xckb的雑記帳

身の回りにあったことを雑多に語ります。

久々の上野:「生誕300年記念 若冲展」と「黄金のアフガニスタン」

なんか最近上野に何度も行っているんですよ。横浜に住んでいると、ちょっと上野って遠いなぁ的感覚があって少々足が遠のいていたのですが、ここ最近立て続けに上野に行ったのは、次の3つのイベントのためです。

(この写真は若冲展の入口近くにあったデジタルサイネージ若冲)
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まず、若冲展に関しては、本来同時に展示するように描かれた「動植綵絵」全30幅と「釈迦三尊像」が初めて東京で同時に展示されるという企画。動植綵絵釈迦三尊像の同時公開は、相国寺承天閣美術館で2007年に開かれた「若冲展 釈迦三尊像と動植綵絵120年ぶりの再会」で既に一度体験していて、なおかつ動植綵絵全30幅のみならば、国立博物館で2009年に開かれた「皇室の名宝」展で東京で見ているわけですが、釈迦三尊像動植綵絵を組み合わせた形での東京での初公開、ということで、これはなんとしても見に行かざるをえない、という感じだったのです。

本当は前期展示と後期展示の両方に行きたかったのですが、GW最終日の5月5日に行った時にいきなり炎天下2時間待ちということでリタイアし、渋谷タワレコのカバネリ展に行ったのですが、その後連休中のテレビ効果もあってか列の長さは長くなるばかり。ついに炎天下やら土砂降りやらで5時間待ちとか何そのサバイバル大会的な状況になってきたこともあり、前期展示に行くことは諦めました。前期限定のわんこが見られなかったのは残念だったけど…。

ちなみにそのわんこはこれ(「百犬図」)。

でもまあ、後期は後期で見たい野菜(「果蔬涅槃図」)があるし…ということだったので、後期にターゲットを絞りました。

そんなわけで、5月19日(木)の早朝に家を出て、朝7時過ぎに並んだのでありました。その時点での人混みはこんな感じ。もう結構並んでる。

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結局早めに人を入れだしたこともあり、約2時間弱で会場に入ることができました。その日の待ち時間は昼ごろだとやはり5時間くらいだったので、まあ、成功だったと言えるでしょう。

展示の感想ですが、一言で言えば、「今まで見た集大成的で最高に良かった!」ということに尽きます。相国寺で見て以来の動植綵絵釈迦三尊像の組み合わせに関しては言うまでもなく、「野菜」や見たことなかった「野菜の巻物」(「菜蟲譜」)もとても良かったし、「象と鯨図屏風」なども展示されている。さらにプライスコレクションの一部までも含む恐ろしく網羅的な展示を、かなり近い距離で見られたのは実に満足でした。動植綵絵釈迦三尊像は、丸く作られた空間に配置されていましたが、こんな感じでじわじわ最前列で見て回りました(いやもっと混んでいたけど)。最高すぎる。

それにしても、前に見た時も思ったけれどもこの「動植綵絵」の保存状態は本当に凄すぎる(修復作業の技も物凄いんだと思うけど)。とても250年前の絵とは思えない色鮮やかさ。最前列で見て回りながら、異様に記憶に残ったのが、「老松鸚鵡図」の左の鸚鵡の目が、私の見ていた角度から「キラリ!」とものすごく光って見えたこと。なんか光の当たる方向によって面白い仕掛けがいろいろあるんだろうなぁ。

そんなわけで、ユニセックスに使えそうな「貝甲図」のトートバッグやら酒やらのおみやげを買って帰ったのでありました(本当は「牡丹小禽図」とか、グッズのデザイン的に最高だと思うんだけど、さすがに街中であれを持つにはちょっとフェミニンすぎる…)。

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というわけで、混雑に負けず(いや負けたから早朝に行ったのか…)、頑張って行ってきてよかった! という若冲展でした。

さて、若冲展に行った時に気になったのが、同時期に国立博物館で開かれていた(今週末までやってる)「黄金のアフガニスタン」。聞けば、タリバンの破壊や戦乱に伴う略奪でカブールの国立博物館の7割の美術品が破壊や略奪にあったとか。そんな中で、博物館の職員が多くの美術品を隠し、戦乱が収まるまで隠し場所などの秘密を守りぬいたために残った貴重な美術品が展示されているとのこと。それは行くしかないでしょう。

なんかそういう奴らの話を聞くと泣けてくる。相手はあのバーミヤンの大仏も平気で爆破したタリバンだよ。本気で命をかけて守ったんだろうな…。

そんなわけで6月5日の日曜日の朝、国立博物館にやって来ました。会場の建物の入り口には「自らの文化が生き続ける限り、その国は生きながらえる」との文。再建されたカブールの国立博物館の入り口のところに刻まれている文章だそうです。こういう人々が言うと言葉の重みが違うよ。

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展示されている貴重な品々は、ヨーロッパや中央アジア、インド、中国に至る様々な文化が交じり合って生まれ残された、まさに人類の宝と言ってもいい品々でした。

なんか、他のお客さん(特に女性の方々)が語っているのが聞こえて、非常に同意したのは、特に装飾品などは(2000年ほど前の作品であるにもかかわらず)、今そのまま売られていたとしても、そう違和感のないものが多いこと。

ハート型の意匠も多く使われていて、あれ、ハート型っていつごろ生まれた文化なのだろう、とか考えてしまいます(そういえば若冲の鳳凰の羽根のハート形も実にキュートでしたよね)。このイヤリングなんかも、デザインが2000年近く前のものとはとても思えない。そんな昔のアフガニスタンに、これだけ洗練された文化があったのだなぁ、と感慨深くなります。

これは男性のベルト。金糸で編まれている。まあ、副葬品なので実用品ではないと思うけれども、それでもすごい。

このガラスのコップとか、いまでもちょっと小洒落たブランド食器として売っていそうだよ。なんなんだよこれで2000年近く前の作品って。それにしてもよく守りぬいたなぁ…。

こちらの青銅の何か。実は物凄い仕掛けで、砂漠の真ん中でも豊かな水に泳ぐ魚たちを妄想できるおもちゃ的な感じ。復元されたものが隣に置いてあるので、それを揺らすと分かるんだけれども、魚のヒレが実に絶妙な周期で揺れてキラキラ光る。単純な仕組みながら実にリアル。

なんというか、こういうものを命をかけて守ろうとした奴らがいたんだなぁ、というだけで、なんか怖い場所的なイメージだけだったアフガニスタンにも、だいぶ親近感も感じるようになれた気がしました。やはり美術品というものは外交使節でもあるんだなぁ、とあらためて思いました。今週末の19日(日)まで開催しているので気になった方は是非!

さて、こんな「黄金のアフガニスタン」を見たらこちらも見なければならないのが、近所の東京藝術大学大学美術館・陳列館で開催されていた 『「素心 バーミヤン大仏天井壁画」~流出文化財とともに~ 』です。こちらは撮影可だったので自分で撮った写真を載せます。

会場の1階にはアフガニスタンから日本に流出した流出文化財の展示。

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今回展示された流出文化財の経緯はこんな感じです。

2001年、バーミヤン大仏がタリバンの手で爆破された直後から、東京藝術大学学長であった故平山郁夫画伯は海外へ流出したアフガニスタン文化財保護を国際社会に訴え、自らも「流出文化財保護日本委員会」を組織し、ブラックマーケットなどを通じて日本に辿り着いたアフガニスタン流出文化財を「文化財難民」として保護・保管活動を始めました。このとき集められた流出文化財は、102点に上ります。
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アフガニスタンから流出し日本で保護・保管された「文化財難民」は、東京藝術大学の手で一部保存修復の措置が施され、母国帰還のチャンスを待っていました。「流出文化財保護日本委員会」は、アフガニスタン政府の閣僚級の要人を招聘し、「文化財難民の母国返還式」を執り行うことを決定しました。
(出典: http://www.geidai.ac.jp/museum/exhibit/2016/afghanistan/afghanistan_ja.htm)

今回は国立博物館の方に15展、こちらの会場に87点が展示されています。海外に違法に流出していたが故に、結果的にタリバンから生き残ったというところに、文化財の保護の難しさを感じますね。

会場の2階は、なんと破壊されたバーミヤンの大仏の天井画を実物大で復元した展示。そして目の前には、実際に現地で撮った4K画像の大仏からの景色が投影されています。天井の凸凹も再現され、もともと剥離していた部分もそのように再現されているようです。藝大の方でこれらの壁画の再現技術が開発されているようで、失われた文化財の修復にこういう技術が役立つと嬉しいですね。

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ちなみにTHETA Sで撮影した全天周写真はこちら。凄い展示でした。

バーミヤン大仏天井壁画の復元展示。 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

この2階の両脇にも、流出文化財の一部が展示されていました。無事にアフガニスタンに戻って、博物館で再び公開される日が早く来るといいですね。そして気軽にカブールにで旅行できて、そこでまた見ることができるようになったら素敵だなぁ、と思います。

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こちらも今週末の19日(日)までの開催です。オススメですので是非!