さて、俺の今イチオシ漫画「新しいきみへ」の聖地巡礼記事、パート2をいってみよう。次は第2巻だ。前の記事(第1巻分)はこちら。おそらくしばらくはほとんどこのサイトのPVには貢献しないだろうけれども、いつか需要が発生すると信じているぜ。
物語は一転、それまでの横浜での大爆発に続くパニックが謎のウイルスによるパンデミックと結びつく混沌の中、悟と相生亜希は新宿に向かう。そして悟の過去の記憶は何を意味するのか…。
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今回の目次:
なお、比較用に漫画からのコマを引用するが、比較することが可能な限りの小さなサイズで、なおかつセリフやモノローグは可能な限り消しておくこととする。
第5話 星の回
橋の欄干を渡らせられる悟の記憶(小田原城址公園・学橋)
高校時代の回想シーンで橋の欄干を渡らせられる悟と男の場面の舞台は、小田原城址公園の学橋である。
小田原城址公園の学橋のところには、本当に鯉がこんな感じでバクバクしている。なかなかにリアル。
作中のこの場面の時代設定は、地下鉄サリン事件や阪神大震災への言及などから想像して、おそらく1995年かせいぜい1996年ごろと思われる。
ちなみにこれを撮影したのは成人の日だったので、すぐそばで成人式をやっていたため、記念写真を撮る新成人たちが写り込んでいるのは申し訳ない。背景の建物は二の丸隅櫓。
出典:三都慎司「新しいきみへ」第2巻・第5話
手すりのところは丸いので落ちやすい。非常に危険なので真似しないように。真似したい人もいないと思うけど。
出典:三都慎司「新しいきみへ」第2巻・第5話
このコマ、学橋の奥には現在は存在しない建物が描かれている。
これはかつて小田原城内に存在した、小田原市立城内小学校の校舎である。
出典:三都慎司「新しいきみへ」第2巻・第5話
なんとYoutubeに1990年ごろの、城内小学校を撮影したホームビデオ映像が上がっている。素晴らしい。
このビデオの品質は非常に低いので、焼け石に水ではあるがTopaz Video AIでアップスケール、手ぶれ補正、フレーム補間を行ってそこから静止画を切り出してみた。ちょうど学橋の風景がビデオの最後にあるが、作中の表現がリアルであることがわかる。
(Topaz Video AIで補間、切り出し)
出典:小田原市立城内小学校校舎 - YouTube
城内小学校のこの校舎が利用されたのは1996年までのようだ。なので1995年(もしくは1996年)の時代設定とは合致している。
第1巻のところで紹介したこちらの古い画像と比較してみると…
(Topaz Photo AIで修正済み)
出典:市立城内小学校木造校舎:小田原デジタルアーカイブ「小田原写真館」 | 小田原市
古い画像にはなかった筋交のようなクロス構造が入っているのは、おそらく耐震補強ではないかと思われる。
(Topaz Video AIで補間、切り出し)
出典:小田原市立城内小学校校舎 - YouTube
また、古い写真では構造がよくわからなかった校門のところの扉のようなもの、これを見ると普通の校門にもよくある、横滑り型の扉であることがわかる。
(Topaz Video AIで補間、切り出し)
出典:小田原市立城内小学校校舎 - YouTube
なお、この校舎が使われなくなる直前に城内小学校は小田原市立本町小学校と統合され、その後(残っている)堀の外に移転して現在では小田原市立三の丸小学校になっている。よく見ると、第2巻のSpecial Thanksにこの三の丸小学校が入っている。
城内小学校の建物はかつて講堂だったらしい1棟だけが現在残っており、小田原城歴史見聞館という名前で忍者の体験館(?)的に使われている。
入り口の雰囲気からかつての正面口の雰囲気を想像することはできるだろう。
物語の始まりの場所(小田原駅東口・旧駅舎前)
さらに回想が続き、物語の始まりの場所にやってくる。場所は小田原駅旧駅舎の東口である。ちなみに現在の小田原駅東口はこのような風景だ。この駅舎が使われ始めたのは2003年であり、その後旧駅舎は解体されたらしい。
流石に古い写真は撮りようがないので、探し出して検証してみたい。バスロータリーのベンチに座る悟と男。背景のバスは箱根登山鉄道の古いタイプの路線バス。多分これ。
(Topaz Photo AIで補間)
出典:箱根登山鉄道 B710&B730 : バス三昧
出典:三都慎司「新しいきみへ」第2巻・第5話
小田原駅の旧駅舎は東口はこちら(1989年の写真)。ちなみに新幹線の施設は駅の西側に存在する。
(Topaz Photo AIで補間)
出典:東海道線・小田原駅−さいきの駅舎訪問
出典:三都慎司「新しいきみへ」第2巻・第5話
ベンチから例のマルイが見えているが、このマルイ小田原店の写真も驚くほどネットに転がっていない。やっとこちらを発見した(1997年の写真)。
(Topaz Photo AIで補正)
出典:さむ on Twitter: "ちなみに自分の中での箱根登山バスのカラーリングといえばこちら。今から25年前、1997年の小田原駅前にて撮影。当時はまだ橋上駅舎になる前で、改札はホームの下にありました。2枚目には今はなき丸井の姿も。 https://t.co/1D4o8WU714" / Twitter
出典:三都慎司「新しいきみへ」第2巻・第5話
横浜で発生する大爆発(大黒ふ頭西緑地、横浜ノース・ドック)
時間は現代(2014年)に戻り、横浜で発生する大爆発(理由は不明)。その前に出てくる横浜ベイブリッジの夜景は大黒ふ頭西緑地からの景色。
実際の風景。ベイブリッジはほぼ完璧な再現度だが、みなとみらいの風景はここからはかなり遠くに実際は見えるので、シーバスあたりから見たような距離感に置き換えられている。
出典:三都慎司「新しいきみへ」第2巻・第5話
LNGタンカーが突っ込んで大爆発を起こしたのは横浜ノース・ドック(瑞穂埠頭)なのだが、ここは実は米軍基地であり一般人立入禁止区域である。おそらく意図して場所を設定したものと思われるが、こういう設定はなかなか良い。とりあえずランドマークタワーからの景色はこんな感じ。
出典:三都慎司「新しいきみへ」第2巻・第5話
流星の夜の記憶(旧城内小学校校庭)
再び回想シーン。しし座流星群なので11月17日である。現在は、かつての城内小学校の校舎入り口左右に立っていた杉の木が残っている。
ちなみに、ここに出てくるベンチだが、これも2023年2月の小田原城の工事で失われてしまった。
出典:三都慎司「新しいきみへ」第2巻・第5話
かつて存在していたベンチ。実際はこの2倍の長さがあったようだが、半分壊れてしまっており、残骸のコンクリート部分がこの写真の奥のところに落ちている。
ちなみにこのベンチが昔あったかどうかだが、先のビデオの中にこのあたりの映像がある。チェックしてみると、このあたりには雲梯や鉄棒などが存在していたようだが、ベンチはなかったように見える。まあそもそも、小学校の校庭にはあまりベンチはない気がする。
(Topaz Video AIで補間、切り出し)
出典:小田原市立城内小学校校舎 - YouTube
第6話 躯の回
崩壊する横浜を逃げる二人(ランドマークタワーから新港サークルウォーク)
そして再び舞台は2014年に。ヨコハマグランドインターコンチネンタルを思わせるようなホテルから出た悟と相生亜希は、みなとみらいの街を学校の方に逃げる。実際に行くとわかるが、この辺りは、多少舞台が前後する部分がある(進んだと思ったらまた戻っていたりする)。
まずはコスモワールドの観覧車。しまった、せっかくならあと7分後に撮影するべきだったな(作中での時刻は21時13分、この写真は21時6分)。
出典:三都慎司「新しいきみへ」第2巻・第6話
炎上するクイーンズタワーの場面。ただしなぜ炎上しているのかは未だわからない。
出典:三都慎司「新しいきみへ」第2巻・第6話
少し進んで新港サークルウォークの歩道橋へ。ただしあの交通事故のシーンは、具体的なモデルはなさそうだ。
このシーンはサークルウォークの上(北側)なのだが…。
出典:三都慎司「新しいきみへ」第2巻・第6話
こちらは明らかにサークルウォークの下(ワールドポーターズのところの角)にいるな。
出典:三都慎司「新しいきみへ」第2巻・第6話
そしてワールドポーターズのところから赤レンガ倉庫を望むアングル。
出典:三都慎司「新しいきみへ」第2巻・第6話
こちらの見開きシーンでは、少し戻って国際橋からの景色となっている。
まあ聖地巡礼関係なく、夜景が美しい場所だな。
アニヴェルセルのあたりからも火の手が上がっているっぽいが、一体何が起こっているのだろう?
出典:三都慎司「新しいきみへ」第2巻・第6話
第7話 夢の回
さらに逃げる二人(横浜税関前、横浜港大さん橋)
学校の場所の設定はどうやら大さん橋付近のようだ。ということで、インターコンチネンタルから学校に行くに横浜税関の前を通って行くのは自然だな。
どうやらパニックで車道に人が溢れ出して走っているのか、車道からのアングルのためiPhoneを車にマウントして撮ってみたが、実際はもっと上を向けて撮ったほうが良かったか。気が向いたら撮りなおすかも。
だんだん横浜税関が近くなってくる。
横浜税関の横を通り過ぎる。
出典:三都慎司「新しいきみへ」第2巻・第7話
第7話の扉絵は、横浜港大さん橋から見た燃えるみなとみらいの街。この景色が本当に燃えていたら実に恐ろしい。
出典:三都慎司「新しいきみへ」第2巻・第7話
佐久間亜希が捜査に来ている病院(横浜市立みなと赤十字病院)
亜希さん(妻の方)が捜査に来ていた病院は、新山下にある横浜市立みなと赤十字病院。
とてもそのままだ。
出典:三都慎司「新しいきみへ」第2巻・第7話
燃えるみなとみらいの街を見る佐久間亜希のシーン、実は病院のすぐそばには本当に島忠ホームズがある。
そして島忠ホームズ屋上の駐車場からみなとみらいの街を望むとこんな感じ。
以上2つを合成したものを想像すると、本当にこんな感じになりそうだな。
出典:三都慎司「新しいきみへ」第2巻・第7話
バリケード突破、東京へ(日本大通駅前、横浜ベイブリッジ)
ジムニーでバリケードを突破する悟と相生亜希。このシーンは、横浜市開港記念会館を日本大通駅あたりから狙った写真を左右反転の裏焼きにしたものだ(結構悩んだ)。
出典:三都慎司「新しいきみへ」第2巻・第7話
現在は横浜市開港記念会館が工事中で足場を組まれているため、ちょっとわかりにくいが、ストリートビューから2020年2月のイメージを持ってくるとこんな感じである(左右反転はしていない)。
右上の案内板は左右反転しておらずそのまま。やはり赤レンガ倉庫の方向に学校がある設定と考えていいのかな。
おそらく新山下から首都高に入って横浜ベイブリッジで東京方面へ進む。警察も手が足りないので新山下は塞いでなかったということかな。あるいは再度強行突破?
出典:三都慎司「新しいきみへ」第2巻・第7話
第8話 轟の回
首都高湾岸線を新宿に向かう二人(大井中央陸橋付近)
湾岸線から山手トンネルのルートで新宿に向かう悟と相生亜希。最初の「東京行きがガラガラ」の場面の舞台は大井中央陸橋(一般道)。
この「東京行きがガラガラ」というのは東京からは車が入ってきて横浜方面で止められているけど、横浜から乗ってくる車は強行突破以外ない、という認識でいいのかもね。ところで実はこの場面の舞台、大井中央陸橋の歩道から横浜方面を見た図なので、ガラガラなのは本当は横浜行きだったりする。周囲の建物なども含めて非常に再現度が高い。
出典:三都慎司「新しいきみへ」第2巻・第8話
山手トンネルに分岐するのはこの陸橋の少し北側。高速道路は再現度が高いが、背景のビルなどは実際は存在しない。
出典:三都慎司「新しいきみへ」第2巻・第8話
新宿の駐車場(NPCコインパーキング 新宿3丁目第5)
悟が適当に止めたコインパーキングは甲州街道沿いの脇道にあるNPCコインパーキング 新宿3丁目第5。山手トンネルからの動線に不自然さは全くない。
現在の料金表示はこんな感じ。15分400円は土地柄仕方がないが高いよなー。
入れたのは7番。跳ね板のないカメラ式のコインパーキングって2014年当時はまだ少なかった気がする。
(Insta360 One X2で撮影、Topaz Photo AIで補正)
出典:三都慎司「新しいきみへ」第2巻・第8話
…と思って2015年の写真をストリートビューで見てみると、アームで止めるタイプだったのね。まあそれはよしとしよう(走ってる車種も2014年当時に出てなかった車が多いし)。
とはいえ、作中でいろいろ悟にケチをつけられている料金表示の看板は、この当時のものが作中と一緒である。そして実は料金体系はそんなにわかりにくくない。このPIT-IN 100からNPC 24Hに変わった時に、アームも無くなったようだ(ストリートビューで検証すると、2018年4月から8月の間に変更されているらしい)。
(Topaz Photo AIで補正済み)
出典:https://goo.gl/maps/AffNBkMmfZQvKhBs6
「過去」の記憶1(新宿東南口広場)
相生亜希の「過去」の記憶。この日に新宿まで追いかけた過去があったのだな。
出典:三都慎司「新しいきみへ」第2巻・第8話
混乱する県警本部(神奈川県警察本部)
まさに混沌の中心に位置する神奈川県警本部。ここは燃えてないのね。
出典:三都慎司「新しいきみへ」第2巻・第8話
「過去」の記憶2(新宿東南口広場)
相生亜希の「過去」の記憶続く。数多くの死に満ちた新宿の街。
そしてそこには悟の姿はない。
出典:三都慎司「新しいきみへ」第2巻・第8話
ガスマスク氏との遭遇(新宿南口駅前)
なかなかガスマスク氏は見つからない。
出典:三都慎司「新しいきみへ」第2巻・第8話
「1位は妖怪ウォッチ…」の画面。
出典:三都慎司「新しいきみへ」第2巻・第8話
そして南口前の横断歩道に現れるガスマスク氏。
現在は背景はバスタ新宿になっているが、2014年時点ではバスタ新宿は建設中だった。
出典:三都慎司「新しいきみへ」第2巻・第8話
ストリートビューから発掘した、2014年2月の同じ場所。背景の再現度はかなり高い。劇中の日付設定は2014年4月23日と思われるので、あまり違いはないだろう。
赤信号に飛び出す悟。
出典:三都慎司「新しいきみへ」第2巻・第8話
同じくストリートビューの2014年2月の風景。まあ、工事がこちらの画像の方が若干進んでいるように見えるのはまあ愛嬌、という感じだろう。大変だなぁ。
ということで、次はこの物語のターニングポイントである第3巻の聖地巡礼に続く。舞台は新宿から中野へ、そして「過去」の小田原の記憶を経て、再び横浜へ…。
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