xckb的雑記帳

身の回りにあったことを雑多に語ります。

岡本太郎とパブリックアート、そして福島での残念な出来事について

先日から、川崎市岡本太郎美術館で「街の中の岡本太郎 パブリックアートの世界」という企画展が行われていたので行ってきたのだが(期間は2018年9月24日まで)、これがかなり面白い企画展だった(実は一緒に行ったうちの5歳児少年も、「もう一度見たい」と言っていたので二度行ってきたのだ)。

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全国にある、もしくはあった岡本太郎パブリックアートについて、主にその下絵や原型を展示していたのだけれども、これだけ一堂に会すると実に壮観。さらに設置場所などをまとめた全国地図などを見ると、今度そちらに行ったらぜひ見てみたいな、と思ったりする。

岡本太郎美術館では、太陽の塔リニューアル記念「街の中の岡本太郎 パブリックアートの世界」という企画展をやってました。これだけまとまると壮観だな。 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

この企画展は、先日から続く「太陽の塔リニューアル」を記念した一連の企画展の1つではある。しかし目録にも記載されているが、旧東京都庁の壁面を飾っていた岡本太郎の壁画が、新都庁移転のために壊されることが決まった時に、保存に向けての運動があったが、岡本太郎自身はそれには無関心だったというエピソードが面白い。現在では石膏で無着色のレプリカのみが残っており、それがこの企画展でも展示されている。

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ちなみにうちの少年、この彫刻が気に入ったようで、前で真似して何度もポーズをとっていた(写真も撮ったけど省略)。彼にいろいろな作品の感想を聞くのは結構面白い。まあ、本当は太郎の父・一平の墓碑なんだけれどもね。

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これは最初期のモザイク作品らしい(左はその元となった原画)。美しいモザイクタイルを作っていた伊奈製陶(現LIXIL)に依頼して作成した実験作的な作品で、太郎本人の手によるものではないとのこと。

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そういえばこの青山の「こどもの樹」だけれども、「こどもの城」閉館で結局どうなったんだろうね、と思って調べてみたのだけれども…。

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なんかまだ宙ぶらりんの状態で現地にある模様。良い形でどこかに移設するなり、再開発後の施設で活用されるなりしてほしいと思う。周りが金属の柵で覆われてしまっているのがちょっと悲しい。管理できない状態では仕方がないのかも知れないけれども。

そういえばパブリックアートと言えば、最近ヤノベケンジ氏の作品「サン・チャイルド」が福島市の公共施設前に設置されて物議を醸している、という残念なニュースが気になっている。この記事の写真は、表参道の岡本太郎記念館で展示されたときのものと思われるが、いろいろとこの方面とも関わりがあるようで興味深く、Twitterなどで交わされるいろいろな意見を読んだ。

news.livedoor.com

個人的には、作品が作られた2011年と現在の2018年の環境は大きく異なっており、この作品を現在、創作過程の文脈知識なしにいきなり福島市の街角で見た時に、反発や嫌悪を受けるのはある程度仕方がないと思う。とは言え、色々と不幸な行き違いがあった結果の事件だと思うので、ヤノベケンジ氏のコメントに対して「言い訳」と批判する人もいるようだけれども、自分はそうは思わない。

ただ、Twitterで散見された「文脈を知らないで語るな」というのはパブリックアートにはそぐわない擁護だと思うし、ましてや「ろくにアートを知らないやつが語るな」的な擁護(?)意見は、岡本太郎だったら絶対に言わなかったんじゃないかな、と思うので、同じ人が岡本太郎を援用しているように見えたりするとちょっとモヤるのだ。岡本太郎の作品はうちの5歳児でも優しく受け入れてくれているからな。

ともあれ、メッセージ性という意味ではこの上ないほど凄まじい「明日の神話」が渋谷の雑踏の中、日本を代表する横断歩道を見下ろしながらずっと佇んでいる姿を思い出しながら、パブリックアートとはどういうものか、考えさせられた事件だった。

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ミュージアムショップではこの本を買うか今回の目録を買うか結構迷ったのだけれども、結局目録の方を買ってきてしまったが、この本もとても良さそうだった。

岡本太郎にであう旅:岡本太郎のパブリックアート (Shogakukan Creative Visual Book)

岡本太郎にであう旅:岡本太郎のパブリックアート (Shogakukan Creative Visual Book)

企画展には来れないけれども岡本太郎パブリックアートには興味あるという方には、とてもおすすめの本だと思う。2015年出版のためそれほど古くないから、移転・廃棄になった作品もほとんど無いと思う。

というわけで、この企画展は2018年9月24日までの開催なので、あと約1ヶ月。興味のある方はぜひ。