毎週楽しみに見ていた「終末のイゼッタ」がついに最終回を迎えてしまいました。そもそもこのアニメを見ようと思ったのは、事前のPVがなんか面白そうだったのもあるのですが…。
実は一番の決め手になったのは「音楽:未知瑠」の文字。
私が未知瑠さんを知ったのは、4年ほど前だったかな。たしか初台あたりのギャラリーでやっていたもんちほしさんの個展のBGMに素敵な音楽がかかっていたので、もんちさんに「この音楽、何ですか?」と訊いたところで紹介されたのが、この未知瑠さんの1stアルバム「World's End Villege ー世界の果ての村ー」だったのでした。
World’s End Village- 世界の果ての村 - (通常盤)
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Twitterとかでイゼッタの音楽面での反響を読んでみると、菅野よう子さんや梶浦由記さんを連想する人が多いようですが、当時私が聴いたときに真っ先に連想したのは、私が昔から大好きな北欧のラジカルトラッド系の音楽でした。VärttinäとかGjallarhornとか、大好きなんですよ今でも(そういえば俺の大好きな矢野絢子さんもライブ会場のSEによくVärttinäを使っていて、実にいい趣味でありますね…とか思っていました)。
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あるいはコーラスの響きから連想するのは、これまた以前から好きだったAdiemusだったり。なんという私のツボ!ということで、一気にファンになってしまいました。
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そんなわけでそれ以来、未知瑠さんのアルバムはその後ずっとお気に入りで、結構な頻度で聴いていたのだったりします。そんなアーティストさんが初めてTVアニメの劇伴やるって、そりゃ見ないわけにはいかないでしょう。そんなわけで2ndアルバムも素晴らしいですし、…
- アーティスト: 未知瑠
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そしてもちろん「イゼッタ」のサウンドトラックは必携ですね。未知瑠さんだけではなく、ギターの西川進さんとかピアノの紺野紗衣さんとか、私の好きなミュージシャン達が関わってくれているのもとても嬉しい。
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イゼッタの音楽に関しては、こちらの記事がとても面白かったので紹介しておきます。
起用の経緯とか、「普通の劇伴」ではなくオリジナルアルバムの基本に戻った音作りをした件とか、古楽器やブレスの使い方とか、西川進さんのギターがほとんど即興である点とか、実に面白い。「ライフルの翼」は特にブレスや西川ススムンギターなどがいい感じで絡んでいて、大音響で聴くとすごい迫力です。
…さて、音楽の話はこれくらいにして、アニメの内容の方に話を戻します。これからはネタバレがあるので、もし未見でネタバレしたくない方面の方は、ぜひ適当なところで先に全部見ていただいてからお読みすることをオススメします。
色々と賛否両論ありそうなこの「終末のイゼッタ」ですが、全部見終えて思うのは、やっぱり俺はこれ大好きだわ、ということです。まずはモチーフ。ドイツ語圏大好きだしWW2欧州方面とかの歴史とかも大好きだし、そんな中で現れる「魔女」は、はからずも数十年後の軍事技術を先取りした「超兵器」として出現することになります。
国は全部架空の名前ですが、
- ゲルマニア帝国 = ドイツ
- ヴェストリア = スイス
- ロムルス連邦 = イタリア
- テルミドール共和国 = フランス
- ブリタニア王国 = イギリス
- アトランタ合衆国 = アメリカ
- リヴォニア = ポーランド
- ヴォルガ連邦 = ソ連
- 旧ノルド王国 = ノルウェー
みたいな感じでまあどうみても実在の国がモデルなんだけど、ドイツはナチスの毒気をだいぶ抜いておきながら、ヒトラーとだいぶ雰囲気の違う皇帝は「ノイエ・ベルリン」という名前で「世界首都ゲルマニア」を完成させているうえに、テクノロジーに巨額の投資をして、なんと数百年前の人間のクローン技術まで完成させている。
By Bundesarchiv, Bild 146-1986-029-02 / CC-BY-SA 3.0, CC BY-SA 3.0 de, Link
世界首都ゲルマニア - Wikipedia
そんななかで唯一架空の国が、この物語の主要な舞台となるエイルシュタット公国で、地方としてはリヒテンシュタイン+オーストリア西部(主にチロル地方)なのですが、こんな小国があのWW2の時代に、ある意味核にも匹敵する超兵器を手にしてしまった…が、量産はできず、使える場所も実は限られる…的な架空戦記でもあるわけです。そういう意味では「ジパング」的でもありますね。
そして妙に軍事考証がマニアックで、当時の実在兵器がわんさか出てくる上に、どう見てもグラーフ・ツェッペリンな空母が出てきたり、V1が超兵器に改造されていたり、V2に至っては最終兵器に改造されていたりと、実にドイツの科学力は世界一的な感じで頑張っていて萌えまくれる感じ。
あと、エイルシュタットの首都ランツブルックはどう見てもインスブルックだし、多分何年か前のフットワークの軽かった俺なら多分今頃インスブルックに聖地巡礼に行っていたと割と本気で思う(ちなみにオーストリア航空とチロリアン航空は以前のとある経験の件で俺的にイメージが良いのです)。いや冬はちょっと避けるかもな…。それはともあれ、架空の国であるエイルシュタットが、非常に魅力的にアルプスの小国として描かれたいたのが実に良かったと思います。いつかインスブルック行きたいですね。もう、行けなくてもインスブルックとチューリッヒとベルリンをめぐる仮の妄想ツアーの旅程を組んでしまうくらいアレですよ(笑)。
Von Pahu - Eigenes Werk, CC BY-SA 3.0, Link
Innsbruck – Wikipedia
さらに3話で実に「いい最終回だった」っぷりを見せてくれたケネンベルグもモデルがちゃんと存在しているし、ここも行ってみたいなぁ。アクセス悪そうだけれども。
Von Cinedoku Vorarlberg - Eigenes Werk, CC BY-SA 3.0, Link
Kummenberg – Wikipedia
まあ、これは本編最後の展開に関わってくるんだけれども、やっぱり仮にヨーロッパの小国が1941年に偶然核兵器を開発して、派手なデモンストレーションとともに「抑止力」としての使い方を始めたとしたら、「終末のイゼッタ」のストーリーそのままにアメリカとドイツは動いた可能性は十分あると思うんだよね。だからこそ最終回でどんな展開を用意しているのかは気になったんだけれども、「資源の枯渇」という20世紀後半〜今世紀の概念的な解決を見せてくれたのは実に新鮮でした。そう来たか、的に。
大国として当然の論理で「魔法」に対応するアメリカと、軍事国家としてこれまた当然の論理で「魔法」を利用するドイツに対して、それらの論理を完全に理解しつつ対抗するフィーネ様とその背後で戦うイゼッタ、素敵すぎました。
そして1941年暮れを待たずしてWW2の欧州戦線が決着したら、太平洋戦争はどうなるんだ的な。そういう意味も含んでの1941年設定なのかも知れないけれども、そういうキーポイントの年を持ってきている点は、実に日本の作品なのかなぁ、と。
ともあれ、尺が短い故かもしれないけれども、時々起こるご都合主義的展開は…的なものは私も感じてはいるんだけれども、まあそういうのはなんとかギリギリ自分的基準(上に挙げたような要素があるので割と基準が甘くなる)をクリアしていた感じ。たとえば、ヨナス一等兵の例の件がストーリーを変えるキーポイントになってしまっていたら…、と思うと流石にそれはないわ、と思うのだけれども、実際にはそんなことはなかったし、ゾフィーに関しても、ゲルマニア帝国がどこかから見つけてきた別の魔女の末裔だった…、的な話だったらやっぱりそれはないわ、と思った気がするけれども、そういう設定ではなかったし。
まあ、むしろこの内容をよく1クールに突っ込んだな、という感想です。何といっても原作なしのオリジナル作品だしね。「シリーズ構成・脚本:吉野弘幸」の文字を見てかなり不安になっていた私ですが、色々突っ込みどころは多いし、後半は駆け足感は否定できないけれども、やっぱりこれは好きだ、というところにうまく持ってきてくれたので、まあよかったな、と。
あと、個人的にはゾフィーやベルクマンみたいな、自分の感情に正直なキャラクターは大好きなんだけれども、そうは言ってもあそこまではっちゃけた行動は自分では出来ないなぁ、的な感じからも、ジークのキャラクターは色々といいな、と思います。あの最期も含めて。それにしてもこのストーリー、男性キャラには容赦なさすぎですね。その線で、割と細かい部分でいいな、と思ったのは、リッケルトが丁重に葬られていた件かな(おそらくビアンカの指示という設定でしょう)。
ラストはこれまた色々意見がありそうなアレだったけれども、これはいいんだよアレで。どうしてあのラストに至ったかという過程はよくわからないけれども、やっぱりそうあって欲しいものです。1941年の3年後の1944年ならば、史実であればインスブルックを含むドイツ勢力下が連合軍の空襲を受けまくっていた時代でしょう? ならばその平和な風景を本人に見せてやりたいじゃないですか。
ところでベルクマンがアメリカに持参した情報は一体何だったのでしょうね。クローン技術、もしくは核兵器や弾道ミサイルに転用可能な魔法兵器技術? いずれにしてもろくなものではないかとは思いますが、それはそれです。
ともあれ。自分はこういう作品やっぱり好きだわー。
そんなわけで、さすが1クール作品、最初から通しで見てもそれほど時間はかからないということで、もう一度全部見直した上の感想でした。
そういえば13話相当のクリスマス特番、もしかするといわゆる「万策尽きた」場合のバッファ的な回だったような気もするのですが、フィーネ役の早見沙織とイゼッタ役の茜屋日海夏がただ喋っているだけの番組になるかと思いきや、円盤おまけの抽選券を「エイルシュタット戦時国債」と名付けたことから実に面白いビンゴ大会と化していて、「戦時国債」を買った者としてはかなり楽しめました。
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特にドロテ(犬)役の麦穂あんなさんのサインの件とか、「ゲルマニアに行ってきました」「エイルシュタットに行ってきました」お土産とかは大爆笑して見てしまいました。こういうおまけ番組もなかなかいいですね。でも私の「戦時国債」はやっぱり紙くずと化したけど(笑)。この「戦時国債」、無駄にそれっぽく作ってあってよかったと思います。
円盤のオーディオコメンタリー、茜屋日海夏と早見沙織の主演声優2人と軍事ディレクションの柘植優介氏(月刊PANZER)という謎の組み合わせで大丈夫か、と思ったのですが、思いの外面白かったな。たとえば軍服の設定に関するトークとか、実に細かい。それにしても、飛行機のエンジン音に実際の音声データを使っているとは思わなかった。2巻以降もこのメンツでいくのかな? あの3話にどんなオーディオコメンタリーがつくのか楽しみです。
ともあれ、2巻以降のどこかで、未収録BGMや未知瑠アレンジの「魔笛」を収録したCDを入れてくれないかなぁ、と願っていますが、今のところそんなおまけはないことになっているんだよね。
追伸:それにしてもあらためてもう一度通しで見て、ドロテ(犬)の演技、すごいですな。麦穂あんなさん、いろんな動物役をされているのですね。
さらに追記:結局2016年アニメ私的2位、ということにしました。