さて、2018年冬アニメ「宇宙よりも遠い場所」が最終回を迎えて1週間と少し経った。あくまで私見ではあるが、まさに何年かに一度レベルの傑作と呼ぶのにふさわしい作品だったと思う。自分が大好きな作品を引き合いに出すのであれば、たとえば「四月は君の嘘」のように感情を激しく揺さぶられ、「SHIROBAKO」のようにオリジナル作品でありながら笑いあり涙ありでストーリーに引き込まれ、そして「魔法少女まどか☆マギカ」のように1クールという枠を極限まで利用し尽くした作品だ、と言ってもいいのではないかと考えている。これは新しいマスターピースが、南極という想像だにしなかった舞台から生まれてきたのかも知れない。
出典:「宇宙よりも遠い場所」OP
ということで、書こうと思えばいくらでも書けてしまうような気がするのだが、ここでは、とりあえず思いついた3つの視点から、この「宇宙よりも遠い場所」という作品について語ってみたい。なお、以下の内容には多くのネタバレを含むため、未見の方はまず最終回までネタバレ無しで全て見てから続きを読むことを強くお勧めする。Amazonプライムビデオやdアニメストアなどで、今でも全話配信している。全部見ても合計13話、6時間ほどだ。それだけの時間を費やす価値は、多分ある。
では少しスペースを挟んで、本題に入ろう。
- 無駄のない古典的なストーリー構成の中の新しさ
- 台詞によらない表現、象徴物の変容
- 反復するモチーフ
無駄のない古典的なストーリー構成の中の新しさ
「毎回が神回」「毎回が最終回」「軽くシネマっすね」のような評もよく聞かれたが、この作品は実に1話1話の独立性が高く、それぞれ1本の、25分間の短編映画と言っていい完成度である。基本的に何らかの問題が、起承転結をしっかりと付けた形で毎回その話数の中で解決に向かう。そして最後に挿入歌が流れるとともに見る者の感情を揺さぶる形でその問題が解決し、見事なほどに後を引かない。特別な構成であった第12話、第13話(最終回)を除けば、まさにある種の時代劇のように、一つの黄金パターンが確立していたとも言える。だが実際は、それぞれのエピソードの中で主人公たちは少しずつ成長し、人間関係が変化し、さらに次のエピソードにその変化が活かされていく。実に巧みである。
たとえば、第1話で挿入歌が流れ始めるタイミングはここだ。この物語のすべてがまさに走り始める瞬間である。
報瀬「じゃあ、一緒に行く?」
出典:「宇宙よりも遠い場所」STAGE 01
ちなみに挿入歌はどれも名曲揃いだが、その中でも何と言っても、このシーンでもかかっていた「ハルカトオク」は最高だった。もうこの曲が流れるだけで、条件反射で涙腺が緩むように訓練されてしまった視聴者も多いだろう。