xckb的雑記帳

身の回りにあったことを雑多に語ります。

サクラダリセット第19〜20話:相麻菫の涙、浅井ケイの涙

今一番見るべきアニメ「サクラダリセット

さて、2017年春から始まったアニメ「サクラダリセット」が、今佳境を迎えている。特に最新の19話、20話は文句のつけようのない神回だったし、次回からもどんな展開が待ち受けているか楽しみで仕方がない。最初の1, 2話で「つまらない」とか「声に心がこもってない」とか「感情のないロボットの演劇」とか言ってさっさと切った大多数の人、残念でした。俺にとって今、最高に面白いアニメはこの「サクラダリセット」なのだ。

ちなみに、このブログでサクラダリセットを最初に紹介した時の記事はこちら。

xckb.hatenablog.com

まあ同様に1話で切った人が多数いた「けものフレンズ」などとは違って、世間的には全く盛り上がっていないけれどもな。円盤も聞くところによると初動300枚程度しか売れていないらしいし。なんとも勿体無い。もちろん俺はBox 1を買ったし残りの3巻も全部予約済みだ。

サクラダリセット」と入れると「サクラダリセット つまらない」と補完されていたtwitterの検索画面も、ついに「サクラダリセット 面白い」と表示されるようになってきたしな(生存者バイアスとか言うの禁止w)。いや実際、2クール目以降は面白さが格段にわかりやすくなってると思うよ。手のひらクルーさせている人もよく見かけるようになったし。

そういえば先日、なぜかGIGAZINEに面白いインタビュー記事が出ていたので、ぜひ読んでいただきたい。ここから引用しながら、少しストーリー全体について語ってみよう。

gigazine.net

まあ、俺の場合だと、別に淡々としたアニメは嫌いじゃないので、最初はながら視聴的にのんびりと見ていたんだけれども、まずは2話のラストで「えっ?」となってしまったな。だって第2ヒロイン的な位置にいたと思った子が、2話でいきなり死んじゃうんだよ。あの巴マミさんより1話早いよ。しかもどう見ても自殺っぽい。それで1話から、今度は集中して見直したところ、やばい、これはなんかすごいアニメなんじゃないかと。

G:「まずは4話まで見て欲しい」という話があったので、第1話から見ていたんですが、最初は「これはどういうことになるんだろう」とちょっと不安がありましたが、4話で「なるほど、これはすごい」と感じました。伏線に次ぐ伏線に、さらに伏線という感じですよね。
川:まずは見ていただかないとわからない中で、まずは4話までというのがありましたが、実際のところは1クール目でいうと10話、2クール目でいうと19話あたりからさらなる盛り上がりがやってきます。

ああ、「まずは4話」ということは、1〜3話で切っちゃった人は想定内ということだな(笑)。その割には切っちゃった人が多すぎたみたいだけど。

ということで、4話までっていうとあの河原での指が食い込んじゃう例のあたりだと思うけれども、4話の時点ではもうすでにがっつり見ていたのであらためてここがすごい、とは思わなかったな。それよりも10話のアレと、11話の短編「ある日の春埼さん」は物凄い衝撃だった。そしてさらに19話、20話は言わずもがな。色々忙しくて、1ヶ月ほど放置していたこちらのブログを頑張って復活させるきっかけとなった、まさに神回だ。

川:そうなんです、今の視聴感覚だとすごく後ろだと感じますよね。でも、まさか1話の段階で「10話と19話を待ってください」と言うわけにはいきませんから(笑) たとえば第1話で相麻菫がその時点ではわけのわからないことを延々としゃべりますが、10話を見た人は「ああ!これのことを言っていたのか」と何となく分かるようになっています。そして、19話を見るともう1回「ああ!」という発見があるんです。

ああたしかにやばいよ19話と20話は。前のエピソード"ONE HAND EDEN"での大きなミスリードの1つは騙されなかったけど、もう1つは完全に騙されていた。騙されていたことは前回の私の記事を読めば明らかなので、あとで自白するよ。

xckb.hatenablog.com

でもこんな「10話と19話を待ってください」的な構成だから最初の方で切っちゃう人が大多数だし、円盤も売れないんだよなぁ、勿体無い(あと、円盤を買う主要層にアピールする要素が少ないのも否めない)。

まあ、別に円盤なんて売れなくても私はいいんだけど見ている人が少ないのは色々残念すぎる。原作をさらにアレンジすれば前半にある程度山場を作ることもできたかもしれないけれども、その点、原作をかなり丁寧に扱ってアニメ化している点では実に模範的なので、そこを責めるのは忍びない。

ということで、みんなもっと「サクラダリセット」を見ようぜ。とりあえず20話までな! そして今でも遅くないから売れ残ってる円盤を買い占めてしまおう!(笑)

川:基本的には役者さんに対する演技指導のようなものですね。演出さんに話をして各話の対応をしてもらいつつ、総作画監督の方々に「こういう風にしたい」ということを伝えて1話2話辺りでやりとりを繰り返し、演出さんや総作監さんに分かってもらえるとフィルムがそちらの方向に行くので、そのあたりの方々に押さえてもらう、という感じです。ラッシュ時に表情がつきすぎていたら演出を一から直すこともあります。でも、思っていたより無表情だと思われたなという印象です。最初に僕が想定していたのはもっと無表情だったんです。
G:もっと!?
川:アフレコでケイ役の石川界人さんから「もうちょっと芝居をつけたい」という話が出て実際にやってもらって、少しずつ「それでいいんじゃないでしょうか」ということになりまして、僕としては表情が出ちゃっているなと思っていたんですが、「全然出てない」といわれてしまって(笑) 僕は自分が無表情なせいか、表情作りが分かっていないのかもしれません(笑)

しかしあらためて、これだけ感情が乏しそうに見えるキャラクターだけで構成されたアニメってのも珍しいよな。綾波レイには対になるアスカがいる、的なバランス感覚が全くない。少なくとも序盤は、登場人物が全員綾波レイのようなアニメだと言われても仕方がない。

しかし前回も書いたことに繋がるけれど、それだからこそ春埼美空の感情が明示的に描かれる11話が愛おしく思えるのだし、さらに相麻菫の感情が爆発する19話、そしてついに春埼美空の前で感情をむき出しにする浅井ケイが描かれる20話が、素晴らしいものとなったのだと思う。

さて、そんな19話、20話に関して少し語ってみようか。





(ここから、わりと大きくネタバレするので少しスペース置こう…)






第19話 「BOY, GIRL and ―― 4/4」

第19話は相麻菫の涙の回だ。

突然だがやっぱり俺は相麻菫が好きだ。相麻菫はとてつもなく愛が重い女に思えるが、彼女が求めるのはケイの幸せだけであり、その他はほんの少しのわがまましか求めない。一方でケイの幸せのためならば、あっさりと自分の命も捨ててしまうような、何も見返りを求めないゆえの重さがあるとも言える。そして未来視能力を持つがゆえに絶対に報われないことを知りつつ、春埼とケイが結ばれるために尽くしまくるのである。

まあ要するに、声が鹿目まどかなのに立場的に美樹さやかという…いや、まどかの聖人性が加わった完璧さやか的な女、それが相麻菫である(いや真面目な話、今期アホガールのよしことこの相麻菫を演じている悠木碧はやっぱりすげえや)。

そんな相麻菫が、チキンカレーを作りながらまずケイに語るのが浦地正宗の物語である。

浦地正宗の物語

ちなみに自分の考えを素直に言うとすれば、多分浦地正宗に同意するとしか言えないな。能力は人間という不完全な要素が持つにしては強力すぎる。

思い出すのはやはり「新世界より」だ(ああ、このアニメも商業的には成功しなかったな、残念ながら。これまた円盤持ってるけど)。あの世界では、能力を人間に対して行使して傷つけることで本人が死ぬという「愧死機構」によって能力を持った人間たちの秩序が数百年間、保たれていた。能力の存在する社会は、全ての人間が(旧世界に存在した)核兵器のボタンを持っているような社会として描かれていた。そして「サクラダリセット」では「最初の三人」という超存在によって、40年間の秩序が保たれていた。だが、どちらのストーリーもこの秩序が崩壊することで、物語が動く。

浦地自身は、能力がなければ誕生しなかったはずの人間である。そしてその父は咲良田の能力を維持することに必要な安全装置としての能力を持っていたがゆえに、加賀谷の能力を用いて「石」にされた(そういえば、春埼に対する「あなたは石に恋することはできる?」という魔女の質問が、その通りの意味にならないことを祈るしかない)。

浦「弱いことに何の価値があるの?」
父「弱さを知っていると、色々なことを許せるようになる」
浦「間違っている人を許す必要はないよ」
父「人じゃない、君のことだ。自分を許すために、人は優しくなるんだよ」

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(出典:「サクラダリセット」第19話)

それにしても加賀谷の能力は凄いな。俺が浦地なら春埼とケイをまとめて石にしちゃうぞ。

浦「能力は弱い人間の救いにはならない。反対だ。弱い人間を守るために、能力はなくしてしまうべきだ」

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(出典:「サクラダリセット」第19話)

もしケイが咲良田に能力を残すのであれば、少なくともこの浦地を何らかの形で説得するか、納得せざるを得なくするか、消すかしか方法はないだろう。果たしてどうなるんだ、と21話以降の展開に目が離せない。

相麻菫の物語

第16話で「全部終われば、教えてあげるわ」と言っていた相麻菫の告白。ケイの部屋のバスルームで、扉を挟んで「包み隠さず」「でも一線を引いて」語る相麻菫。

ケイ「僕への指示は2年前に死んだ相麻菫が出していたんだ」
菫「正解よ、ケイ」
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(出典:「サクラダリセット」第19話)

要約すると:

  • 相麻菫が一旦死んでスワンプマンとして復活したのは、自分が相麻菫ではないという認識を持ち、索引さんの前で過去の相麻菫について嘘がつけるようにするため
  • 浦地の意図に反するようなケイへの指示は、2年前に死ぬ以前の相麻菫が出していた
  • 相麻菫の目的は浦地の計画を阻止すること
  • 相麻菫が浦地に協力していたのは、リセット可能な3日間内に「事件」の全てを収めるため

やはり、第10話での復活後の相麻菫に届くようにした中野智樹のメッセージは届かなかったんだろうな。それによって、復活後の相麻菫は自分が相麻菫でないという認識を確実なものにしたのだろう。そういえば写真の中の初代魔女も、実際に存在している初代魔女とは明確に別人格として描かれていたしね(別人格ゆえに、「裏切る」こともできる)。

そして第16話でのケイが中野智樹に頼んで相麻菫に向けたメッセージも、相麻菫には未来視の形でしか届かなかったんだろうな。そう思ってみると、ケイの「神様に永遠の愛を誓ってから指輪を交換するように」と「相麻、僕はあの夏を終わらせるよ」というセリフは、現在の相麻菫ではなく、まさに2年前に死んだ相麻菫に対するもののように聞こえる。

(追記)いやこれは違うか、ケイが相麻菫の死んだ意図に気がついたのは学園祭より後だったから、この時点ではケイは今の相麻菫にメッセージを届けようとしたはず。結果として、未来視でしか届かなかったという点は間違っていないだろうけど。

相麻菫は自分の名前を呼ばせないために、浦地に対して協力の条件として「自分のことを調べないこと」を求めたが、実際には第18話でケイが知ったように、浦地は片桐穂乃歌の世界ですぐに調査をして全てを知っていたんだな。まあ相麻菫も全ては承知の上で茶番の会話をするためにその条件を出したんだろうけれども。

実際、第17話で索引さんと相麻菫の二人で車に乗っていた時に、索引さんは彼女のことを「相麻菫」と呼んでいたよね。教えてないはずなのに。さてこの時、菫スワンプマンの「その名前で呼ばないで。私は魔女よ」という言葉を、索引さんは真実として解釈したのだろうか?

ケイ「相麻菫、君は、バカだ!」
菫「私はもう、相麻菫ではないわ。名前を持たない、人間によく似た人工物」
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(出典:「サクラダリセット」第19話)

そして:

  • 相麻菫が最初からケイに全てを話さなかったのは、春埼とケイとの関係を能力だけで繋がる関係から恋に確実に進展させるため

それにしても無償の愛だがそれゆえに重すぎる相麻菫の想いが切ない。そしてこれを演じている悠木碧は本当に凄い。

菫「だって…他にはどうしようもなかったもの。馬鹿みたいでしょう。愚かだと思うでしょう。私の好きな人が、別の女の子に好きだと伝えるのを待つために、私は、長い間何も話さなかった」
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(出典:「サクラダリセット」第19話)

16話で潜伏先の相麻菫が「あなたはずるい」と言っていた対象は、やっぱり2年前に死ぬ前の相麻菫のことだったんだな(こちらのミスリードには流石に引っかからなかった)。しかし「どうしようもなく私も彼女と同じなの」はこれまた本当に切ない。

菫「ねえケイ、私には大嫌いな人がいる。彼女はずるい、彼女だけが苦しまない。あなたのためだと偽って、一人だけ傷つかないところにいる。苦しいものは全部私に押し付けて、彼女だけは楽をしている。それが誰だか、あなたに分かる? 彼女は愚かで、身勝手で、どうしようもないくらいに弱かった。それが誰だか、あなたに分かる?」
ケイ「…頼むよ。彼女を、相麻菫を許して欲しい」
菫「やっぱりあなただけが、私のことをわかってくれる。私はこんな私を生み出した彼女を許せない。でもねケイ、どうしようもなく私も彼女と同じなの。ずっと、あなたの幸せだけを願っているわ」
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(出典:「サクラダリセット」第19話)

相麻菫の作ったカレーの味は?

相麻菫とケイは、部屋で出来上がったカレーを食べる。相麻菫はどんなチキンカレーを作ったのか。それはケイの母親の味を手本にしたものだった。ではなぜそんなカレーを作らなければならなかったのか。おそらく、能力の呪縛が切れたら母親に会いに行け、という意図を持ったものだろう。それがケイが母親に会う最後のチャンスであり、またリセットを行うための大事なキーとなることを未来視で知っていたのだから。

菫「未来視能力でも、母親の愛情にはかなわない。そういうことでしょ?」
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(出典:「サクラダリセット」第19話)

ちなみにこのカレー、家でもこのやり方で作ってみたら結構美味しくできたのでオススメだ。

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涙を全部シャワーで流しきった相麻菫の笑顔が素敵すぎる。全ての布石を終え、全てを話し、全てをケイに託して、相麻菫はつかの間の哀しい相麻菫ルートに進むことになる。

ケイ「僕は能力を守ることにするよ。君の言葉を借りるなら、咲良田の能力全てを支配しようと思う。マクガフィンの予言通りに。だから支配して、全部思い通りに利用して、咲良田の能力がただの幸福な奇跡になることを目指して、進もうと思う」
菫「あなたなら上手くできるわ。だって、私の主人公なんだから」

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(出典:「サクラダリセット」第19話)

春埼美空の時間を巻き戻す浦地

それにしても浦地、この手に出るとは思わなかったな。おそらく浦地は、特に重要な、春埼美空からリセットを奪うという役目に岡絵理を使うほどには、彼女のことを信用していなかったのだろう。だから自分の能力でケイの記憶を春埼から奪い、あとは能力の消滅に任せるようにしたと考えられる。

浦地「あなたは、じっとしていて下されば、問題ありません。…ああ…ほら」

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(出典:「サクラダリセット」第19話)

実際、岡絵理は既にケイから工作を受けていたわけで、浦地の命じた「病院についていってリセットを奪う」という任務は明らかに咲良田のリセットに間に合わないので、おそらくダミーの任務だろう。

岡「生きてるの?」
浦地「もちろん。ちょうど巻き戻した先の彼女が眠っていただけだよ。2年と7ヶ月前だ」

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(出典:「サクラダリセット」第19話)

目覚める浦地の母、そして能力の消滅

加賀谷の能力で石にされたまま、咲良田のみに能力が認識される範囲を限定し続けてきた浦地の母。そのロックを解除して制限範囲をなくすことで、咲良田から能力の記憶が消滅する。

浦地「さあ、夢から覚める時間だ。咲良田をリセットする。」

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(出典:「サクラダリセット」第19話)

そしてストーリーはこの緊迫した状態で第20話に続く。見事だ。

第20話 「BOY, GIRL and the STORY of SAGRADA 1/5」

なんか、第20話ではストーリーのタイトルが変わっていて、原作でも6巻から7巻に移ってはいるのだが、どちらかと言うとこの第20話までが一つのストーリーのような感覚があった。そんな第20話は、今度はケイの涙の回であり、そして19話以上の、怒濤の伏線回収回だ。

能力の消滅

咲良田から能力が消滅した瞬間は、相麻菫とケイの両方の視点から描かれる。相麻菫はなんかちょっとおかしいと思いながらもまあそんなものか、と納得している。もう能力とは何の関係もない普通の女の子だ。スポーツバッグの件を見るに、シャワーを浴びた記憶も既に無さそう。

菫「あら、曇っていたかしら? この傘…そう、ケイに借りたのよ、きっと。…カレーを作りに行ったはずなのに…どうしてスポーツバッグを持っているのかしら? …まあいいわ、少なくともカレーは美味しかったと言ってもらえたわけだし」

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(出典:「サクラダリセット」第20話)

一方ケイは大変な混乱状況下にある。まさにSteins;Gateの世界線改変時の岡部倫太郎のようだ。

ケイ「なるほど、記憶を失えない僕が無理矢理記憶を書き換えられるとこうなるのか。咲良田に能力があった時の記憶と能力なんて存在しない世界の記憶がぶつかり合ってる。僕の隣に春埼がいる記憶と春埼がいない記憶、相麻が死んだ記憶と相麻が生きている記憶」

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(出典:「サクラダリセット」第20話)

それでも、ケイは春綺からの「ごめんなさい。やはり、外食のほうがいいですか?」という、自分が相麻菫を優先したことによって春綺に気を使わせてしまったメールを見て、「一体何を謝っているんだよ。こんなメールを最後にできるわけないだろ」とつぶやく。いいシーンだ。

翌朝登校すると、相麻菫は先日管理局に用意させた制服を着て、普通に高校に通っている。ケイに好意を抱く普通のクラスメートになっており、さらにケイにお手製の弁当も作って持ってきているようだ。また、(元の世界では面識がなかったはずの)皆実との距離感を見るに、ごく普通の人間関係を友人と築いているらしい。要するにここはいわゆる「菫ルート」なのだろう。

菫「なんだか一晩で随分年を取ったように疲れているようにみえる」

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(出典:「サクラダリセット」第20話)

春綺は病院から退院するところだ。背格好が変わったりしていることは、どうも「細かいこと」ということでそれなりに処理されてしまうらしい。

春綺母「少し丈が長いのね。痩せた?」
春綺「よくわかりません」

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(出典:「サクラダリセット」第20話)

春綺の病室の近くの片桐穂乃歌の病室に集まる医師、看護師を見かけるが、おそらく片桐穂乃歌は能力を失うことで、生命を維持できなくなってしまったのだろう。また、このままだと「非通知くん」も生存に能力を用いているので、数日中に命の危機に陥ると思われる。どうする皆実。

そして、春綺と母親との会話が1話の頃の春綺の雰囲気に戻っている。こうして時がいきなり戻ると、ものすごい感情の乏しさだな。ここは花澤香菜の演技が実に素晴らしい。

春綺母「そういえば今朝、電話がかかってきたの。あなたの中学校の同級生だって」
春綺「そうですか」
春綺母「たしか、浅井くん。仲が良かったの?」
春綺「いえ」
春綺母「そうなの?」
春綺「記憶にありません。忘れているだけかもしれません」
春綺母「ともかく、同窓会があるからその話で。今日の夕方うちに来たいんだって。浅井くんってどんな子かしらね?」

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(出典:「サクラダリセット」第20話)

反転している地球儀

お手製弁当を持ってケイを昼食に誘う相麻菫。ケイは屋上に続く踊り場を場所に指定する。そこは春綺とよく昼食を食べていた場所だ。相麻菫はなぜかそこに置かれた地球儀を見つめる。

菫「今日のあなたは何だか変ね」
ケイ「そうかな」
菫「ええ、あなたらしくもない質問ばかり」
ケイ「君を知ろうとしたんだ」

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(出典:「サクラダリセット」第20話)

よく見ると不思議な地球儀だ。まるきり左右が反転している。少し遡って調べてみると、12話で春綺と食事しているときにも反転している(片桐穂乃歌の夢の世界ではなく現実世界での出来事)し、そもそも毎週やっている2クール目のオープニングアニメでもこの地球儀は反転している。

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(出典:「サクラダリセット」2クール目OP)

単純なミスとも思えないし、あえて相麻菫の視線をここで向けるからには何らかの意味があるんだろうな、と思う。もしかしたら何か左右反転の能力みたいなもので反転させてしまって使えなくなった地球儀をここに捨ててあったのだが、能力の記憶を失った相麻菫は「なんかちょっと変?」と違和感を感じているところではないか…というような妄想解釈をとりあえずしているところだが、他の意味があるのかもしれない。

再現される未来視の風景

ところで、この世界では相麻菫はケイに恋する普通の女の子だ。やや一途すぎるような気もするけれども、少なくとも相手のためにさっくり死んであげるようなヤバい感じはしない分、幸せな世界だと言っていいのだろう。

そもそもケイが19話で言ったように、計画の遂行のためには相麻菫が死ぬ必要なんて本来なかったのだろう。相麻菫が自分が死ぬ選択をした時点で、彼女自身がある意味、何らかの形で病んでいたと言ってもいいのではないかな。彼女は復活する自分がスワンプマンであることを認識していたのだから、彼女の視点から考えれば、あの死は純粋な自殺だ。

それゆえに、かつての死の記憶も失われたこの世界が、今の相麻菫にとってはもっとも幸せなルートだったんじゃないかと思う。

菫「そう。毎朝制服を着て、同じ道を通って、同じ学校に行く。そういうのって、何だか押しつぶされそうになるのよ。大人になったらもっと、自由に解放された毎日を送りたかったわ。でもあなたに会って気がついた。そういうのって、割とどうでもいいことなのよね。学校に行けば、あなたがいるなら、毎日同じでいい。同じ方がいいと思ったの。あなたのためなら毛糸でセーターを編むことだってきっと楽しめるわ」

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(出典:「サクラダリセット」第20話)

ここで、13話で出てきた未来視のシーンが実際の光景として再現される。なんかtwitterでは、ケイが2度も相麻菫を振っている的なことを呟く人を多数見かけたのだけれども、13話の時は単に菫がこのシーンを未来視していただけだからね。相麻菫の制服が高校のものだったからわかったでしょ?

それはともかく、このローカルマキシマム的に相麻菫が幸せなこの世界をケイは許せない。13話で相麻菫が未来視で見ていたシーンと異なる部分は、ケイの独白が描かれていることだ。「だから君は相麻菫だけど、それでも僕の定義する相麻菫ではない」こうしてケイは、記憶改変後の相麻菫の好意を拒絶する。

ケイ「たとえば、僕達の記憶が全部偽物だったと仮定しよう。それでも僕たちは、こうやって二人でいられるのかな?」
菫「もちろんよ。はじめから記憶なんて間違っているものだもの。時間が経てばあやふやになるし、はじめから勘違いしていることもある。でも、その記憶から感情は生まれるの。勘違いだとしても間違っていたとしても、結果として今の私がいてあなたがいるということだけを、信じていいのだと思う。」
ケイ独白(記憶が消えていたらそうかもしれない。でも僕は全て覚えている。だから君は相麻菫だけど、それでも僕の定義する相麻菫ではない)
ケイ「ある女の子からプレゼントを貰ったんだ。途方もなく回りくどい方法で、手編みのセーターよりもずっと手間を掛けて、僕が一番欲しいものを用意してくれたんだ」
菫「良かったわね、それで?」
ケイ「君の言う通りだよ。勘違いだとしても、間違っていたとしても関係ない。僕の感情は僕の記憶から生まれる。だから」
菫「だから?」
ケイ「この世界を僕は好きだよ。君が笑っていて、色々な問題が綺麗さっぱりなくなっている。あるいはこれが、一番正しい答なのかもしれない。でも僕には僕の記憶があるんだ。だからいつまでもここにいるわけにはいかない」
菫「あなたの言っていることがよくわからないわ」
ケイ「うん、ごめん。もう少しわかりやすく説明できればいいんだけれども」
菫「でも、まあ…、つまり私はフラれたということかしら?」

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(出典:「サクラダリセット」第20話)

それにしても、前回このシーンについて書いた時は、すっかりミスリードに騙されていたな。

「ある女の子からプレゼントを貰ったんだ。途方もなく回りくどい方法で、手編みのセーターよりもずっと手間を掛けて、僕が一番欲しいものを用意してくれたんだ」

というセリフは、当然春埼のことだと勝手に思っていたのだけれども、まさか目の前の相麻菫に対して、記憶改変前の相麻菫のことを語っているとはさすがに思わなかった。騙された…悔しい。それにしても、ケイはかつての相麻菫のことを語りながら、それを理由として今の相麻菫を拒絶している。今の相麻菫は本気でわけがわからないが、自分が拒絶されたことだけは分かる、ということだよな。なんて可哀相な存在なんだ、新・相麻菫。「つまり私はフラれたということかしら?」と語る表情が悲しすぎる。

ああ、13話の菫のこのシーンの意味がやっと分かったよ。哀しすぎるだろう、もう…。

「ええ、そういうことよ」
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(出典:サクラダリセット 第13話)

咲良田の外に出るケイ、そして再会

能力の呪縛がなくなったのでケイは咲良田の外に出られる。ケイの過去は、4年前に両親が事故で死んだために中野家に引き取られたということに改変されている。ケイが生まれた街の駅はなんかJRの札幌駅っぽいが、妙に天井が高すぎる気がする。この街に来た理由は、おそらく昨日の相麻菫のチキンカレーで示唆された、母親に再会するためだ。

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(出典:「サクラダリセット」第20話)

かつてのケイの家のそばで、ケイは偶然母親と再会する。そして母親には小さな女の子、つまり妹が生まれていた。名前は「恵」(めぐみ)。ケイの記憶を失っている母親は、男の子だったら同じ漢字で「ケイ」と読むようにするつもりだったと語る。5話でケイが奉仕部の入部届を出す際に「漢字表記だと読み間違えられるのでカタカナにしています」という伏線が回収されているのだが、これまたロングパスだなぁ。

ケイの母「恵みという言葉には、深い愛情という意味があるのよ。慈しみと同じ意味」
ケイ「深い愛情を持つ子に育つように、という理由ですか」
ケイの母「それもあるけど、名前って人から呼ばれるものじゃない? たとえば私がこの子を呼ぶ時に、深い愛情の名前で呼ぶの。この子の友達も、将来の恋人もみんな、そういうのがなんか幸せだと思うの」

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(出典:「サクラダリセット」第20話)

そうなんだよ、春埼美空も相麻菫も、ケイのことを、母親のそういう想いが込められた名前で呼んでいるのだよ。胸が熱くなるな。ケイは子供時代の色々な不安定さに起因する家出をし、そして一度咲良田に絡め取られて出られなくなったのだけれども、偶然発生したリセットによってあらためて自分の意志で咲良田に絡め取られることにした。「ケイ」という名前に象徴されるような様々な思いを考えることもなく、子供の頃ゆえの単純な考えで判断した結果、両親の記憶からもケイの存在が抹消され、二度と家には戻れなくなってしまった。そんなケイが、母親に「謝る練習」をする。

ケイ「あの…謝る練習をしてもいいですか?」
ケイの母「練習?」
ケイ「ええ、いきなりだと上手く言えないかもしれないから」
ケイの母「いいわよ」
ケイ「…母さん、ごめんなさい。本当にごめんなさい」
ケイの母「…はい」

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(出典:「サクラダリセット」第20話)

ごめん本当に涙腺が緩くなった。そして「妹」が、改変された元の世界との関係を感じさせるような言葉で別れの挨拶をしてくれる。ヤバい俺もうダメだ。

恵(めぐみ)「バイバイ、お兄ちゃん!」
ケイ「……さよなら、恵」

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(出典:「サクラダリセット」第20話)

そしてこの幸せな瞬間も、この後に必要となるリセットによって失われ、ケイの記憶の中のみに存在し続けることになるのだ。

(この浅井ケイの実家界隈の聖地巡礼情報はこちらこちら

リセットを取り戻す春綺美空

ケイは春埼美空に会いに行く。春埼は2年前の、感情がない春埼に完全に戻ってしまっている。

春埼「すみません。私はあなたを覚えていません」

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(出典:「サクラダリセット」第20話)

それにしても、相麻菫の指示で、春埼に郵便箱経由で渡した本にはあの桜の写真が挟まれていたのね。なるほどその手があったか! 18話終盤、浦地・索引さんとケイの対峙するシーンで、ケイが所持していた「写真」は初代魔女のものだけで、相麻菫のものは前日に破ってしまったと聞いた時、あれ? 相麻菫復活に向けた実験で利用し、リセットで元に戻ったはずの桜の写真は? とか思っていたけれども、ここにあったのか! たしかに「ケイが所持」してはいないな。見事すぎる。

ケイ「君にすべてを思い出してほしい」
春綺「私はその必要を感じません」
ケイ「僕のために思い出してほしいんだよ」
春綺「方法がありません」
ケイ「あるよ」

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(出典:「サクラダリセット」第20話)

それにしてもこのルートの相麻菫は本当に可哀想すぎる。君は何も悪くない。実にまっとうな、浦地の考えるあるべき咲良田の姿が実現した場合、君はこのままケイと一緒にいるべき人だった。でもそれは、ケイが望んだ世界ではなく、つまり元の相麻菫が望んだ世界でもなかったというだけだ。

菫「一体、何がいけなかったというの? 私は、ケイと一緒にいたいだけなのに」

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(出典:「サクラダリセット」第20話)

写真の中に入ったケイと春埼。春埼は時間が巻き戻された記憶はどうしようもないが、能力の記憶だけは取り戻す。しかし、ケイの記憶とケイへの信頼が失われた春埼美空は、ケイの指示でリセットを使うことはできない。

ケイ「ここはまだ能力を失う前の咲良田だ。正しくはそのレプリカ。僕はずっと君のそばにいた。君がなくした記憶を知っている」
春綺「思い出せません。私はあなたを思い出せません」
ケイ「うん、知ってるよ。能力は絶対的だ。たとえば愛や友情で乗り越えられるものではない」
春綺「ではどうやって」
ケイ「リセットを使えばいい」
春綺「使えません。能力の使い方は思い出しましたが、今が使うべきときだと信じられません」
ケイ「僕を信じて欲しい、春埼」
春綺「あなたを信用する根拠がありません」

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(出典:「サクラダリセット」第20話)

いや19話の時点で、こうなった以上、1話からの伏線とも言える「泣いている人を見たら、私はリセットします」を使うしかないとは思っていたんだけれども、おそらく誰か別の人(たとえば相麻菫)の涙を見せてリセットするのだと勝手に思っていた。しかし、記憶を失う前の春埼が感情を取り戻すと共に、ケイも自分の感情を取り戻していたのだ。そして、涙を見せたのはケイ本人だった。

ケイ「僕は今日、いつも春埼と一緒にいた場所で相麻菫に会った。彼女と話をして、僕がこれから消し去ろうとしているものを実感した。4年ぶりに生まれた街に帰った。もう決して戻ることの出来ない家を見てきた。母さんに再会し、妹が生まれていたことを知り、名前の理由を知った。僕はきっと臆病なんだ。ずっと感情をさらけ出すことが出来ないでいた。弱さを人に見せるのが怖かった。相麻の前でも、故郷に戻っても、母さんに再会しても泣くことができなかった。でも僕は、できるなら色々なことを、もう一度やり直したい」

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(出典:「サクラダリセット」第20話)

ごめん、俺もついにここで泣いた。それにしても今までで一番華麗な伏線ロングパスの瞬間だった。凄いなサクラダリセット

「… リセット」

ケイの涙と時を同じくして、相麻菫の目からこぼれ落ちた一粒の涙が静止する。そして世界は最大限の3日間巻き戻る。

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(出典:「サクラダリセット」第20話)

巻き戻された世界。浦地の画策した能力暴走事件はまだ1つも起こっておらず、ケイの手元にはまだ桜、相麻菫、初代魔女の計3枚の「写真」が残っている。相麻菫の未来視もまだ岡絵理に封じられてはいない。

そしてケイの目の前には、ケイの記憶とケイへの信頼、そして新たな関係に一歩を踏み出したことも全て覚えている春埼美空がいる。思わず春埼を抱き寄せるケイ。うん、長い旅だったな。

春綺「何かあったのですか?」
ケイ「色々なことがあった…ほんとうに色々なことがあったんだ。…胸が痛い」

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(出典:「サクラダリセット」第20話)

おそらく、能力に対する対策に関しては、論理的には浦地のほうが正しい。それでも、相麻菫がマクガフィンを用意した浅井ケイは「能力が好きだ」という理由でそれに抗う。そして、根幹部分でそういう全く非論理的な感情で動機づけられているこういうストーリーが、俺はとても好きだ。

春埼「咲良田には能力が必要なのですね?」
ケイ「必要ではないよ。無くてはならないというわけじゃない。でも、僕は咲良田の能力が好きだ。ついそれを望んで、手に入れてしまう人たちが好きだ」
春埼「好き…ですか?」
ケイ「春埼、僕は決めたよ。咲良田の能力を支配する」
春埼「支配…ですか?」
ケイ「ああ、マクガフィンを手にした者は、咲良田の能力全てを支配できるんだ」

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(出典:「サクラダリセット」第20話)

というわけで、19話、20話は素晴らしいエピソードの連続だった。1話から見続けて本当に良かった。スタッフの皆さまありがとう。タイムリープ物としては、俺的には「シュタインズ・ゲート」以来のお気に入りと言っていいかもしれない(そういえばあれも序盤がアレで人を選んで、中盤から加速し始めたドラマだったなぁ…まあ序盤での人の選びっぷりが「サクラダリセット」ほどじゃないけどw)。

次回以降、ケイには春埼美空だけではなく、スワンプマン相麻菫もまとめて、幸せな世界に連れていって欲しい。そうじゃないと相麻菫が可哀想すぎて見ていられない。とりあえず明日の22話が楽しみだ。最終回まであと4話だが、どう風呂敷を畳み切るのかな。期待してる。

ああ、もう円盤でも最終巻の範囲なのだな…。

ちなみに原作7巻は、最終回終了後に読むつもり。こちらも楽しみ。

そういえば、19話と20話はエンディングに、相麻菫の涙のシーンが追加されていましたね。21話以降はどうなるのかな?

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(出典:「サクラダリセット」第19〜20話 ED)

(追記)勢いで続きも書いてしまった…。

xckb.hatenablog.com


(追記)聖地巡礼に関する記事を書きました。

xckb.hatenablog.com

xckb.hatenablog.com