xckb的雑記帳

身の回りにあったことを雑多に語ります。

「ワンダーエッグ・プライオリティ」はいいぞ!:野島伸司の魔法少女は変身せずに卵を割る

さて、2021年冬アニメもそろそろ序盤が終了する頃、皆様におかれましては何が一推しだろうか。俺は全く予想だにもしていなかったが、この「ワンダーエッグ・プライオリティ」という作品が無茶苦茶気に入っている。原作なしのオリジナル作品だ。もともと見るつもりがなかったのだけれども、録画予約を入れてるときにふと気づいて気の迷いで入れたアニメだが、昨年の俺的ベストだったID: INVADEDと同じくらい現時点で盛り上がっているぞ。とりあえずPVを載せておこうか。

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しかし、なんか遅い時間にやっている上に一見キャッチーではないこともあってか、今ひとつ見ている人が少ないようで世間的にはそれほど盛り上がっていない気配がある。

ということで、今回は俺の現在一推し作品であるこの「ワンダーエッグ・プライオリティ」を、あまり派手なネタバレなしに紹介してみようと思う。

では「ワンダーエッグ・プライオリティ」のどこがお前は気に入ったのだ、と言われるとまあ、総合的にすごいわけだが、まあ自分のツボを個別に要素として挙げてみるとこんな感じだろうか。

  • 野島伸司によるストーリーの熱量で語られる「魔法少女」の物語
  • 劇場版アニメをしのぐの作画火力の強さと素晴らしいレイアウト
  • 語りすぎない演出の細かさ
  • 端役まで含めた強力すぎるCV陣
  • 作品に完璧にマッチした素敵な音楽

というわけで、これらの点について魅力を紹介していこう。

まあ、まだ全12話中第5話までしか放送していないので、この後失速する可能性ももちろんあるのだが、ここまでの流れから考えても、今のところ俺はここからさらに盛り上がっていくと信じているぞ。まあそのあたりのドキドキもオリジナルアニメの良いところだな。

wonder-egg-priority.com

野島伸司によるストーリーの熱量で語られる「魔法少女」の物語

原案・脚本は野島伸司。あの「高校教師」の野島伸司だよ。とはいえ実写畑の人がアニメにやってくる場合って、一般的にはあまり良い印象がないのだけれども、一方で中にはPSYCHO-PASSの総監督の本広克行(「踊る大捜査線」シリーズなど)の大成功例もあったりするわけだ。そして第5話まで見た俺は、これは「大当たり」の方だと感じている。ストーリーの熱量がとにかくすごい!

PVだけ見てもよくわからないと思うのだが、このアニメのジャンルは何かと言われると、やはり「魔法少女まどか☆マギカ」の系譜にあるダークファンタジー魔法少女もの、と言って良いのだと思う。いや、変身しないし魔法も使うわけではないのだが、やはりこれはあの系譜の魔法少女モノ、だと思うのだ。

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出典:「ワンダーエッグ・プライオリティ」第2話

まあ、今シーズンは「まどか」からちょうど10年。この10年間、まどかフォロワー的なアニメは結構あったりするのだけれども、ここまでガッツリと嵌ったものは初めてかもしれない。そしてそこに野島伸司のストーリーなのだよ。

今まで5話見てきた感じ、実際のところ野島伸司とアニメという表現形態は、実は結構相性が良い気がする。公式サイトで野島伸司は次のように語っている。

いつからかドラマにも「コンプライアンス」が侵食して、僕のような物書きは翼をもがれた感覚で、より自由度の高い場所を模索していました。
出典:ワンダーエッグ・プライオリティ公式サイト https://wonder-egg-priority.com/staffcast/

ここで勘違いされては困るのだが、では「ワンダーエッグ・プライオリティ」がコンプライアンス的なものを無視して好き放題やっている…という意味ではないのだ。いやたしかに野島伸司が攻めてはいるけれども、同時に昨今のいろいろな点を気にしながら作っている、ということは第5話までちゃんと見ればわかると思う。

そうではなくて、特にファンタジー的なものを描くアニメというのは、実写のドラマに出てきたら絶対におかしくて見ていられないが、ストーリーを表現するにはたしかに効果的なものを、平然と出すことができるのだ。「ワンダーエッグ・プライオリティ」では、「卵」を割って怪物と戦う少女という、実写で表現したら噴飯物でしかあり得ないものを、アニメで、しかも夢の中という設定で強引に表現している。

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出典:「ワンダーエッグ・プライオリティ」第4話

また、主人公たちに卵を与え、飴と鞭で踊らせる邪悪な存在と現在のところ思われる「アカ」と「裏アカ」というキャラクターは、「マネキン」として表現される。純粋な悪として嘘をつく、誤魔化す、下衆な発言もする。これが実写で通常の人間として表現されたら、生々しくて意図が伝わりにくいと思うし、仮にうまく表現したらそれはそれで毒が強すぎるのではないか。

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出典:「ワンダーエッグ・プライオリティ」第3話

つまりファンタジー的な世界や夢という概念を、アニメという抽象度の高い表現で描いていくことで、純粋すぎて現実的ではないものを自然に表現できたり、生々しく描くと問題のある悪を、純粋に悪として描くことができるのではないか、と思うのだ。アニメという形で新たに表現される野島伸司の世界は、後半でどのような展開を見せるのか、非常に楽しみである。

劇場版アニメをしのぐの作画火力の強さと素晴らしいレイアウト

このアニメ、とにかく作画火力が強い。TVアニメでここまで安定して強力な作画を見せてくれているのって、なかなか無いんじゃないかな。最初だけの勢いと思いきや、第5話に至っても息が切れるどころかさらにクオリティを上げている。へたな劇場版アニメよりずっと作画パワーが強いと思うぞ。

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出典:「ワンダーエッグ・プライオリティ」第4話

アクションシーンの迫力がすごいことはもちろんなのだが、たとえばこんな感じの静謐なシーンでも、キャラクターだけではなくこのフォトリアリスティックにかなり近目の背景と、美しいレイアウトがとても印象的だ。どのシーンを撮っても一枚絵として見られることを意識しているような、そういう一貫したセンスを感じる。

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出典:「ワンダーエッグ・プライオリティ」第1話

上のシーン、とにかく背景の光や反射の表現がすごいんだが、これにさらにキャラクターが入ってもそのクオリティが保たれるのだ。たとえばこの、体育館床の表現とか物凄くないか? あらためて言うが、これTVアニメだぞ。何だよこの凄まじい気合の入り方。

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出典:「ワンダーエッグ・プライオリティ」第2話

そしてこのクオリティで、綿密なロケハンをしたと思われる、実際の千葉ニュータウン界隈の風景を描くことで、現実の世界と連続しているような「ワンダーエッグ・プライオリティ」の不思議な世界が完成された絵として表現されるのだ。ついでに聖地巡礼とかも捗りそうで実に良い。

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出典:「ワンダーエッグ・プライオリティ」第1話


(2020年2月22日追記)ということで、聖地巡礼に千葉ニュータウンまで行って来ました。こちらに、OP/ED、第1回〜第3回、第4回〜第6回に分けて、聖地巡礼記事を書いています。
xckb.hatenablog.com


そういえば先ほどの体育館のシーンもこの住宅街を走るシーンもそうだが、明らかに表現が望遠レンズを意識しているよな。一方でこのシーンなどはCGIをうまく用いた広角レンズのアングルで、キャラクターのアクションに合わせて激しくかつ自然に動く背景表現を、CGIっぽさをあまり感じさせないように実現している。こういう焦点距離を意識した表現はとても実写的だったりするが、実に見事だ。

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出典:「ワンダーエッグ・プライオリティ」第5話

語りすぎない演出の細かさ

これは野島伸司の意思なのか、あるいは監督やその周囲を固めるスタッフたちが凄いのかよくわからないのだが、キャラクターが演技している感というか、まあそのあたりは当たり前といえば当たり前だし実際そうあるべきなのだが、それでもこの作品では、言葉で語りすぎずに表現している感じがとても印象的で、心地よい。

特に、第5話のラストあたりはその良さが存分に生かされた感がある。今期のアニメで今のところどの話数が一番印象に残ったかと聞かれれば、俺は迷いなくこの「ワンダーエッグ・プライオリティ」第5話を挙げるだろうな。

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出典:「ワンダーエッグ・プライオリティ」第5話

未見の人はとにかくまあ見てくれ。

とはいえ、定額配信に含まれている主要な配信サービスって今はHuluとdアニメストアだけっぽいというのが結構残念である(なんと「dアニメストア for プライムビデオ」にも入っていないのだ)。このあたりは日テレ系アニメという点からくる宿命だろうか。日テレさん、ぜひここはプライムビデオとNetflixにも配信お願いしたいところ。何卒。(もしかするとバンダイチャンネルなどには定額対象で入っているのかな?)


(2021年2月14日追記)どうやらバンダイチャンネルとU-NEXTでも定額配信に入っているらしい。でもやはりプライムビデオかNetflixに入れてほしいなぁ(Oculus Questのプライムビデオ劇場の大画面で見たいし)。

端役まで含めた強力すぎるCV陣

主人公とその仲間たち4人のCV(相川奏多、楠木ともり、斉藤朱夏、矢野妃菜喜)も実に良いんだけど、なにげにアカと裏アカの内田夕夜、 高橋広樹も素晴らしいのだ。

そして、毎回卵の中から現れたり過去回想で出てきたりするゲストキャラクターたちも、何気に豪華だったりするのだ。特に本渡楓なんて本当に一言二言しか喋っていなかったりするのだが、大事な役だからなぁ。

  • 西城くるみ(安済知佳)第1話
  • 鈴原南(佐藤聡美)第2話
  • 田辺美咲(武田華)第2話
  • みこ(井上麻里奈)第3,4話
  • まこ(田辺留依)第3,4話
  • ハルカ(本渡楓)4話
  • 美和(花守ゆみり)第4話
  • 瑞希(古賀葵)第4話
  • 綾香(千本木彩花)第5話
  • 葵(Lynn)第5話

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出典:「ワンダーエッグ・プライオリティ」第5話

ということで端役まで気を抜けないワンダーエッグ・プライオリティ、これからどんなゲストが出てくるのだろう。楽しみだ。

作品に完璧にマッチした素敵な音楽

ちなみに劇伴はDÉ DÉ MOUSEとミト(クラムボン)。DÉ DÉ MOUSEはアニメの劇伴は初めてなのかな? クラムボンのミトはよりもいのOPが印象に残ってるな。ともあれ、割と控えめな劇伴の使い方をするこのアニメだけれども、実にドラマに合っているんだよね。

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出典:「ワンダーエッグ・プライオリティ」第2話

サントラは円盤のおまけなのね。先週まではAmazonの割引で特典なしのやつを買おうと思っていたけれども、第5話を見てANIPLEX+の特典台本付きを買う気が沸々としてきている今日この頃。

あと、OPの「巣立ちの歌」。主演声優たちのユニット「アネモネリア」が歌う卒業式ソングだけれども、これがなんか、イントロから入る部分が「高校教師」OPの「僕たちの失敗」を想起させるようなアレンジになっていて、実に野島伸司ドラマ的でよい。「いざさらば さらば先生 いざさらば さらば友よ」の歌詞が全然違う意味に聞こえて凄い。

巣立ちの歌

巣立ちの歌

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同じくアネモネリアによるエンディングの「Life is サイダー」も良いぞ。

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ちなみに「アネモネリア」は「アネモネ」から来ているんだろうけれども、「アネモネ」の名前はギリシャ語の「アネモス(風)」から来ていて、ラテン語の「アニマ(息)」から来ている「アニメーション」と大元の語源は同じはず。なんか意識しているのかな。

Life is サイダー

Life is サイダー

  • Sony Music Labels Inc.
Amazon


(2020年2月12日追記)今週ずっと相川奏多さん出演でワンエグの番宣やってるラジオ「坂上みきのエンタメGOGO!」を聴いていたら、アネモネリアの語源は4人の役名(アイ、ねいる、リカ、桃恵)+アネモネで作った造語だったということで。なるほど。で、昨日のラジオもついでに聴いたら、相川奏多さんが好きなアニメとして「七つの大罪」と並んで「オカルティック・ナイン」を挙げていてびっくり。今16歳らしいから、オカンを本放送していた頃って小学生じゃないか(そんな人気出なかったから再放送とかもしていないしね)。凄いな。俺も好きだったぞ。それにしてもトークうまいな。
xckb.hatenablog.com

ということで

「ワンダーエッグ・プライオリティ」はいいぞ! 食わず嫌いせずにみんなぜひ見てくれ。頼んだぞ。

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出典:「ワンダーエッグ・プライオリティ」OP

ちなみに俺はねいる派である。

(2021年7月15日追記)
特別編まで全部見て、あらためてまとめてみました。
xckb.hatenablog.com