xckb的雑記帳

身の回りにあったことを雑多に語ります。

「上伊那ぼたん」に出てくる8ミリフィルムカメラで、寮のモデル地を撮影してみよう!

さて今回は「上伊那ぼたん、酔へる姿は百合の花」第5話EDに出てきた8ミリフィルムカメラ(1977年モデル)をジャンクで手に入れて、同作品における寮のモデルである「雑司が谷旧宣教師館」に持っていき、昭和40年代の大衆向け動画テクノロジーを使い、令和の現代で撮影、現像、編集するまで、という話だ。

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画質はこんな感じ。8ミリという非常に小さなフィルムから再生される動画は、現在の基準からは考えられないほど粒子が粗く画質も良くない上に短時間の撮影しかできず、現像コストも非常に高いが、それでも独特の味があって良い。贅沢な趣味である。きっと郡上先輩が持ち込んだガジェットであろう。

ということで今回の目次。

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「上伊那ぼたん」と8ミリフィルムカメラ

2026年春アニメ「上伊那ぼたん、酔へる姿は百合の花」、実にいいよね。特にあのオープニングは衝撃だった。18fpsの動画に4:3の構図(放送時は16:9になってるけれども、YouTubeに載ってるオリジナルは4:3)に程よい手ぶれという、1970年代に流行った、8ミリフィルムカメラの手持ちを意識した絵作りはとても素晴らしかった。

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さらに5話のエンディングでは、そのオープニングにつながるような、郡上先輩が持ち込んだと思われる8ミリフィルムカメラを撮影する様子が含まれていて実に良かった。

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ともあれ、ここまではっきりと画面に出てくれば、機種くらいは特定できるわけで…。

出典:「上伊那ぼたん、酔へる姿は百合の花」第5話ED(©塀(秋田書店)/上伊那ぼたん製作委員会)

ELMO SUPER 8 SOUND 350SL

これはELMOのSUPER 8 SOUND 350SLだな。というわけでジャンクで約3,000円で売っていたところを、クーポンなどが2,000円ほどあったので、差し引き1,000円ほどで手に入れてみた! ここまでは安いんだけれどもな…。

ジャンクなので動作は非保証、ということではあるが、そもそも動作をチェックするには電池を入れ、さらにフィルムを入れて撮影、現像しなければわからないわけで、3,000円で売られるものにそんなコストがかけられるはずはないということもあり、動く可能性を期待して買ってみたわけだ。

そんなわけで、グリップのところに単三乾電池を6本ぶち込んでみた。9Vか(写真の電池4本の奥に、2本隠れている)。

うん、見た感じ動いているな。これはちゃんと動く気がする。

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ちなみに自分はスーパー8の8ミリフィルムカメラに関しては、かつて少し使ったことがあるので、マニュアルとかなくても特に問題なく使えるわけだが、そのあたり全く未体験だと135や120の静止画フィルムカメラよりも少し、ハードルが高いかもね。

まあフィルムの装填とかは135や120よりスーパー8の方がはるかに簡単だけれども。フィルムの装填だけは110フィルム並みに楽勝。ISO感度も自動設定だし。

ジャンクなので仕方がないのだが、アイカップは腐って分離していたし、ストラップは付属していなかった。アイカップは比較的どうでもいいのだが、ストラップはあった方が良いと思われたので、純正とよく似たデザインと思ったハクバのKA-N61という安いストラップを買って取り付けた。

令和8年の8ミリフィルム事情

さて、自分がかつてスーパー8のフィルムを使った頃からすでに、VHS-Cや8ミリビデオ等のビデオカメラに押されて、8ミリフィルムは風前の灯状態だったわけだけれども、令和8年の現在ではさらにその状況は進み、本当にいつ使えなくなってもおかしくないギリギリのラインまで後退している。

そもそも昔から、スーパー8のフィルムは一巻き50フィートで3分30秒しか撮影できなかったのと、フィルムサイズによる非常に粗い画質と18fpsという粗い動きのため、1980年代のホームビデオカメラの段階で、すでに映像記録媒体としては全く勝負にならなかった。

とはいえ最近では、その「粗さ」を表現として味わう動きもあるようで、商用のMVなどにも8ミリフィルムカメラが利用されたりすることも増えているようである。

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まずフィルムについて。8ミリフィルムにはシングル8、スーパー8、ダブル8が主な規格だったが、シングル8はほぼ完全に絶滅してしまった。ダブル8も元々カメラ自体が少なかったのでなかなかしんどい状況の模様。ということで、スーパー8が唯一、ある程度今でも使える状況にあるようだ。

かつてはスーパー8と言えば、コダクローム(カラーのリバーサルフィルム*1)が定番のフィルムだったように思うが、ちょっと特殊な現像法が必要だったこのフィルムは、今では世界中のどこにも現像できる場所がない。

もっとも、コダクロームのフィルム自体は白黒リバーサルフィルムに近いらしいので(現像時に後から色素を入れるタイプのフィルムなので、たしかにそうなのかもしれない)、白黒での現像はできないことはないようだが、あまり意味はなさそう。

同じくカラーのリバーサルフィルムだが、フィルム自体に色素の入っているエクタクローム(Kodak)は、まだわずかに残っている模様。だが高い!

白黒のリバーサルとしては、Kodak Tri-X(この名前はネガフィルムのイメージなのだが)が残っているようだ。

映像の質感などの理由で、いまだにデジタルではなくフィルムで撮影する商業映画も多いようだが、昨今の映画の撮影に利用されるフィルムはネガフィルムが結構増えているらしい。これは撮影はフィルムで行うが、編集プロセスはデジタルで行うということから、フィルム自体がポジ(リバーサル)である必要がなくなってきていることも一つの要因らしい。

かつては、撮影したフィルムを映写機でスクリーンに投影していたため、フィルムがポジである必要性が高かったのだが、フィルム自体を切ったり貼ったりして編集していた昔と違って、今は編集は全部デジタルで行うので、アマチュアレベルでもポジフィルムである積極的な理由は存在しないんだよな、ということで(コントラストや彩度がポジフィルムの方が高いという理由はあるかもしれないが)。

ということで、今回はそのような映画用ネガフィルムである、Kodak VISION3を利用してみることにした。ISO500*2とISO200、ISO50のバージョンがあるようだが、こちらはISO200のもの。

Amazonではなぜか今欠品しているのでヨドバシカメラから。ポジフィルムのエクタクロームに比べて半額程度である(それでも7,000円以上するけれども)。
https://www.yodobashi.com/product/100000001009727527/

このフィルム、ネガである上にタングステンフィルム(電球光での撮影を想定したフィルムで、太陽光下で撮影すると青くなってしまう)なので、通常の光源で撮影するにはアンバーの色補正フィルターが必要なのだが、カメラの方に色補正フィルターは入っていて、デイライトモード(太陽マーク)に合わせると色補正フィルターが入り、タングステンモード(電球マーク)に合わせるとフィルターが解除されるようだ。ただし感度はISO160に落ちてしまう。

モルトプレーンの応急補修

レトロなフィルムカメラで気をつけなくてはならない定番ポイントの一つが、モルトプレーンの状態である。多くの場合は加水分解でボロボロになっているため、交換する必要がある。

このカメラも、フィルムを入れる蓋の3箇所に、かなりボロボロになったモルトプレーンが残っていた。差し当たって一番影響が大きそうな、フィルム確認用の窓の部分(左写真)は、応急処置でスコッチテープを貼った上から黒のビニールテープで覆い、光の侵入を防いだ(右写真)。まあ見栄えはともかく、これで撮影はできると思う。

ちゃんとした補修については後述する。

実際の撮影とレンズの限界

さて、モルトプレーンの応急処置を行なったカメラを持って「上伊那ぼたん」の寮のモデルである「雑司が谷旧宣教師館」にやってきた。

なお、ここでの撮影に関しては入口のところに注意が貼られているので、撮影の前に一読しておくことをお勧めする。要約するとこんな感じ。

  1. 壊れやすいものに寄りかからない
  2. 展示物や調度品を動かさない
  3. ストロボ、三脚やレフ板などの撮影機材は利用禁止
  4. 場所を占有する可能性のあるポートレート(モデル)撮影は禁止
  5. 集合写真は屋外で

さて、OP中に頻繁に出てくる広角アングルだが、このカメラ(ELMO SUPER 8 SOUND 350SL)では撮影できないことがわかった。たとえばOPに出てくるこれらのアングルに寄せて撮ったこれらの写真は、いずれもフルサイズ換算で焦点距離28mmに相当する。

出典:「上伊那ぼたん、酔へる姿は百合の花」OP(©塀(秋田書店)/上伊那ぼたん製作委員会)

ところが、ELMO SUPER 8 SOUND 350SLのレンズは9〜27mmのf1.2(明るい!)であり、8ミリフィルムカメラのレンズは、フルサイズ換算すると概ね5〜6倍程度で計算すれば良いらしい。したがって、概ねフルサイズ50〜150mm程度に相当するため、一眼レフ的にいうと標準〜中望遠ズームであり、28mm相当のカメラアングルなどは撮影することはできない。

ちなみに、OP最大の超広角アングルはこのシーンである。おそらくフルサイズ画角21mmか24mm程度と思われる。絶対このカメラでは撮影できない。


出典:「上伊那ぼたん、酔へる姿は百合の花」OP(©塀(秋田書店)/上伊那ぼたん製作委員会)

とりあえず、3分30秒撮り終えたらモーターの音も変わり、フィルムにも「EXPOSED」の撮影済みマークが出たということで、どうやらある程度正常に撮影はできた模様。

まあこれでも現像しない限りどの程度ちゃんと撮影できているかは不明だが、まああとは現像が楽しみだ。

令和8年の8ミリフィルム現像事情

先述の通り、昨今のMVなどでの8ミリフィルムのプチ復権を受けて多少は状況が好転しつつあるのかもしれないが、8ミリフィルムの現像を受け付けるところは少なくとも国内に数箇所見つかった(海外に現像を出されると、フィルムが感光する可能性のあるX線検査を通す場合があるから不安なんだよね)。今回はその中でも老舗っぽい「レトロエンタープライズ」さんに現像とデータ化をお願いすることとした。

www.retro8.com

ネガフィルムの現像とSD動画データ化(クラウドストレージ渡し)で、約10,000円でやっていただけた。郵送でも受け付けているが、レターパックなどの料金は自己負担となる。詳しくは上記サイトからメールなどで問い合わせてみると良いと思う。

動画データは、ネガフィルムの場合はネガのままで明暗反転画像であるため、デジタルの後処理で反転させる必要がある。また、動画ファイルは18fpsではなく通常の29.97fpsであることには気をつける必要がある(18fpsのファイルは仮に生成できても編集に使いづらそうなので、29.97fpsであることに異論はない)。

かつて8ミリフィルムは、このような装置(スプライサー)を使って、物理的にフィルムを切断、接着して編集を行っていたが、細かい編集が難しく、接合部の画質も悪化するため、デジタルでノンリニア編集がアマチュアレベルで常識となっている現在となっては物理編集を行う意義はないだろう。


出典:8ミリフィルム用ロールテープスプライサー/LPL【テープ1巻/マニュアル付】 | DIY digital-write

編集とネガポジ変換(PhotoshopでのテストとPremiere Proでの編集)

さて、現像から仕上がってきたネガフィルムはこのような状態である。フィルムに色がついているし、階調も緩い。単純にRGBを逆転すれば良いというものではない。

ちなみに単純に反転させるとこんなふうに真っ青な画面になってしまう。

なお、Photoshopの「トーンカーブ」には「カラーのネガ(RGB)」というプリセットがあるのだが…。

これをそのまま適用するとこんな真っ暗な画面になってしまう。

この状態になってから明るさを調整しても、やはり無理があるのだ。

そこで、RGBそれぞれのチャネルに合わせた感じのカーブを作り…。

それらを合成することで、だいぶそれっぽい色に近づけることができるのだ。

このトーンカーブで作成したポジ画像はこんな感じである。これを微調整するとさらに良くなると思う。

ということで、Premiere ProのLumetriカラーで、似たようなトーンカーブを作成して…。

これを使って編集すれば良いようである。ちなみに上のようなトーンカーブを適用することから階調情報が浅くなるため、できるだけ情報ロスを防ぐために、一度ネガポジ変換をした動画ファイルを作ってそれを編集するのではなく、トーンカーブを適用した動画をそのままカットに切り分けて、各カットに色の微修正を加えるやり方で編集を行った。

おそらく、エクタクロームのポジフィルムを使うと階調情報が浅くなることを防ぐことができるかと思われるけれども、フィルムが倍くらい高いんだよね…。

ということで、完成したのがこちらの動画である(この時点ではまだVer.1)。トーンカーブはさらに改良を加えたので、この先も見ていただきたい。

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モルトプレーンの補修

さて、最初の撮影では応急処置で仕上げた腐ったモルトプレーン対策だが、どうもちゃんと撮影できるカメラであったようなので、きちんとモルトプレーンを補修してあげることにする。モルトプレーンは大型カメラ屋さんやAmazonとかで普通に売ってる。

とりあえずフィルムの蓋の部分で3箇所モルトプレーンが腐っていて、上の部分は厚さ2mm、下の部分は厚さ1mm、真ん中のフィルム確認窓の部分は厚さ3mmのモルトプレーンを切って、貼り付けてみた。

あまりこの手の工作は得意ではないけれどもまあなんとか補修できたかな。次に撮るときには応急処置なしで撮ってみよう!


ネガポジ変換トーンカーブを改良する

(この章は2026年6月18日追記した)

Ver.1を作ったところで、ネガカラー的にはそんなものとも思うのだが、ちょっと色がまだくすんでいる感じが強いよな、と思ったので、もう少しちゃんとトーンカーブを作ってみることにした。まずは再びPhotoshopでの実験。

Ver.1のときに作ってみたテスト画像がこちらだが、これより動画の方はさらに鈍い感じになっている。

そこで、Photoshopの段階で、さらにネガポジ変換のトーンカーブを攻めてみることにした。こちらが元のネガのデータである。

まず、上記の元画像のヒストグラムはこんな感じだ。3つの山があるが、これらがそれぞれ左から、青、緑、赤の3色に対応している。

そこで、RGBの各チャネルにおいて、これらをさらにシビアに、山の裾野をほんの少し余裕を持って囲む感じで明暗反転のトーンカーブを書いてみる。

出来上がったトーンカーブ全体はこんな感じとなる。

これによって仕上がった画像はこちらだ。

Ver.1のトーンカーブでの出力結果(左)と比較してみるとこんな感じ。明らかにコントラストや彩度などが向上している。

この結果をベースに、Premiere ProのLumetriカラーで同様のトーンカーブを作ってみた。

大まかにカーブを描いたあとは、LumetriスコープのRGBヒストグラムグラフと生成結果のカラーバランスなどを見ながら、調整した。今回は、カットごとの色の微調整などはあえて行わず、同じ設定で全カットを変換した。

こうしてできたのがVer.2である。

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Ver.1とVer.2をほぼ同じシーンで比較するとこんな感じである(上がVer.1で下がVer.2)。全体的に明るくなっただけではなく、色がよりはっきりと出るようになったように思う。さらに昔のネガカラープリントっぽくなった気がする。



…ということで上伊那ぼたんはいいぞ! そして4:3アングルを楽しもう。見切れもアートだ。


出典:「上伊那ぼたん、酔へる姿は百合の花」第5話ED(©塀(秋田書店)/上伊那ぼたん製作委員会)

*1:リバーサルフィルムは、光が当たった部分が薄い色になるフィルムで、そのまま映写機で投影することで映像を見ることができるが、ネガフィルムは光が当たった部分が濃い色になるフィルムなので、色を一度反転させないと、映写機で投影しても明暗反転画像が見られるだけである。

*2:ISO500のフィルムは、かつて存在しなかった高感度フィルムであるため、カメラ本体でのフィルム感度の自動設定が働かないので、絞りによる自動露出調整が正確にできないらしいことに注意が必要