さてそろそろ、2021年冬アニメで俺が圧倒的に気に入っていて、でも特別編が先月末に公開されたばかりの「ワンエグ」こと「ワンダーエッグ・プライオリティ」の話をしようじゃないか。
出典:「ワンダーエッグ・プライオリティ」OP
…と思いつつ、この作品を自分の中で落ち着けるのに時間がかかってしまい、放送からはや2週間が経ってしまった。さすがに間が空きすぎたので、そろそろ公開しようかと思う。タイトルは以前「よりもい」の完結後に書いた、この記事のフォーマットに合わせる形でいってみようか。
というわけでこの「ワンダーエッグ・プライオリティ」、あまりの高クオリティ作画のためかどうかは分からないが、ギリギリの制作体制がついに力尽きたのか、第8回が総集編化して玉突きで最終話が落ちてしまい、3ヶ月後の6月29日深夜に特別編として、総集編と本来の最終話の内容とのミックスで1時間枠として放送された。
が、世間の反応をつらつらと眺めると、この終わり方には割と不評が多いようだ。まあ、結構な伏線を回収せずに放り出した感があるので、一般的評価としては残当としか言いようがない。
あと、せっかく特別編として1時間枠を取ったのに、結局30分は総集編をやってしまったというのも、1時間あればワンチャン色々回収できるのでは的な期待をしてしまうから、そのせいで余計落胆してしまう気持ちもとてもよくわかる。
まあ、結果的には普通に本放送時に落とした最終回を3ヶ月後に放送した、という体なので、それならそうと最初からそう言ってくれた方が良かった気もするんだけどな。
だが、世間の評価はさておき、特別編を何回か繰り返し見てみた感想としては「まあみんなの言うことも分からんではないが、やっぱ俺こういうの大好物だぞ」ということだ。そしてその後も以前の回を含めて何度も見てるけど、やっぱり好きだ(おかげで夏アニメをまだあんまりチェックできてないぞ)。
ちなみに第5回まで放送された時点の感想はこちら。
早速、この「ワンダーエッグ・プライオリティ」について、終盤を中心にがっつりと語っていこうと思う。とはいえ、あまり広く浅く語っても退屈になると思うので、要点を絞って、そこから話を進めていこうか。
そんなわけで、どこに要点を絞ろうか。…そうだな、今回の章立てはこんな感じでいってみよう!
あと、あまり過剰な深読み(妄想ともいう)は抑えて、できるだけ描かれていることを素直に読み取っていく、というポリシーでやっていくことにしようかね。
はじめに:パラレルワールドの狭間の泡、リンボとしてのエッグ世界
そもそもエッグ世界って何だろう、という重要な設定の根本も、最後まで結論がぶん投げられたという印象もあるが、実は意外にヒントは随所に散りばめられていたかのも知れない、と思っている。
自殺した死者の魂が、復活に向けて彫像という形で凍結されて待つ場所、という意味では、エッグ世界はリンボ(辺獄)的だ。そしてそこでは、他の自殺した魂たちの死の原因となったトラウマを浄化するための戦いも行われている。
第1回のラストで話された通り、浄化された魂は新たな彫像となり、おそらく別のリンボが作られる。そしてそのリンボにある彫像の人物を復活させたいと願い、彫像とは別の魂たち、つまりエッグを浄化する役目を担っているのが、アイたちエッグ戦士である。
出典:「ワンダーエッグ・プライオリティ」第1回「子供の領分」
彫像から生き返った後の彼女たちの変化に関しては、パラレルワールドで自殺せずに生きている別の彼女たちが移動してきた、という解釈もネットで散見されたように思うが、おそらく彼女たちはパラレルワールドからやってきたわけではなく、本当に彫像が復活したものなのだろう、と、俺は考えている。
おそらく、ハルカやちえみが彫像から復活したときの桃恵やリカに対する態度とその後の経緯のギャップから、このパラレルワールド説が出てきたのだと思うが、思い込みを排除してあらためてこの2人の復活シーンを見なおしてみると、単なる友人に対する反応や、アイドルの普通の握手会のような関係性である、と思ってもそうおかしくない。
たしかに彫像から復活した時、桃恵に対するハルカ、リカに対するちえみは、少なくともある程度の好意を持っているように見えるが、一方小糸は復活直後からアイに無関心だったように思えるし、アイルに至ってはねいるに対する敵意を隠していない。
出典:「ワンダーエッグ・プライオリティ」第12回「負けざる戦士」
つまり、エッグ世界で彫像から復活した直後の彼女たちと、実際の世界に復活した彼女たちは別人物と考える根拠はない、と思う。
もし、彫像となるのが死の原因となったトラウマが解消されたことが前提となるのであれば、そのトラウマの解消というものが、結果として「執着」の解消という形で現れたり(ハルカやちえみ)、「関心」の消滅という形で現れたり(小糸)するかもしれないし、もしかするとアイルは「嫉妬」は解消したけど、その分純粋な悪意が残ったのかもしれない。
アイルに関しては物語中でほとんど描かれていないため単なる想像に過ぎないが、自殺に至る原因を浄化したところで、他人を殺そうとする原因まで浄化できるとは限らないだろう。
そして、たしかに少女たちを自殺に引きずり込んでいるのはフリル一味だが、彫像を復活させる儀式にもフリル一味が絡んでいるように見えるのが構造的に興味深い。アカと裏アカはフリル一味の思惑と持ちつ持たれつの関係で、エッグ世界とエッグ戦士のエコシステムを維持しているのではないのか。そんな疑惑を感じずにはいられない。
出典:「ワンダーエッグ・プライオリティ」第10回「告白」
また、これらのエッグ世界群は、パラレルワールドに隣接しており、その間で人やものがやりとりされることがある。むしろ、エッグ世界はパラレルワールドの狭間にある泡のような概念なのだろうか、と想像する。
さて、エッグ世界と現実世界とのやりとりに関して考えると、一つ気になる問題がある。
実際には劇中で描かれることはなかったが、エッグ戦士がエッグ世界で死ぬ、ということがあった場合、現実の世界で具体的に何が起こるのだろうか? 仮に第12回で、本来のアイがキララに左目を奪われて死んだ場合、現実世界では何が起こるのだろうか。
どうだろう? この2つのパターンのいずれかとなるだろうか。
- 寝ているアイはそのまま体が傷つき、目を奪われたまま現実で死んで見つかる
- ひまりのように謎の自殺を遂げる
おそらく「死の誘惑」に負けると後者のようになるのだろう。それはいい。だが、目と心臓をやられるという例外事項に該当した場合は、前者のような気がしてならない。いきなりホラーだ。
身体的な怪我が現実世界に持ち越されたり、小道具が「夢」との境界を越えるということは今までも幾度も起こってきた。傷ついた体はエッグ世界から現実世界にそのまま移動する。エッグ世界で目か心臓をやられて死んだら、死んだ状態のまま現実世界に移動するのではないかと思う。
出典:「ワンダーエッグ・プライオリティ」第1回「子供の領分」
さらに、アイのエッグ世界にはパラレルワールドから別のアイがやってきた。どうやらエッグ世界には「同じ人間が2人存在してはいけない」という制約もないらしい。また、特別編でいきなり復活した寿は、エッグ世界をハックして、面白そうなパラレルワールドに移動してみる方法を開発したのかも知れない。
さて、そんな感じでエッグ世界という概念をぼんやりと眺めた上で、まずはこの「もう1人のアイ」の話から語り始めてみようか。
もう1人のアイ
第12回で「56」(黄金虫暗号で「AI」)と印字された卵から出てきたもう1人のアイ(以下「裏アイ」と呼ぶ)。我々が今まで見てきたアイ(以下「表アイ」と呼ぶ)との大きな違いは「小糸と出会っていない」という点である。
つまり、小糸との出会いがなければアイは死んでいた、ということだろう。
出典:「ワンダーエッグ・プライオリティ」第12回「負けざる戦士」
表アイと裏アイとを見分けるのはヘアピンの形だ。改めて第1回を見直すと、小糸との出会いと別れを描いたパートでは、アイは裏アイと同じ形のヘアピンをしている。小糸の事件の後、どこかのタイミングでヘアピンを変えたのだろう。
出典:「ワンダーエッグ・プライオリティ」第1回「子供の領分」
裏アイのワンダーキラー、つまり裏アイのトラウマは沢木先生(以下、沢木キラー)。表アイの武器である4色ボールペンと同じ色の4色の絵の具で攻撃してくる。緑は物を溶かす、黄色は滑って転倒させる、赤はおそらく炎、青は精神的な攻撃に対応するらしい。
出典:「ワンダーエッグ・プライオリティ」第12回「負けざる戦士」
武器の色が同じ構成なのは、ボールペンの武器も沢木キラーの武器も同じアイから生まれたものである、ということを示唆しているのだろう。
そもそも、第1回でくるみのボールペンが登場した時、3色っぽかったり4色っぽかったり、色の順番が入れ替わったりと、ケアレスミスで間違えたにしてはあまりにボールペンの設定がコロコロ変わっていて不審に思っていたのだが、武器になってからは上から見て時計回りに赤青緑黄で安定している。沢木キラーの絵の具も、下から見て時計回りに赤青緑黄の順番だ。
出典:「ワンダーエッグ・プライオリティ」第1回「子供の領分」
この沢木キラーを倒したことでアイはミッションコンプリートしてしまう。殺されるのを防ぐためにレオンくんをしまった表アイに、キララロドリゲスマチュード18世宵の明星SSプラム(以下キララ)は目を狙った攻撃を加える。
第1回でくるみがアイに伝えたように、目か心臓をやられるとアイは死んでしまうはずなのだが、この辺りの演出がちょっと分かりにくかった気がするので、よく理解できなかった視聴者が結構いるような気がする。
表アイと裏アイの関係における最大の重要シーンだと思うので、誤解されたままだと非常に勿体無い。一応解説しておこう。俺がおそらく正しいと考えている時系列だと、次のような順番で物事が起きている。
- ブーメラン攻撃で傷だらけになった表アイが倒れているところに、キララが「キラキラ、欲しいの」と迫る
- 裏アイはその表アイの姿を見て「私だって」と思い、表アイの髪を撫でて「がんばれ、私」と言う
- 裏アイはキララの方に近づく。「殺さないよ、殺さない」とキララ。
- キララは裏アイの左目をブーメランで抉る
- 抉った目を見て「キラキラ」と満足?
- 表アイが目覚める。つい左目を抑える。「もう一人の私… 私を守って…」
- 左目から血を流し、一人で倒れている裏アイ
- 表アイと裏アイが同時に「ありがとう」と言う。裏アイ、消える。
1 23 45 67 8出典:「ワンダーエッグ・プライオリティ」第12回「負けざる戦士」
これが実際の放送では、3→4→5→6→1→2→7→8の順番になっているので、最初見た時は結構分かりにくかったと思う。実際は、表アイというもう一人の自分の強さを見た裏アイが、その影響で表アイのピンチを助けて消えていくという、分かりやすいストーリーなのだ。
もっとも、3.と4.のシーンであえてアングル的にヘアピンを見せていないので、故意にここでミスリードしている可能性もある。実際、もう一つの可能性も考えてしまった。つまり死んだのは表アイであり、表アイが死んだことで、パラレルワールドの裏アイが実際の世界にやってきたという可能性だ。
まあこの辺りはどちらでもいいのかもしれない。
そもそも、仮に上の時系列が正しいとしても、起きたアイがハッと左目を抑える仕草の説明が難しいのだ。同じ人物である表アイと裏アイは、感覚も混じり合って夢の世界に存在していた、ということなのかもしれないし、アイが空の境界を打ち破った時に、2人のアイの境界が曖昧になったのかもしれない。
もう1人の小糸
先ほども触れたが、小糸との出会いがなければアイは死んでいた。だがその反対に、復活した小糸にはアイとの関わりの過去はなかった。
出典:「ワンダーエッグ・プライオリティ」特別編「私のプライオリティ」
この世界では小糸はおそらく同級生からいじめられておらず、むしろ普通にアイを排除するコミュニティの方に溶け込んでいる。
先ほど書いたように、小糸にとって浄化される対象のトラウマがなんであったのかはわからないが、それを浄化されたことで、アイへの関心もなくなってしまったのだろうか。トラウマが浄化されたところで、人間がそれによって善人になったりするわけではないのだ。
小糸が何のトラウマを解消したのか、については、小糸が友人にアイのことを「沢木先生の次の展覧会のモデル」と語ったあたりにヒントがあるのではないかと思っている。すでに個展は終わっているはずだ。一瞬、時系列がおかしくなった(時間が巻き戻った)のではないかと思ったが、多分違う。
つまり小糸は、何らかのトラウマを解消したことで、沢木先生に関する正確な情報を更新し続けるような興味を失ったのではないか。つまり復活後の小糸は、すでに沢木先生の個展が終了していることを知らないのではないか、と考えている(あるいは単純に、死んでいた間の記憶がなくなっていて、その辺りの辻褄合わせがうまくいっていないだけ、という可能性もあるかもしれないが)。
そして、おそらくかつてアイに近づいたのも沢木先生関係の理由であり、その前提が失われたので、アイにも関心を失ったのではないか、と考えると辻褄が合うのではないだろうか。
ともあれ、特別編を見て確実にわかることは、第10話後半の沢木先生の個展訪問以降、アイはあの小糸の死の真相を知っていたということだ。
出典:「ワンダーエッグ・プライオリティ」第10回「告白」
第11回では小糸に関してはほとんど触れられなかったが、第12回ではアイが小糸に関して何度も言及している。これらは全て、沢木先生から小糸の死の真相を聞いている上での言葉だと考えていい。
- 裏アイと会った時
- 表アイ「友達の小糸ちゃんを救うために戦っているの」
- プールサイドでの裏アイとの会話
- 裏アイ「いいな、大切なお友達なんだ?」
表アイ「お友達…何も知らないんだ、小糸ちゃんのこと」 - 青色絵の具の攻撃を受けてプールから引き上げてくれた「小糸」との会話
- 表アイ「小糸ちゃん。後悔してるよね?」
小糸「え?」
表アイ「後悔してるよね、アイ! 声に出して、大きな声で」
裏アイ「後悔してる。ママに会いたいよ!」 - ねいるとの回想シーン
- アイ「私、小糸ちゃんから真実が聞きたいって思ってたけど、違ってたかも」
ねいる「違ってた?」
アイ「うん、多分、感謝の気持ちだと思う」
ねいる「嘘の友達でも?」
アイ「私、その時救われたんだよ、ひとりぼっちじゃなくなって」
出典:「ワンダーエッグ・プライオリティ」第12回「負けざる戦士」
アイは、小糸が「嘘の友達」であることを知っている。自分が小糸に関して何も知らないということも知っている。もしかすると、小糸は何らかの下心を持ってアイに近づいたのかもしれない、ということも薄々勘づいている。
でも、そのことによってアイは一人ぼっちではなくなり、さらに第12回で明らかになったように、そこがアイの生死の分岐点になっている。
だからアイは、小糸のことを色々知っても、それでも小糸に感謝しており、小糸を救うために戦い、そして小糸はおそらく死んで後悔しているものと考え続けているのだ。そしてその気持ちをねいるに伝えている。
一方リカは、復活したちえみが元のちえみと同じ人物であるという事実を認めることを拒否している。水辺で、つまり彼岸を望む此岸の端で、リカが「死にたい」というのはフリルの「死の誘惑」ではなく、死ねば「あの」ちえみや万年と同じ場所に行けると思っているからだ。今の世界のちえみを、リカはちえみとして認めていない。
出典:「ワンダーエッグ・プライオリティ」特別編「私のプライオリティ」
それに対して、アイは小糸に対してそのような拒絶をしていない。アイにとってはおそらく小糸が実際にはどのような人物であったかは特に気にならないのだ。沢木先生からことの真相を聞いた後も、それでも心から小糸を助けたくて戦い続けていたのだ。
だから復活後の小糸があのような感じでも、おそらく少し残念だとは思っているかも知れないが、アイは何も後悔していないだろうし、不満に思ってもいないだろう。
もう1人のねいる
ねいるとアイル。本当にAIだったのはどちらなのだろう。そんなことを考えてしまう。
ねいるこそがもともといた人間で、それに似せたAIであるアイルを寿が作った。アイルは人間であるねいるに嫉妬し、刺し殺そうとして失敗、その後橋から身を投げる。アイルに与えた傷の深さを想い、ねいるはアイルを救い出したいため、エッグ世界で戦い続けていた。
出典:「ワンダーエッグ・プライオリティ」特別編「私のプライオリティ」
こっちの方がストーリーとしてはるかに自然なのだ。
大体、ねいるも普通に病院に入院してたじゃないか。いくら何でもそこまで区別できないロボットって、設定的に無理がないか?
と思いながら、でも回復能力や運動能力が異様に高かったりするのはどうなのか。もしかして病院もねいるの会社が手を回している病院だったりするのか、とか。
もう少し妄想をたくましくすると、ねいるの魂は、寿が他のパラレルワールドから持ってきた別のアイルではないのか。同じ人間が存在できないという制約を回避するために、機械の依代を作ったのではないか、そんなことを思わないでもない(むしろクローンを作った、という方が早そうだが)。
…今回の記事のポリシーに反して妄想が捗りすぎた。軌道修正しよう。
ともあれ、アイの前から姿を消す前のねいるの行動をまとめると次のようになる。
- ミッションをクリア、アイルが復活
- アイル「私を戻すってことは、あなたはここに残るの?」「そう。でも残念だけど、あなたの居場所はあっちにはないよ。アディオス」
- キララ、ドット、ハイフンの3人が登場、彼女たちから守るためにピンキーをしまう
- ねいる「私をバカ呼ばわりしていいのは親友だけ。私があなたたちの度肝を、抜いてあげる」
- フリル登場
- フリル「私たち、お友達になれると思うの」「あなたは私と同じだから。あなたが本当に望んでいることがわかる」「あなたのお友達じゃわからないこと。私と友達になれば、なれるよ。人間に」
- ねいる、何か口を動かしてフェードアウト
- 目覚めて、両足のスリッパで一人芝居。「きっと、妄想してたことがあるよね、でも、残念だけどそれは絶対叶わない。あなたの場所は、これで、なくなったんだから」
- (おそらく)アイを呼び出す
- アイの家の前にアダムを置いてくる
- アイと会うが、これが少なくとも本編中アイとの最後の別れとなる(最初に出会った時をなぞるようにバスで去っていく)
- アイ、アダムに気がつく
- ねいる、メッセージを送信
- 以後、音信不通となる
出典:「ワンダーエッグ・プライオリティ」特別編「私のプライオリティ」
物理実体を裏アカに焼かれたフリルは「こちらの世界」の住人なのだろう。ともあれ、まとめるとこのようになるだろう。
- アイルは復活するが、同じ世界にねいるの存在を許す気はない(もともと刺したくらいだし)
- フリルは、自分の友達になれば人間にしてやる、と提案している(ねいるが何と返答したのかは描かれていない)
- ねいるは、アイとの最初の記憶をなぞるようにしてアイとの別れを演出した
そもそもフリルの提案の「人間にしてやる」というのはどういう意味だろうか。フリル自身が人間になれていないのに、なぜ他者を人間にするということができるのか。
あるいは、エッグ世界ではフリルも「人間」と同じものになれている、という意味なのだろうか。それとも彫像の復活の儀式にフリルが関わっているだけではなく、その復活を実現しているのがフリルであり、それゆえにねいるを最終的に人間として復活させることができる、という意味だろうか。考えてみれば、そもそもアカと裏アカだって、別の世界の住人となるために肉体を捨てているのではないか。
ともあれ、ねいるは元の世界に戻った。大切な思い出(アダム)を大切な友人に委ねた。そして最後の別れを演出し、音信不通になった。フリルの提案にどう答えたのか、それはわからない。
出典:「ワンダーエッグ・プライオリティ」特別編「私のプライオリティ」
ねいるのこの後の運命に関しては、やはり余計な情報に惑わされずに、表現された内容を素直に解釈するのが良いように思う。つまり、アイにかけた最後の電話の後、ねいるは死んでいた、のだと思う。
最後の電話は、結局のところアイが出たとしても大したことは話せなかっただろうし、話したところで結果が変わったわけではないと思う。そして、電話に出たとしても出なかったとしても、いずれにせよアイの心には容易に消えない傷を残したはずだ。
そしてアイが母親に慰められていたのは、おそらくねいるが死んだことを知った直後、と解釈するのが最も自然だろう。
出典:「ワンダーエッグ・プライオリティ」特別編「私のプライオリティ」
ねいるの死が、フリルの提案にのっとったものなのか、それはわからないが、仮にエッグ世界に住むことにしたフリルが自分を人間として認識しているということであれば、それはリアルな世界でのボディの消失を伴うものだろう。また、フリルが彫像復活のシステムに関わっており、それで人間としてねいるを復活させることができるというのであれば、やはりリアルな世界でのねいるのボディは邪魔なものとなるのだろうし、それゆえにねいるは一旦死ぬ必要があるのだろう。
だがいずれにせよ、もし本当にそうであれば、ねいるの死はフリルの言葉に従った「自殺」に他ならない。
おわりに:新しい世界、アイの復活、そしてねいるは?
季節は巡り、おそらくは半年以上が経過して5月末になっている。アイは日記を、くるみの置き土産のあのボールペンで書いている。
出典:「ワンダーエッグ・プライオリティ」特別編「私のプライオリティ」
沢木先生も学校を辞め、小糸は小糸で別の人生を歩み始めたようだし、アイにはあの学校にこだわる理由はもう何もなく、他の学校に編入している。
日記はこう続く。
ねいるは、人間になれたのかな? あの日、電話に出れなくてごめん。
あれからしばらくは、すごく忙しくて、みんなとは自然消滅しちゃった。
でも、あの時のことはずっと覚えてる。
あんなにドキドキした季節を、忘れるわけなんてない。
あんな気持ちに、またなれたらいいな。
「ねいるは、人間になれたのかな?」という問いは、先ほどのねいるの死に関する仮説が正しく、またアイがそれを理解していたと仮定すれば、全く自然に理解することのできる文章だ。それでもアイは、ねいるを助けられなかった事を悔やみ、心に深い傷を残している。その上で「あんな気持ちに、またなれたらいいな」と考えているわけだ。
ならば、やることは一つだ。
ねいると最後に別れたバス停そばの、ガチャのある文房具屋さんの前を通りかかり、今度はかつてねいるが立っていた場所に立つアイ。その時はアイが向こうからやってきたが、今はねいるが向こうからやってくることはない。
出典:「ワンダーエッグ・プライオリティ」特別編「私のプライオリティ」
アイは走り始める。第1回でくるみを助けようと校舎屋上から助走をつけて走り出したのと同じように。
出典:「ワンダーエッグ・プライオリティ」特別編「私のプライオリティ」
リカが入れなくなっていたあの地下庭園は、アイの再訪を受け入れる。
アイ「ねいるに会いたいの」
アカ「エッグを買うのかい? それは願ったり叶ったりだが、ねいるに会えなかったらどうするんだい?」
裏アカ「向こうは会いたくないかもよ」
アイ「何度だって、また挑戦する。ねいるは私に会いたいって、絶対思ってる」
出典:「ワンダーエッグ・プライオリティ」特別編「私のプライオリティ」
アイの新しい望みはねいるに会いたいということ。そしてアカはそのためにはエッグを買う事が必要、と認めている。やはり今ねいるがいるのは、この世界ではなく、向こう側の世界なのだ。そして、アイがエッグ戦士として復活することは、未だアカと裏アカにとって望ましい「願ったり叶ったり」なことであるという事がわかる。
アイの新しい望みに応じたねいるの彫像と新しいエッグ世界が存在しているのか、あるいはねいるはフリルのように別の形でエッグ世界と関わっていくのか、アイもエロスの戦士として別の形でエッグ世界と関わっていくのか、その場合は彫像として誰が選ばれるのか(ならばそれはひまりではないか、とか妄想してしまう)…、そういう細かいことは全くわからないけれども、きっとアイは願いを叶える事ができるのだと思う。
裏アカ「大した自信だな、一度逃げたくせに」
アカ「裏アカ」
アイ「大戸アイ、復活! いひひ」
出典:「ワンダーエッグ・プライオリティ」特別編「私のプライオリティ」
うん。
続きが見たい!
いつの間にか、しれっと同じ気持ちで地下庭園に戻ってこれたリカや桃恵と偶然鉢合わせるアイが見たい!
そしてなんやかんやあって、結局ねいると一緒に4人でガールズトークを始めるところが見たい!!
そうなんだよ。まあ色々と諸々の事情で難しいかもしれないけれども、やっぱり続きが見たいぞ。あと3, 4話分、もしくは劇場版くらいの尺で今度こそ完結出来るだろうこれは。頼むよ日テレ、頼むよ野島伸司!
ということで、おしまい!
ねいるとアイがカバーイラストの円盤第3巻も、CloverWorks様謹製の総作監修正集も実に楽しみだが、発売が8月と9月か。まあ特別編も3ヶ月待ったけど、まあ意外にすぐだった感もあるしな。円盤画質での特別編も楽しみだし、修正集にも多分、特別編の内容入るよね? 楽しみにしてる。
第12回までの聖地巡礼ブログはこちらから。
(2021年7月20日追記)特別編の聖地巡礼ブログも公開した。