものを認めていないというのはどうも正しいようだ。彼らが非常に狭義に再定義した「シャドウバン」を彼らは行っていない、行っていないと主張する以上は、抗議してもおそらく無駄なんだろう。抗議した結果解除されたなんてツイートや記事は見たことがない。

最初にも書いた通り、しばしば見当はずれのTwitter凍結騒ぎが発生するようだが、明らかにユーザからはその存在が明らかな凍結でさえあれほど揉めているのだ。認めてさえいないbanに対して抗議してその判定を覆すような労力をTwitterにかけるのは、まあ確実に労力に見合わないだろう。そもそも凍結時には表示されるらしい異議申し立てのための情報やリンクが、シャドウバンされたユーザには表示されない。

それにしてもこのTwitter公式ブログの記事は不誠実だと思う。仮に採用時の女性差別疑惑が問題になった企業があったとして「そもそも女性への採用差別とは何か。女性を一切採用しないという意味であればそのような女性への採用差別を弊社では行っていない。仮に待遇面や必要な条件に違いがあったとしても、弊社は女性への採用差別を行っていないのだ」とか公式ブログに書いたら大炎上だろう。

そして、このブログに関してもう一点不誠実であると考えている部分がある。それは、検索について語るときに暗に「話題」(Web版では「話題のツイート」)タブのことしか語っていないように見える点である。

Search Suggestion Ban対象のユーザーは、「話題」タブだけではなく「最新」(Web版では「すべてのツイート」)の検索結果からも排除される。普通、しつこくハッシュタグや特定の話題を追うユーザーは「話題」ではなく「最新」をチェックするだろう。Search Suggestion Banに問題意識を持っている人々は、Twitterがある程度の裁量を持っていることが明らかな「話題」タブだけではなく、「最新」タブの検索結果からも対象ユーザのツイートが排除されることを問題にしているのである。

データで見るSearch Suggestion Banの影響

さて、次はSearch Suggestion Banには実際にどの程度のインプレッション悪化が見られるのか、どの程度解除の可能性があるのかなどについて、手元にあるデータを用いて推測してみたい。

インプレッション悪化

まず、実際にSearch Suggestion Banを食らったことでどの程ツイートのインプレッションに悪影響があったのかについて数字で比較してみたいと思ったのだが、なかなか適切なネタが見つからない。ということで一つ考えたのが、毎回ほぼ参加しているデザインフェスタの実況ツイートで、リツイートを1回もされなかったツイートのインプレッション数を比較してみた。

リツイートはSearch Suggestion Banの影響を受けないので、その影響を極力除いたこのような比較を行ってみたのだが、インプレッションへの影響をさらに厳密に除くのであれば、リツイートに加えて「いいね」の数もゼロである記事で比べるべきかと思う。しかし、そうすると著しくサンプルが少なくなってしまって比較ができないので、申し訳ないがそこは無視している。

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グラフ中黄色い「Vol.49 (2019-05)」となっているデータのみが、おそらくSearch Suggestion Banを食らっている状態での値であり、明らかにインプレッションが大きく下がっていることが見て取れる。また、インプレッション数が下がると当然リツイート数、いいね数も下がるため、実際には累乗的に全体的なインプレッションやエンゲージメントに差が生じることとなる。

ちなみに「夏」のデータはより規模や参加人数の小さい夏のデザインフェスタの値であり、それよりも遥かに春でインプレッションが少ないというのは、絶望的な状態と言っていいと考える。

解除の可能性はどの程度あるのか

先述の通り、Search Suggestion Banはユーザに知られないことを目的に作られており、それゆえにユーザにペナルティを課した理由が説明されることはない。つまり、最強のセリフとして有名な、

「私が何に怒っているかわかる?」

というやつそのものである。中にはTwitterに忖度して様々な対策を試みている人や、「〇〇をしたらすぐ解除された」と言っている人もいるのだが、そう書いてある対策を見つけた限りいくつか試してみたが「長期間放置する」というものを除き、一つとして成功しなかった。

ちなみに「長期間放置する」はまだ調べていないが、それは単に調べるのに長期間が必要であるというだけの理由だ。

なお、おそらくSearch BanはSearch Suggestion Banの上位互換であるため、shadowban.euでSearch Banに引っかかる人は皆、Search Suggestion Banも検出されるようだ。そしてshadowban.euはSearch Suggestion Banの判定結果を一番最初に表示する。

このようなUI的な事情で、実際にはSearch Banの人が自分は「Search Suggestion Banに引っかかった」と言っている可能性があり、Twitterなどで語られる「Search Suggestion Banが検出された」というだけの報告ツイートはあまり信用できない。

さらに経験則からSearch BanとThread Banは割と短期間おとなしくしていれば解除されることが知られており、それと同時にSearch Suggestion Banも解除されるため「Search Suggestion Banが解除された」というツイートも、実際には前の理由でSearch Banが解除されただけの可能性もあるわけだ。

ということで、問題は「Search Suggestion Ban」単体で引っかかっている場合に、それは解除されるのかどうか、ということだ。これを調べるために以下の方法を考えた。

  • 2ヶ月以上前のツイートから、日本語で書かれていて、なおかつ次の2条件を満たすshadowban.euの画面キャプチャがついているツイートを抽出した、
    • 自分自身もしくはそのツイートがメンションしているユーザに対する判定結果である。
    • 画面キャプチャからSearch Suggestion Ban「のみ」が有効になっていることが確認できる。
  • それらのユーザの現在の状況をshadowban.euで調べ、Search Suggestion Banが解消されているかどうか調べる。

当然、これらのツイートの抽出は「検索時にセンシティブな内容を表示しない」設定をオフにしたアカウントから検出した。そうでないと、現状でまだBanされたままのアカウントのツイートが検索結果に出てこないためである。

この調査によって、Search Suggestion Banはどの程度の確率で解除されるかという推定をしてみたい。集計した結果は以下の通りだ。

報告月 報告数 解消数
2019-01 2 0
2019-02 38 8
2019-03 1 0
合計 41 8

ほとんどの報告が2月、しかも2月25日に集中しているのだが、おそらくこれはSearch Suggestion Banの話題が特定クラスタでバズってみんなチェックしまくった日があったのだろう。いずれにせよ、解除されているのは41件中わずか8件。約20%だ。

しかもこのサンプルは自分もしくはメンションされたユーザが「Search Suggestion Banされている」ということを確実に認識した場合の改善率であり、無意識に食らったままの多くのアカウントに関しては、さらに改善率が低いことが予想される。

つまり、自分がBanされたということを意識した上でTwitterを利用し続けても、ほぼ3ヶ月が経過しても80%のユーザは解除されない、というのがSearch Suggestion Banの現状と思ってよいのだろう。こんなに無駄に長期間、Twitterに対する忖度を続けるなんてまっぴら御免である。しかも「私が何に怒っているかわかる?」攻撃であるがゆえに、長期間やっても見当違いの対策であれば全くの無駄である。

このような理由で、自分は9年半ずっと使った愛着のあったアカウントをあっさり捨てて、新しいアカウントを作り直すことを決めたのだった。

アカウントを作り直すと何が変わるか

まず、新しいアカウントを作る際に、以前と全く同様に運用した場合、同じ運命をたどる可能性は十分にあるため、不本意ではあるがいくつかTwitterの意向を忖度して運用を変えてみることとした。まず、後述のように、もしかすると複数ハッシュタグの連投などが原因となった可能性も考えられるので、実況アカウントを分けることにした。

以前は、自分は複垢のようなものは避けるべき派だったのだが、こうもTwitterがカジュアルにシャドウバンやアカウント凍結を発動するようだとそうも言ってられない。被害は局所化するべきである。

さらに、メインのアカウントのセキュリティ設定は全てデフォルトのままとし、少なくともプロフィールや大多数の記事ががセンシティブと判断されるようなユーザーは、メインのアカウントからはフォローしないようにした。そのかわり、実況垢のセキュリティ設定を全解放にして、そのようなユーザーは実況垢からフォローすることにした。大事なことなのでもう一度言うのだけれども、被害は局所化するべきである。

アカウントを作り直す上で意外なリミットになったのは、一般ユーザーが1日にフォローできる人数は400人、という制限である。調子に乗って前のアカウントでフォローしていたアカウントを片っ端から(とはいえちょっと取捨選択しつつ)フォローしていたら、あっという間に400人をフォローしきってしまった。続きは明日…になってしまう。

まあ、フォロー数は前アカウントの約半分に抑え、フォロワー数はゼロからのスタートとなった。約1週間たった現在は、アカウント作成前の大体7分の1程度のフォロワーの方が戻ってきていただいた感じなのだけれども、その現状を報告したい。

  • 当たり前であるが、フォロワーからのインプレッションと思われる、ツイート直後のインプレッション数は減った。これはフォロワーが7分の1に減ったのだから当たり前であるが、実際のところそこまでの数の差はない。せいぜい2, 3分の1になった感覚である。
  • ツイートしてから時間のたったインプレッション数は圧倒的に改善した。おそらく検索によって生じるインプレッションであろう。特に、ハッシュタグを入れたツイートへのインプレッションは劇的に向上した。
  • ハッシュタグ経由で知らない人が「いいね」をくれたりリツイートしてくれたりで、それが新たなインプレッションを呼ぶ良い意味での相乗効果が復活した。
  • 今までほとんど来なかったスパムフォロワー(いきなりフォローして、こちらがフォローバックしないといつの間にかフォロー解除して去っていくアカウントとか)が復活した。Twitterが進化してそういうアカウントから自分を守ってくれるようになったものだとばかり思っていたら、単にスパムフォロワーからもこちらが見えないように制限されていただけだったとは思わなかった。

まあ最後はいいとも悪いとも言い難いのだけれども、総合的な結論としては、ああ昔のアカウントを捨ててよかった、ということだ。が、そもそもTwitterってこういうことでいいの? という疑問は当然あるわけなのだが。

なぜ不可解なSearch Suggestion Banは発生するのか

昨今、Twitterのアカウントがどう考えてもおかしい基準で凍結が行われていると思われる話をよく聞く。たとえば友人とふざけて「殺すぞ」とか言い合っていたら凍結されたとか、「暑いもう死ぬー」とかツイートしたら凍結されたとかそういう類だ。

凍結した場合は、ユーザはたちどころに気がつくし、その根拠を示されることもあるようなので比較的解決も早い。問題点が解消されたらすぐに復活することが多いらしい。

問題はSearch Suggestion Banだ。多くのユーザがこの適用を受けているようだが、仮にその根拠が通常のアカウント凍結と同様に、あまり適切とは言えないロジックで行われているとしたらどうだろうか。

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もちろん自分は、Twitterのような大規模なシステムで、ある程度機械的にアカウントの大量停止・制限措置を行うことは仕方がないと理解している。しかしそれは、その処分が行われたことがユーザに通知され、もしその処理が不当であれば不服の申立ができることが最低の条件であるはずだ。Search Suggestion Banは、本人やフォロワーにその処分が可能な限り知られないように設計されており、さらに不服申立ての手段も提供されていない。

すなわち、Search Suggestion Banは、このような機械的な処理を行う処分としての最低条件を満たしていないと考える。これを通常のアカウント停止と同様の不明確な根拠で機械的に発動しているとするならば、システムの円滑な運用やコミュニティの活性化に真っ向から反するものだ。このような処分を機械的に行っているTwitterに関しては、その良識を疑わざるを得ない。

ここで発想を変えてみるが、そもそもSearch Suggestion Banは何のためのbanなのだろう? その仕様から逆算して、本来適用しようとした迷惑なアカウント像を想像してみたいと思う。

Search Suggestion Banはたしかに本人やフォロワーには非常に気づかれにくいが、その分バレた時にユーザの強い怒りを買う可能性がある。そんな対策を普通、一般のユーザをメインの対象として行うだろうか?

  • 本人には通知されない
  • フォロワーにもわからない
  • Webからしかできない特別な設定をしているユーザを除く大多数のユーザの検索結果(ハッシュタグ検索含む)からは排除される

運営的に、こういう仕様のbanが望ましい排除対象のユーザとはどのようなツイートを行う者なのだろう?

真っ先に思いつくのは、トレンドに乗ってるような無関係なハッシュタグを複数並べて、そこに宣伝ツイートを乗せるタイプのハッシュタグスパマーである。たしかにこれは迷惑だ。ぜひbanしていただきたい。

自分もトレンドのハッシュタグを複数つけたツイートをしたことがなかったかと聞かれると、もしかしてあったかも、と答えざるを得ないので、そういうツイートがあまり頭の良くないAIにスパマー判定された可能性もあるかも知れない。

しかしいずれにせよ、この目的に対しては、もっと適しているシャドウバンが他に用意されている。shadowban.euで現在検出できるシャドウバンの種類は、Search Suggestion Ban以外にも以下の2つがある。

  • Search Ban: センシティブな記事に関する検索設定にかかわらず、すべての検索結果から該当アカウントのツイートが排除される。ただし(Search Suggestion Banと異なり)、問題が解決されると比較的すぐに解除される模様。
  • Thread Ban: リプライによるスレッドから該当ユーザのツイートが排除される。これも、問題が解決されると比較的すぐに解除される模様。

自分だったら、いくらセンシティブなツイートを読んでもいいと設定していたとしても、別にハッシュタグスパマーのツイートまでは読みたくない。そのため、ハッシュタグスパムに関してはこのSearch Banの方がずっとありがたいと思うのだが、そうするとSearch Suggestion Banは何のために存在するのだろう。

とはいえ、これ以外にSearch Suggestion Banが有効そうな悪質ユーザ像が思いつかないのも確かだ。 もしかしたらこういう悪質なユーザの判断システムに、昨今の不適切凍結騒ぎのようなおおらかなロジックがあって、多くのユーザが不適切にSearch Suggestion Banされたけれどもまだ気がついていない、という可能性もあると思われる。

ということで、まずはできるだけ多くのユーザに、shadowban.euで自分のアカウントのシャドウバン状態を調べてみてほしいと思うのだ。

さて、今更昔のアカウントを復活されてもむしろ困るのだが、「長期間放置する」という対策が功を奏して今後解除されることはあるのかないのか、定期的に調べておきたいと思う。

(2019年6月4日 追記)こちらの記事も参考になりますので紹介します。

note.mu