xckb的雑記帳

15年ほどWeb日記をつけ続けていたのですが2012年で一旦休止、1年半ほど休んで新天地でぼちぼちのんびりまた始めてみることにしました。

何がこれほどまでに心を揺さぶるのだろう:「さよならの朝に約束の花をかざろう」感想(ほぼネタバレなし)

なんか一昨年の「君の名は」とか「この世界の片隅に」のようにあまねく人口に膾炙したアニメとは違うんだが、それでもチラホラとよい評判が聞こえてきていたアニメ映画「さよならの朝に約束の花をかざろう」。そろそろ上映のコマ数も減りつつあった今週、時間を作って平日朝一の回で見てきたのだが…、これがまたとんでもなく自分の琴線に響く作品だった。

もう朝から映画館で恥ずかしげもなく目が赤くなるのではないかと思うほどボロ泣きしてしまい、でも周囲の客からもなんか似たような雰囲気を感じるから恥ずかしくないやい、とか思った次第。そして観終わったあとの数時間は、ヤバい、俺この状態で息子に会ったら条件反射で涙を流して抱きしめる、とかそんな事まで考えてしまった位のはまり加減だった。

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実は自分は岡田麿里作品ってあんまり見てなくて、「心が叫びたがっているんだ。」も見ていないし、かろうじてちゃんと見ている「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」にしても、世間での評価ほど実は自分は高く評価していない。いやとても面白かったけどね。

そんな自分がなんでこの映画にはこれほど心を揺さぶられたのだろうかと考えつつ、できるだけネタバレしないように書いてみようと思う。予告編はこちらね。

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この物語は、ある男の子の一生の時間を凝縮し、偽物だけれども本物の「永遠の母なる概念」との関係を描き続けたものだ。若い世代の人は今まさに、親離れをし始めた頃の少年に自分の思いを重ねられるかも知れないし、子育てをしている人はその経験を主人公の姿に重ねて共感することができるだろう。

そして一生の時間を駆けていく中で、おそらくこれから体験することになるかも知れない、強く感情を揺さぶるであろう出来事のことを、まさに自分自身の事のように感じることができるのだと思う。

自分は自分の中の「男の子」としての体験と、現在男の子の父親をやっているということからダブルで心を直撃されたのかもなぁ、と思うが、一方で男の子やその「母」ではなく、不本意な形で人生を送ることになった女や、その彼女に思いを抱き続ける男に共感する人もいるだろうし、彼らの運命にもやはり、それぞれに心を揺さぶるものがあるのだと思う。

実は自分はファンタジーってのがあまり好きなジャンルではなく、むしろ通常なら敬遠するジャンルなのだが、この作品はそのハードルをやすやすと越えて衝撃を与えてくれた。おそらく、この物語のテーマを描くためには、ファンタジーが最も適していると考えた結果としての選択なんだろうな。長く心に残る作品となるだろうと思う。

残念ながらあまり多くの人に知られる作品にはなっていないようで、来週からさらに映画館での上映時間が早朝深夜のマイナーな時間に追いやられそうではあるが、ぜひ男女問わず、広い世代の人に見てもらいたい作品だと思うので、上映しているうちにぜひ劇場に足を運ぶことをお勧めしたい。この映像と音楽の美しさはやはり是非劇場で見るべきだ。早起き、夜更かしの価値は十二分にある。


ところで、この映画での川井憲次の音楽は本当に素晴らしいと思う。そして昨年秋「クジラの子らは砂上に歌う」のEDでデビューしたrionosによるエンディングテーマ「ウィアートル」は、もう俺にとってこれを聴くだけで条件反射で涙腺が刺激されそうな素晴らしい曲だ。ちゃんとサントラに入っていて嬉しい(マキア役の石見舞菜香も「クジラの子らは砂上に歌う」のヒロインであるリコス役だったので、この2人からはどうしても「クジ砂」が連想されるのだ)。早く円盤も出ないかな。