さて、サントリー美術館で7月から開催されている「琉球 美の宝庫」展だが、昨日見に行ってきた。実は二度目である。前半後半でかなりの展示が入れ替わる上に、最後の2週間のみ展示される尚家の宝物がたくさんあったからだ。
展示期間のリストを見て、これは8月1日〜8月6日の期間と、8月22日から9月2日までの期間に2度行くのが正しい、と判断して、8月3日(金)と8月23日(金)に行ってきたのだが大正解だった。金曜日は20時まで美術館が開いているので仕事帰りにも寄れるしね。
ともあれ、開催期間はあと約1週間、9月2日(日)までなので、行く気があるならさっさとそれまでに行くべきだ。琉球文化に興味があるならとりあえず行っといたほうがいいと思う。これだけのお宝を一堂に見られるチャンスはなかなかない。
とりあえず、自分で写真を撮ってきて紹介できるわけでもないので、俺的にヒットしたポイントを、サントリー美術館公式アカウントのツイートを織り交ぜて紹介したいと思う。
まずは8月22日から期間限定で展示されている、王家の本物の王冠だ。首里城にある王冠はレプリカだ。この本物は那覇歴史博物館所蔵だけれども、これも1年に30日しか展示されない。そして実は俺も本物を見たのは初めてだ。
\いよいよ明日から「玉冠」展示!/
— サントリー美術館 (@sun_SMA) 2018年8月21日
明日から《国宝 琉球国王尚家関係資料 玉冠(付簪)》の展示が始まります!守り継がれてきた王家の至宝は必見!!https://t.co/tGajI9p432 pic.twitter.com/aPOCZH1kQ4
先程も書いたとおり、この他にも8月22日からは尚家の宝物が色々期間限定展示されている。王の衣装である「紺地龍丸模様緞子唐衣裳」とか、「赤地龍瑞雲嶮山模様繻珍唐衣裳」とかも素晴らしかったぞ。
個人的には、前半と後半で4枚ずつ、合計8枚すべての葛飾北斎「琉球八景」が見られたのも実に眼福だった。
\琉球に富士山?🗻/
— サントリー美術館 (@sun_SMA) 2018年8月24日
江戸が琉球ブームにわいていた頃に北斎が描いた「琉球八景」。実際に琉球に行ったわけではなく、中国書物の挿図を参考に描いたと考えられます。雪や山は北斎の創作で、富士山らしき山も見られますよ。https://t.co/tGajI97tbu pic.twitter.com/rQGnTQkGrm
特にこのツイートの右側の「長虹秋霽」は、初めて見たときに、この絵が今の沖縄のどこにあたるのか全くわからなかったということが、自分が琉球王国の時代に興味を持ったきっかけとなったという、実に思い出深い作品でもあるので、やっと本物を見ることができたという点で感激だった(他の何枚かは実物を見たことがあったが、「長虹秋霽」は今回が初見だった)。まあ、本物とは言え浮世絵なので版画ではあるんだけれども。
このあたりの俺の思い入れに関しては、以前ブラタモリ那覇編をやった時に勢いで書いたこの辺りに詳しい。
そして今回俺が一番展示品の前で時間を過ごしたのはどこかと言えば、一連の那覇港図の作品群だ。実はこの展覧会では、那覇港を描いた多数の作品が、前期後期合わせてこれだけ展示されていたのだ。
- 琉球進貢船図屏風(六曲一隻、19世紀、京都大学総合博物館)
- 琉球貿易図屏風(六曲一隻、19世紀、滋賀大学経済学部附属史料館)
- 琉球交易港図(三幅、19世紀、浦添市美術館)
- 琉球交易港図屏風(六曲一隻、19世紀、浦添市美術館)
- 首里那覇港図屏風(八曲一隻、19世紀、沖縄県立博物館・美術館)
- 進貢船の図(一幅、19世紀、沖縄県立博物館・美術館)
- 那覇港図( 一幅、19世紀、個人蔵)
- 琉球図(一枚、天保4年 1833年、西尾市岩瀬文庫)
1.〜3.が前期の展示、4.〜8.が後期の展示だ。この類似のモチーフの作品をこれだけ集めてきたのは本当に素晴らしい。実にわかっていらっしゃる。以前から俺がどれだけこの那覇港図に執着しているかは、同じくブラタモリ那覇編の時に書いたこちらでわかっていただけるかも知れない。
これは、過去の那覇の姿を現代に伝える素晴らしい資料なのだ。だが、どれもデフォルメや独自のパノラマ展開を行っているため、数があればあるほど互いが互いを保管しあうことができるのだ。5.の「首里那覇港図屏風」にはこういう面白いサイトもあるんだな。
ともあれ、見たこともない作品もいくつかあったなかで、一番俺が注目したのは8.の「琉球図」だ。この作品は、他の作品が那覇から中国に向かう、東→西方向で無理くりパノラマ展開した構図か、その一部を拡大した、那覇から対岸(垣花あたり)を見る構図が多い中、唯一南から北に向けての、多少デフォルメはあるものの、他の作品よりはずっとリアルな鳥瞰図になっているのだ。
もういつまでも見ていても飽きない感じでずっと眺めていたのだが、これ、図録の印刷では細かいところまで見えないから、誰か高解像度のデジタルデータ化してくれないかな、なんて考えていたところ、調べてみるとちゃんと所蔵元の西尾市岩瀬文庫が高解像のデジタルデータ化して、しかもネット公開してくれている。素晴らしすぎる。
いや、貴重な歴史資料は、まさにこうあるべきだよね。西尾市岩瀬文庫様、今まで名前も知らなかったけれども本当にありがとう、最高だよ。あまりここで細かいこと書いてもアレなので、あらためてこのサイトで「琉球図」を見ながら思ったことは、あとで別記事にでもまとめよう。
ちょっと特定の作品について熱くなりすぎてしまった。
絵に関しては、他にも植物図鑑的な「中山花木図」とかもとても良かったけれども、 「花鳥図巻」(孫億、康煕51年 1712年)は圧巻だったな。
紅型、織物などはほとんど前期と後期で入れ替わっていたけれども、個人的な好みとしては後期の作品のほうが無茶苦茶好みだ。「浅地稲妻に松窓絵散し模様衣裳」とか「薄紅麻地総絣衣裳」とか、本当に俺好みだった。
漆器・螺鈿に関してはあまり前期・後期で動きはなかったけれども、尚家宝物の中で異彩を放っていた「黒漆雲龍螺鈿東道盆」「黒漆葡萄螺鈿箱」が8月20日までの展示でなくなっていたのは残念だったな。まあそのおかげで本物の王冠が見られたりしたわけだけれども。意外に葡萄柄の螺鈿って人気だったのかね。「黒漆葡萄栗鼠螺鈿箔絵箱」の同じタイトルで2作品展示されていていずれもとても素晴らしかったけれども、そうか、沖縄でも葡萄って取れるのね。
…ということで、前回と今回、どちらか1回しか行けないとしたら圧倒的に今回、と思うので、首都圏に住んでて琉球文化に興味はあるけれどもまだこの展覧会に行っていないという人は、ぜひ東京ミッドタウン、サントリー美術館に行ってみたよう! オススメだ。