xckb的雑記帳

15年ほどWeb日記をつけ続けていたのですが2012年で一旦休止、1年半ほど休んで新天地でぼちぼちのんびりまた始めてみることにしました。

サクラダリセット第24話(最終回):相麻菫の心の再生、そしてその未来

こちらの続き。

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まさに最高の最終回

さて、いよいよ「サクラダリセット」が最終回を迎えた。自分としては、春には「春アニメで一番面白いのはサクラダリセットだ」、夏には「夏アニメで一番面白いのはサクラダリセットだ」とか言い続けてはや半年、この物語もやっと結末を迎えることになった。

この最終回のMXでの放映日、なんとこんな物凄いプレゼントがうちにやってきたのだけれども、これまた実に嬉しい事件だったな。

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そして22話の時に入院していたために退院まで見られなかった自分としては、無事に退院できて、最終回はちゃんとリアタイ視聴できてよかったよかった!

この「サクラダリセット」の最終回だが、19話からこの24話まで6話連続の神回、しかもずっと右肩上がりとも言える、最高の最終回だった。一種のループもので、ここまで尻上がりに盛り上がり続け、その頂点で最終回を迎えたようなアニメとしては、「シュタインズ・ゲート」以来の傑作といえるだろう。そして自分の中ではもう間違いなく、今年最高のアニメはこの作品で決まりだと思う。

そういえば「シュタインズ・ゲート」もあの序盤で切った人がかなりいたみたいだけれども、「サクラダリセット」の序盤での視聴者振り落としはその比じゃなかったからなぁ。とは言え、1クール目、しかも序盤で切ったような大多数の人は、実に勿体無いことをしたもんだ。シュタゲで言えば、ダルのヲタっぷりがウザいしフェイリスのノリについていけないからと、シュタゲを2話で切るようなもんだ。今からでもいいからNetflixdアニメストアあたりで「サクラダリセット」を最初から見てみるといいと思うぞ。ああ、少なくとも11話までな。

…あと、そういう人は、ここから先は猛烈にネタバレありだから、最終回見るまで絶対読むなよ!(笑)

(それにしても相変わらず「サクラダリセット」円盤のAmazonのレビューは、ろくに見てない人の酷評が多いな。でも「スタッフコメンタリーが欲しかったので、円盤としては星3つ」という低評価意見は理解できる。特に最終章の神回シリーズである19〜24話に対応する筈のBox 4は、是非ともスタッフコメンタリーを付けて欲しいぞ。やはりこういう作品こそ、スタッフコメンタリーが必要であると強く思うのだ)


…というわけで、最終回である第24話、感想などを書いていってみよう。ちなみに、放送直後に原作第7巻を読んだので、今まで憶測で書いていて間違ってた部分は答え合わせも兼ねて訂正するぞ。この作品に関しては「騙される快感」もたまらない要素の一つだと思うからな。

猫にまつわる倫理的課題と、愛猫家に対するお願いについて

23話でのケイの浦地への提案だが、やはり「猫ならば犠牲にしていいのか」という点と、その能力の使い方を「野ノ尾さんに同意してもらわなければならない」という点がネックなのは当然なんだけれども、その問題を野ノ尾さんに伝える役目を、ケイは春埼にお願いしたのか。何しろ「本人が望まない限り能力は発動しない」はずだからな。

野ノ尾さんは、野良猫屋敷のおじいさんに教わった「正しいものの見つけ方」を春埼に教える。そして、春埼が自分に伝えてきた「お願い」が、正しいものなのかどうか、つまり「間違いまで理解した上で、それでも正しいと思えるもの」であるのかどうか、自分でも考えている。

野ノ尾「間違いまで理解した上で、それでも正しいと思えるものが、本当に正しいものだ」
春埼「ケイにも、間違っている点がありますか?」
野ノ尾「あるだろう、もちろん。君は彼が何も間違えないと思っているのか? もしそうなら、それはちょっとした悲劇に見える。彼が何も間違えないのなら、もしも間違えた途端に、彼が浅井ケイではなくなってしまうのなら、悲劇的だ。何一つ間違いが許されないような生き方に、私なら耐えられないよ」

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(出典:「サクラダリセット」第24話)

野ノ尾さんにそう言われて初めて、春埼はケイのことをもっと知りたい、と思うのだ。野ノ尾さんは、もちろん完全に納得するわけではないけれども、どうやら協力してくれるようだな。

野ノ尾「泣き出しそうな顔だな、春埼」
春埼「私はもっと考えなければいけないことがあるのだと思います。まだ私は、浅井ケイの間違いを知りません」
野ノ尾「私もだよ。…しばらく落ち着いて考えてみよう。本当は私だって理解しているんだよ。結局私も人間だ。猫を犠牲にして人間を救おうとするのが、きっと正しいんだろう」

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(出典:「サクラダリセット」第24話)

この会話、いいな。ちゃんと前回「そこは問題になるのでは?」と、とても気になったことには結論を出してくれるところがいいし、ケイは良き理解者に囲まれていて羨ましい。

春埼「野ノ尾さん、猫の時間を永遠に止めてしまうわけではないのです。ケイはきっと、猫の犠牲さえ必要ない方法を見つけ出すつもりです」
野ノ尾「ああ、知っているよ」

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(出典:「サクラダリセット」第24話)

限界に達していた相麻菫

相麻菫が倒れた。第21話の後、ケイの指示通りに咲良田の外に出て、能力のことをすべて忘れていた相麻菫は、前回の第23話、咲良田に戻る電車の中で「境界」を越えた途端に流れ込んだ記憶のショックで、倒れたのだろう。第23話の時にこのブログで、

これは何らかの未来視でかつて相麻菫が見たものなのか、それともスワンプマンから復活した、この世界における唯一のイレギュラーな存在である相麻菫が、一度咲良田の外に出て再度戻ってきた時に、何らかの異常な記憶の書き換えが起こってしまったのか。
サクラダリセット第23話:パブリックな社会の問題の解決と、残されるプライベートな心の問題 - xckb的雑記帳

と書いたけれども、実際のところは明確にはわからないな。単純に未来視の結果が未来視の結果として思い出されただけなのかもしれないし、「相麻菫」という総体として再構成されたのかもしれない。まあ最終回のストーリーから考えると、多分前者だろうが後者だろうがそう大きな違いはないのかもしれない。

相麻菫は既に第19話でも、ケイとチキンカレーを食べて帰る時に、初代が自殺する前と同じく「さよなら」と言ってケイと別れようとしているし(ケイに言い直させられているけれども)、第21話で浦地から逃げる時も、何度ももう限界であると弱音を吐いている。咲良田の外に出る時の相麻菫は、本来もう一度、今度こそ完全に死ぬつもりでいたのに、第21話で写真の中のケイが「脅した」ことでかろうじて生きている状態だったのだ。

咲良田の外に出ることで、第20話で能力が失われた咲良田にいた相麻菫と同じ、ケイに恋するごく普通の女の子になっていた無防備な相麻菫に、そんな闇の記憶が一気になだれ込んだことで、その重みに耐えきれずに心に破綻をきたした、それが第23話のラストの相麻菫の状態と言えるのだろう。そしておそらく記憶が戻った時、初代が死んだことだけではなく、自分自身が「もう一度死ぬつもりだった」こと自体も許せないのだと思う。切ない。

そして、ケイは浦地に頼んで、片桐穂乃歌の眠り続ける病院に相麻菫を入れてもらい、春埼とともに片桐穂乃歌の夢の世界から相麻菫を助けようとする。

病院にいた正義の味方宇川さんがケイと相麻菫のことで話し合うのだけれども、これはケイを認めてくれた、ということではあるんだろうな。残念ながらアニメ版では省略されているんだけれども、2年前にケイが管理局と揉めた時に、ケイに宇川さんが協力するにあたって、一つだけ相麻菫に関する約束をしていたのだけれども、その約束をケイは初っ端に破っているんだよね。そのあたりが描かれていると、この辺のやり取りがもっと深くなった気がしないではない。正義でも善でも純粋でもないヒーローとしてのケイを、出会いのときと同じキットカットで応援してくれる宇川さん、実にいいな。

宇川「それで、君はどうするの?」
ケイ「予定通りに彼女を助けるんですよ。予定通り相麻菫は傷ついた、だから僕は予定通り彼女を救わなければならない」
宇川「浅井ケイ、君は正義ではないね。善でも純粋でもない。でもきっと、ヒーローではあるんだろう。夢のように万能を望みながら、万能にはなれない。どれだけ弱くて残酷でも、はたからはとてもそうは見えなかったとしても」
ケイ「僕は、ただわがままなだけです」
宇川「浅井、そのわがままを、人は努力と呼ぶんだ」

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(出典:「サクラダリセット」第24話)

取り戻される春埼の記憶

今回、相麻菫を助けることに協力するにあたって、春埼は条件をつけてきた。宇川さんも言っていたけれども、「報酬を要求するということは、責任を負うということだ」ということなのだろう。そしてケイのことを理解するために、リセットで失われた記憶を取り戻すことを、自分の感情に従って決めたのだろう。春埼は今まで「ケイのことを知ろうとしなかった」と言っているが、ケイも2年前に「相麻菫のことを知ろうとしなかった」が故に、相麻菫は死んでしまったのだ。

春埼「私があなたを理解するためです。もしもあなたにも間違っているところがあるのなら、それを理解したいのです」
ケイ「僕の間違っている部分なんて、いくらでもあるよ」
春埼「でも私はそれを知らないのです。私はきっと今まで、本当にあなたを理解しようとしたことがなかったのです。私は心の何処かで、あなたが変わらないことを望んでいたのです。ケイ、私は大好きなあなたが違って見えることを恐れていたのです。…どうしたのですか? ケイ」
春埼「君に好きだと言われたのは、これで二回目だ」
ケイ「一度目はいつですか?」
春埼「もうすぐ、君はあの日を思い出すよ」

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(出典:「サクラダリセット」第24話)

そして、記憶を遡った春埼美空は、ついに第2話の「あの日」を思い出す。

春埼「私にとって浅井ケイは特別だ。私にとって彼のバランスが最も優れている。とてもきれいで、心地が良い」
記憶の中の春埼『私はきっと、貴方が好きです』
春埼「……!!」
記憶の中のケイ『うれしい?』
記憶の中の春埼『わからない』

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(出典:「サクラダリセット」第24話)

「本当は私は嬉しかったんですよ」と語る春埼。だが、2年前に春埼は嘘をついたのではない。あの頃の春埼に、そもそも自分について嘘をつくという発想自体がない。その時感じた心の動きが、「嬉しい」という感情であるということが純粋にわからなかったから、素直に「わからない」と答えただけだったのだ。今ならその時の感情が「嬉しい」という感情だと理解できる。そして、そんなすれ違いによって生じた小さな隙間に自ら落ちて、相麻菫は死んでしまったのだ。

春埼「一つあなたの間違いを見つけました。二年前、南校舎の屋上であなたが口づけした時、本当は私は嬉しかったんですよ」
ケイ「…じゃあ僕は、随分臆病で遠回りしたわけだ」
春埼「遠回りしたのは私もです」

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(出典:「サクラダリセット」第24話)

ところで、春埼美空はきっと、自らのペルソナと対峙した、このリセットされた時間も思い出したんだろうな。

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(出典:「サクラダリセット」第14話)

そして、悲惨な姿で死んだケイに涙を流したこの時の感情も。

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(出典:「サクラダリセット」第4話)

やっと、ケイと同じ時間を本当に共有した春埼美空。そして、因果のポケットに落ち込んだ相麻菫を助けるために、ケイと春埼は再び片桐穂乃歌の夢の世界にいる、彼女に会いに行くのだ。

ところで、コピー能力の坂上くん、原作だとここでケイと激しいやり取りがあるんだよね。そりゃもちろん、自分で相麻菫を助けたいだろうし、一方で自分ではそれが不可能なことも、彼には十分わかっているだろうさ。辛いな…。自分としてはとても好きな場面なので、ぜひ原作で読んでいただきたい。

「二番で納得してもらいにいくんですよ」

片桐穂乃歌の夢の中、青い月夜、相麻菫はチルチルと話す。そしてこの夢の世界の全能の神となる。

ところで片桐穂乃歌もチルチルも、早速アンロックされているのね。それとも、この相麻菫の危機に乗じて、ケイが浦地正宗経由でロック措置を解除してもらったのかな? 何れにせよ、意識を閉ざした人間を、片桐穂乃歌の能力を使って、夢の中で会って助けようとはまたアクロバティックな能力の使い方だな。

菫「ねえチルチル、あなたは私のお願いを聞いてくれる?」
チルチル「もちろん、なんだって」
菫「ならチルチル、私もあなたと同じにして。あなたと同じように、何でもできるように」

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(出典:「サクラダリセット」第24話)

このミチルとケイとの会話がぶっちゃけすぎていて面白い。「二番で納得してもらいにいくんですよ」は本当に酷いが、実際のところそれ以外に方法があるわけでもない。宇川さんの言っていたことにも重なるけれども、ケイは酷くでわがままでそれでもヒーローだ。

ミチル「今度は彼女を助けに来たの?」
ケイ「ええ」
ミチル「あなたなんなの? もしかしてヒーロー?」
ケイ「いえ、相麻菫の友達です。僕は世界で二番目に、相麻菫の幸せを願っています」
ミチル「そのランキングは一番を取らなければ意味のないものなんでしょうね。二番じゃ意味が無いから、菫は一人でうずくまっているのよ」
ケイ「そうかもしれません」
ミチル「菫を一番にしにいくの?」
ケイ「二番で納得してもらいにいくんですよ」
ミチル「あなたはとっても酷い人ね」
ケイ「はい、僕はとっても酷くてわがままなんです」

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(出典:「サクラダリセット」第24話)

この世界で相麻菫がいる場所として、ケイと初めて会ったテトラポッドのところでも、ひと夏を過ごした中学の屋上でもなく、シャワーを浴びてチキンカレーを作って食べたケイの部屋だと迷わずに判断するケイは鋭い。二代目の相麻菫としては、自分がケイと濃い時間を過ごした想い出の場所というのは、本当にあの部屋しかないんだよね。しかもその出来事さえ既にリセットされていて、想い出はかつて未来視で見た風景の中にしかないはず。

さらに時系列をよく考えてみると、相麻菫がシャワーを浴びてカレーを作って食べたのは実は前のループでの明日、24日で、今日はまだ23日なのだ。実は過去の記憶ですらない。そしてこのケイと春埼の会話を考えると、今回のループの24日には、おそらく相麻菫の代わりに春埼美空がケイの部屋でカレーを作ることになるのだ。まあ、春埼美空は多分前回のループ時にカレーの材料を買ったことを先ほど思い出してカレーを作る気になっているわけだろうし、ケイはあの前回のループでの春埼の最後の悲しいメールをなかったことにして、一緒に夕食を食べるという約束を実現したいだけだろうから、どちらも悪気はないんだろうけれども、大切な想い出をなかった事にされた上に、恋敵に上書きされてしまう相麻菫が色々と不憫でならない。

ケイ「一通り全部終わったら、一緒にキットカットを食べよう。甘いチョコレートで一休みしながら、一緒にカレーを作る計画を立てよう」
春埼「世界で一番美味しいカレーを作りましょう」

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(出典:「サクラダリセット」第24話)

ということで、20話のラストシーンで始まった、長かった24時間がやっと経過。春埼がセーブできるようになる。ところで夢の中の世界でもセーブは効くのね。最初見た時、一瞬混乱してしまったぞ。

ケイ「春埼、セーブ」
春埼「セーブ。午後7時15分20秒です」
ケイ「じゃあ、行こう」

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(出典:「サクラダリセット」第24話)

そして部屋に入ろうとした途端に消滅する春埼美空。そうか、今の相麻菫はチルチル同様の神様だからな。あの時のチルチルと同じく、ケイと春埼の二人に別々に会おうということか。

相麻菫と浅井ケイ

想い出の、ケイの部屋のソファにうずくまる相麻菫。そして最も相麻菫を救う資格がないが、最も相麻菫を救う能力のある男、浅井ケイは都合のいい自分の理屈、しかし「相麻菫がケイを今までずっと救ってきた」という、それしかない真実を並べて相麻菫を説得する。

ケイ「君は今まで誰よりもうまく、僕を救ってきたんだ。間違いないよ。君が作った僕の幸せは、僕にとって本物の幸せだ。本当に、本物の僕の幸せだ。ありがとう。だからお願いだよ。これからも僕を助けて欲しい。これからも僕は君のお陰で幸せでいるんだ」

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(出典:「サクラダリセット」第24話)

「眩しいわ」と言って一瞬で部屋の照明を消す相麻菫。そして窓から月明かりを入れるケイ。涙を流す相麻菫、そしてその涙を拭うケイ。命さえ捨ててケイに尽くした上に「あなたを手に入れられないのに、それでも笑えてしまう未来が怖い」と語る相麻菫が本当に切ない。

ケイ「ほら、やっぱり君は泣いている。僕の未来を見て。ひと月後、半年後、一年後、僕から見える場所で必ず君が笑っているから、その未来を見て」
菫「ねえケイ、あなたが望むのなら、きっとそうなるのでしょう。でも私はその未来が怖いの。あなたを手に入れられないのに、それでも笑えてしまう未来が怖いの」

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(出典:「サクラダリセット」第24話)

そして、相麻菫は「ゲーム」をケイに提案する。正解したらケイに従う、不正解ならケイとこの夢の世界でずっと暮らすのがこの「ゲーム」の条件。そしてゲームの内容も聞かずに、あまりにあっさりと承知するケイが凄い。

菫「でもいいわ。たったひとつだけ条件を飲んでくれれば、あなたの言うとおりにしましょう」
ケイ「何だろう」
菫「私とゲームをして欲しい。あなたが勝ったら私はあなたに従うわ」
ケイ「もし君が勝ったら?」
菫「あなたの未来を私に決めさせて。あなたは私のものになる。そしてこの夢の世界で暮らす。まるで石ころみたいに、誰にも迷惑をかけない生活を送る」
ケイ「いいよ、どんなゲームだろう?」

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(出典:「サクラダリセット」第24話)

そしてその「ゲーム」の問題は…今までこの物語を見てきた人々がぼんやりとそれぞれの考えを持っていたものの、相反するような様々な事象に翻弄されて、謎となってきた問題そのものだ。つまり、相麻菫は「私の名前を呼んで」とケイに問う。

菫「あなたはこの部屋に入ってから、一度も私の名前を口にしていないわね。きっと私に気を使ってくれているのでしょう。でも、お願いケイ。私の名前を呼んで。間違えずに私の名前を呼べれば、あなたの勝ち」

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(出典:「サクラダリセット」第24話)

相麻菫と春埼美空

突然消えてから30分後にケイの部屋の前に出現した春埼美空。ケイの部屋の中にはケイはおらず、相麻菫が一人、小石を持って佇んでいる。その小石は、ゲームの結果ケイが負けたため、ケイを小石の姿に変えたものだという。小石を春埼に投げて反応を伺う相麻菫が実に恐ろしい。

春埼「相麻菫、あなたがそんなことを望むはずがありません」
菫「私が本当に相麻菫ならね」
春埼「!!!!」
菫「あははは、おかしいわね。その小石が浅井ケイでないのなら、そんなにも慌てる必要なんてないじゃない。春埼美空、それは本当に浅井ケイ。何かを見ることも聞くことも出来ない、でも内側で思考し続けている。浅井ケイの意識だけを持った小石よ。諦めなさい。浅井ケイはもう私のものなの。」

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(出典:「サクラダリセット」第24話)

それにしても、相麻菫に怒りの感情を露わにする春埼美空が凄い。この2人の対決を演じる悠木碧花澤香菜、凄すぎる。そしてこのやり取りは強烈すぎるな。

春埼「相麻菫。言葉を選ばないことを許して下さい」
菫「あの春埼美空が随分人間らしくなったものね」
春埼「2年間というのはそれくらいの時間です」

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(出典:「サクラダリセット」第24話)

春埼美空を追い詰める相麻菫。「浅井ケイを頂戴」は本心からの言葉からゆえの迫力なんだろうな。

菫「自分よりも彼を優先するあなたは、彼のためなら彼の元を離れることさえできるんでしょうね。だったら…ねえ…、浅井ケイを頂戴」

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(出典:「サクラダリセット」第24話)

追い詰められ、一人でリセットを使うことを考え、そしてそのやり方を思い出した春埼。「リセット」と言いかけたところで相麻菫が一瞬表情を変化させる。そして相麻菫の真意に気づき、リセットを中断する春埼。ああ…相麻菫は、かつて相麻菫の死によって一人でリセットが使えなくなってしまった春埼美空の「欠けた部分」を取り戻させてくれたんだな。

菫「今のあなたに、一人でリセットが使えるの?」
春埼「できます。…リセッ…………!?」

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(出典:「サクラダリセット」第24話)

このあたりの悠木碧の演技が圧巻だな。「私はそれほど、何もかも計算できているわけではないの。私だってどうしようもなく感情を持っているの」と、未来を見て計算ずくで動いていて、アンドロイドのように振る舞っていた相麻菫の、本当の心の叫びに圧倒される。未来が見えて、計算ができてしまうがゆえに、その感情には、春埼美空とは別の意味で無理がかかっていたんだろうな。

相麻菫は、春埼に対してリセットを自分でできる能力を取り戻させた理由は、あくまでケイのためと言っているし、実際それは真実なんだと思うけれども、でも本当は自分の死によって歪められてしまった春埼の能力、つまり心の表出を、元のあるべき姿に戻してあげたかった、というのもあると思うんだよな。そしてもう一つは、自分がケイのことを「譲る」のだから、その対象の春埼は自分が尊重できる自立した人間であるべきだ、という感情もあったのだろう。この二人はこれからも、時に感情をぶつけ合い、それでもなんだかんだで助け合う事のできる、そういう関係であって欲しいと思う。

菫「あなたのためなんかじゃない。ケイはこれから、咲良田の能力すべての責任を背負おうとしているのだから、あなたはいつまでも彼に守られたままではいけない。あなただけは、何もかも救おうとしてしまう彼の正しい救いでなければならない。自分の能力に責任の持てないまま、彼のそばにいてほしくはないわ」

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(出典:「サクラダリセット」第24話)

春埼は相麻菫のように優秀で相手を支える存在になりたい。相麻菫は春埼のように愛される存在になりたい。なかなか世の中うまくいかないものだ。そういえば原作では春埼が「ケイが二人いればよかったのに」と言い、ケイが「そうしたら二人とも春埼を選んで余計ややこしいことになる」と考えるシーンがあったけれども、本当に色々難しいものだ。

春埼「頭が良くて優れた能力を持っていて、いつだって彼の役に立てる。それが私の理想です。相麻菫、私はあなたのようになりたいのです」
菫「私は…春埼美空…あなたのようになりたかった」

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(出典:「サクラダリセット」第24話)

そしてこの二人の「和解」を象徴するようなシーン。本当によかった。

春埼「ケイはどこですか」
菫「もう目を覚ましているわ」
春埼「では、わたしたちも帰りましょう」

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(出典:「サクラダリセット」第24話)

アイデンティティの行方

ということで、先程の相麻菫・浅井ケイのゲームの答えは…、何と「相麻菫は相麻菫」だった!

菫「お願いケイ、私の名前を呼んで。間違えずに私の名前を呼べれば、あなたの勝ち」
ケイ「…」
菫「さあ」
ケイ「相麻菫。ずっと君は相麻菫だった。智樹の能力で送られたメッセージだって、届いていたんだろう?」

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(出典:「サクラダリセット」第24話)

とは言っても、実際のところ、何をもってアイデンティティとするかは単に考え方の問題であって、智樹の能力が届いたからというのはそれを補完する一つの材料にすぎず、それは智樹の能力から見た場合の同一性を知ることができるということにすぎない。だから、相麻菫は智樹からのメッセージが届いていたにもかかわらず、自らのアイデンティティを疑い続けており、それ故にこの疑いを前提として、浦地に対抗する計画を立てることができた。

ケイはそこを認識した上で、「相麻菫は相麻菫だった」という事実を答えたのではなく、「相麻菫は相麻菫とケイが決めた」ということだ。そもそも、相麻菫にはケイを石にして所有するような考えはなかったし、ケイが何と答えても「正解」だったのだろうけれども、でも「相麻菫は相麻菫」という答えが、もっとも相麻菫が願っていた答えだったのだろう。この答えを聞いて溢れた相麻菫の涙は、ケイが消す必要がない涙だ。

菫「どうしてあなたはそれを信じられたの?」
ケイ「君のことを考えれば分かる。もし届いていなかったら、優しい君は『僕が選んだほうが正解だ』なんて、絶対に言わないよ」
菫「でもねケイ、あなたに決めてもらうまで、私は何も信じられなかった。能力で声が届いても、自分自身が相麻菫だと信じられないと知っていた。そう、私の弱さを知っていたから、私は全てを計画できた。私の名前を、私のアイデンティティを、あなたに決めさせようとした。ごめんなさいケイ。私はまた、あなたに荷物を背負わせた」

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(出典:「サクラダリセット」第24話)

これが、第21話から俺も疑問だった「智樹の2年前のメッセージが相麻菫に届いていたのか、仮に届いていなかったとするならば、なぜ写真の中から逃走中の相麻菫にメッセージが届いたのか」という疑問の答だったのだ。俺もすっかりミスリードに騙されたわけだけれども、でも騙されていてよかった。考えてみれば俺も、「相麻菫は相麻菫」という答えが一番嬉しかったのだ。

「月が綺麗だったんだ」

夢の世界から目覚める相麻菫。その傍らにはケイがいる。どうして春埼じゃなくて自分の隣にケイがいたのかと訊く相麻菫に、「月が綺麗だった」と返すケイ。

あの浅井ケイが「月が綺麗」の意味を知らないはずがない。本当に綺麗だった月の光のもとで、相麻菫に対して精一杯の好意を示した浅井ケイは、二人で月を眺める。

菫「どうして春埼じゃなくて、私の隣りにいたの?」
ケイ「理由は二つある。一つ目はなんとなく、君のほうが先に目を覚ますような気がしたんだ」
菫「二つ目は?」
ケイ「とても…月が綺麗だったんだ」
菫「えっ」
ケイ「君は窓際で眠っていて、春埼はそうじゃなかった」

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(出典:「サクラダリセット」第24話)

でもその答えが「死んでもいいわ」ではいけない。いいはずがない。相麻菫の返答は「本当は伝言なんて大嫌い」…そのとおりだ。

時を乗り越えるメッセージで死後に届く言葉でもなく、閉ざされた扉の中から電話越しに伝わる言葉でもなく、直接会って同じ時と空間を共有し、他人の言葉ではなく自分の言葉を直接伝えたい。そういうことなんじゃないかと思う。

今後の「仕事上のパートナー」としてケイと握手を交わし、勝手に病院を去っていく相麻菫は、よく見ると少し成長した、野良猫のような姿を取り戻すことができたかのようだ。

菫「ああそうだ、昔あなたに嘘をついたことがあるの」
ケイ「何だろう?」
菫「本当は伝言なんて大嫌い。これからはケイ、私の声を聞いて」
ケイ「うん、間違いなくそうするよ」

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(出典:「サクラダリセット」第24話)

相麻菫が去っていったことを確認するとすぐにカーテンの向こうから現れる春埼の仕草がとても可愛らしい。起きてきた後はあらためて顔を合わせたくないんだな。相麻菫とはこの実に微妙な関係を保っていけると、とても素敵だと思うな。

春埼「ケイは、私と相麻菫が仲良くなるのを望みますか?」
ケイ「君は相麻菫の不幸を望んでいるわけではないんだろう?」
春埼「はい。」
ケイ「彼女が困っていたら、きっと助ける」
春埼「できることなら」
ケイ「なら、いいんじゃないかな」
春埼「よかったです、もし友達になれと言われたらどうしようかと思いました」

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(出典:「サクラダリセット」第24話)

そして、髪を伸ばすことに決めたことをケイに話す春埼。記憶のいいのが自慢だという浅井ケイという人は当然覚えているだろうけれども、昔「その髪が綺麗だから切ったほうがいい」と言ってしまった、ケイのもう一つの愚かな間違いを、春埼は正すことにしたのかも知れないな。

春埼「これから髪を伸ばそうと思います」
ケイ「とても良いけれど、どうして?」
春埼「先ほど思い出したのです。あなたは昔、私の髪が綺麗だと言いました。覚えていますか?」
ケイ「もちろん。僕は記憶力がいいのが自慢なんだ」

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(出典:「サクラダリセット」第24話)

エピローグ

エンディングでは、今まで登場したキャラクターたちが、その後の日々を過ごしている姿が次々と映っていく。でもやはり嬉しかったのは、まずはこの憑き物が落ちたかのような浦地正宗の笑顔と、幸せそうな浦地の両親だ。

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(出典:「サクラダリセット」第24話)

そして、あのテトラポッドで笑顔で一人で佇む相麻菫。もう最後に、相麻菫の笑顔さえ見られればもう何も言うことはないよ。2年前に死んだ女の子、そして本来であれば数日前にもう一度、完全にこの世界から消えていたはずの彼女が、思い出の場所で笑っているというだけで、このストーリーは最高の、まさに「聖なる再生(サクラダリセット)」を描いたものであったと、言えるのではないかと思うのだ。

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(出典:「サクラダリセット」第24話)

というわけで、2クール全24話、見続けて本当によかった。素晴らしい作品を作り上げた原作者とスタッフには最高の賛辞を贈りたいと思う。

この「サクラダリセット」だが、2クールの間、ここまで緻密に膨大な伏線を張り巡らせ、それをことごとくきれいに回収していった作品というのは、他になかなか思い当たるものがない。そして多くの個性あふれるキャラクター達も、様々なところでストーリーの本筋に絡み続け、時には想像もしなかった形で重要な役目を果たしたりしていくのも実に見事だ。

主人公が所謂「俺TUEEEE」系ななわけではなく、能力としては強力だけれども本来さほど役に立つわけでもない「記憶」しか持っていないにもかかわらず、周りの「友人」たちの力と組み合わせることでさまざまな困難に対応していくというスタイルも面白いし、能力物といっても物理的に戦うことはほとんどなく、ラスボスとの戦いでさえ、全て会話劇で決着が着くというところもまさにパズルのようで楽しい。見進めていく度に心地よい知的な刺激が得られるという点では、近年珍しい作品だったといえるだろう。

また、知的刺激のある物語だというだけではなく、3人のメインキャラクターたちが、それぞれ人間らしい感情を、それぞれの形で取り戻していく物語でもあり、また三角関係の恋物語としても(かなり異常な形ではあるが)見ることができる重層的な作品であるといえるだろう。さらに、タイムリープを使った一種のループものアニメとしては、前の方でも述べた通り、自分としては「シュタインズ・ゲート」以来の傑作だと思っているし、ミステリー作品としてみるのであれば、「騙される快感」を、シリーズ中何度味わったことだろうか。

キャストの演技も素晴らしかったのだが、特に強調したいのはやはり、相麻菫を演じた悠木碧と、浦地正宗を演じた櫻井孝宏だな。どちらも、相麻菫が悠木碧で良かった、浦地正宗が櫻井孝宏で良かったと本当に思う。この2人が2クール目で醸し出したえも言われぬ緊迫感は最高だったし、特に相麻菫には本気で惚れた。何と言っても21話における、この2人が中心となる一連の流れは、既に原作を読んだ上でもこのアニメ版の出来が最高すぎると思う。

ただ残念ながら、おそらく商業的には決して成功したとは思えないが、それでもこのラスト6話の盛り上がりを経た後では、2ヶ月ほど前とはだいぶ違った状況にはなっていると思う。特に、原作を読みたくなった人はかなり多いだろう。あとは、こういう割と本気で、しかも可能なら何度も見ないとそもそも作品と対峙できないようなアニメってのも、もう少し受けるようになってくれると嬉しいんだけどな、と思うばかりだ。

ところでこの作品、劇伴が本当に気に入っているのだけれども、サントラは出ないのだろうか。配信のみでも構わないし、なんなら本当に円盤のおまけでも構わない。是非ともサントラをリリースしてほしいと切に願っている今日このごろなのだ。

ともあれ、本当に楽しい作品だった。こんな無茶な企画を連続2クール通した上に、商業的にはアレな感じであるにもかかわらず、原作をリスペクトした形で素晴らしい映像化を行ってくれたスタッフ達にあらためて拍手だ。本当にありがとう!


(しかし、某Torneはたかが「サクラ」という3文字の文字列がタイトルに共通なだけの番組が2つ並んだだけで予約を撮り違えるような初歩的なバグを早く直すべきだ。あれで余計なヘイトを抱え込んだことは実に想像に難くないw)

(追記)聖地巡礼に関する記事を書きました。

xckb.hatenablog.com