xckb的雑記帳

身の回りにあったことを雑多に語ります。

スタートで転倒するもまさかのトップで今期を折り返す「けものフレンズ」(第4〜6話まとめ)

前回「けものフレンズ」に関して書いたのが1月28日だったのだけれども、それからわずか2週間ちょいで、今や「けもフレ」は恐ろしいくらい大流行してしまい、Twitterを見れば定型文のように「〜なフレンズなんだね」が続出する始末。もうびっくり。

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Amazonでは円盤付きガイドブック第1巻が書籍総合1位を取ったとか取らないとか、もはやパンデミック状態。これはもしかして生産量の割に売れすぎて、後からは手に入らないのではないか…的な恐れで深夜アニメの円盤を早々に全巻予約したわけだけれども…こんなの後にも先にもやったことないわ。

(2017年5月10日追記)
GWに佐渡のトキの森公園に行ってきました。野生のトキさんにも遭遇。
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そんなわけで前回書いた後も4, 5, 6話と見てきたわけなのだけれども、4話でただならぬ世界観の片鱗をがっつり出してきた後は、5, 6話で日常回的に流しながら、ちょいちょい小ネタをぶっ込んでくるという、実にいい感じでストーリーが進んでいる。そして来週の7話ではついに「じゃぱりとしょかん」に到着する模様。てっきり最後あたりに図書館に着くのかと思ったら、図書館への到着が全体の折り返し地点だったとは。ということは、今後何が起こるのか…と、なお楽しみ。

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(それにしても6話で夢見ヶ崎動物公園を出してくるとは、地元民としてはなかなか感激。残念ながらここが日本で唯一飼育していたらしいヘラジカは、4年ほど前に亡くなってしまい、今はもういないようだけれども…残念)

それにしてもこれだけ「けものフレンズ」が一大ブームになってあらためて考えるところもある。「けものフレンズ」は、実に面白く計算されているアニメだと思うのだが、一方でそもそもメディアミックスとしてどういう姿勢で考えられていたのかよくわからないチグハグ感がなんとも気になるのだ。そもそも、少なくともアニメに関しては、本気で売ること考えていたのか疑わざるを得ない的な状況証拠がたんまりあって、色々と謎すぎる。

nlab.itmedia.co.jp

たとえば、これだけヒットしてしまったのにもかかわらず、関連グッズがガイドブック(実質上、円盤)とOP, ED曲という、ある意味どんな零細深夜アニメでも用意しているような最低限のものしか用意されてない(どれもバカ売れだけれども)。メディアミックスのはずのゲームはアニメ開始直前で終了し、もう一つのメディアミックスの漫画はアニメがヒットし始める直前に最終回。ついでにラジオまで毎週から隔週化され、上に紹介した記事でねとらぼに

状況から察するに、おそらく「けものフレンズプロジェクト」はうまくいっていなかったのではないかと思われます。ゲーム版と漫画版が終了してしまった今、アニメの放送も終わったらひっそりとプロジェクト自体を畳んで終わり……という流れになりかけていたところに起こったのが今回のフレンズ大フィーバーです。

メディアミックスにおいて、1つの媒体が大ブームになるというのはこれ以上ないチャンス。ここで一気に「けもフレ」ブランドの拡大を狙いたいところですが、既にミックスしていたメディアが全部終わっており広げる媒体がありませんでした。この手遅れ感と無念感、筆舌に尽くし難い。

…な風に書かれてしまう始末。一応商売でやっているんだから、そんなことでいいのかけものフレンズ

そしてこんな状況でも「けものフレンズステマ」とか書いてしまう、「自分の知らない流行ってるものはなんでもステマとか言っちゃうフレンズ」たちもいてなかなかカオス。いや、正直これだけのブームを仕掛けられるステマ職人がいるなら、もっともっと凄腕ステマしてやらないといかん感じのアニメが今期にはあるだろ。たとえばアレとか。そういえばブシロードがこんなチラシを、とかドヤ顔で書いてた人もいたけど、なんだよあの急にせかせか作った感ありありの白黒のチラシ。そもそもけものフレンズの番組中のブシロードのCMさえ「バンドリ」しかやってないじゃん。

そんなわけで、本来のストーリーから少し離れて、この「けものフレンズブーム」を見てみても、なかなかにそれ自体面白い現象であるように思う。幾つかの点に注目して、ちょっとまとめておきたい。

書籍として発売される円盤

今でも「どうせニコ動でミリオン行っても、『がっこうぐらし!』みたいに円盤が売れずに爆死パターンwww」なんて風に言っている人も結構いるけど、いやいやそれは全然違う。

がっこうぐらし!」はたしか円盤1巻の売上が3,000枚くらいだったと思うのだけれども、「けものフレンズ」1巻はAmazon総合書籍ランキングで私が確認した限りで2位(実際には私はその瞬間を見てないけど1位までいったらしい)まで到達しているので、それでたった3,000部レベルとかありえないから。そういえば自分も昔ライター稼業やってた頃にAmazon総合書籍ランキング瞬間2位までならやったことあるけど、あの時は◯万部売れたから(笑)。しかもあの時はAmazonのみの特典とかあったけど、けもフレガイドブックは特典何もないから、Amazon以外でもさらにたくさん売れるだろうし。

あと、今回の「けものフレンズ」は1巻だけではなく、6巻までの全てがベスト20以内(私が見たときで17位まで)に入るという快挙だから、凄いことだよ。

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それにしてもこの「けものフレンズ」のガイドブックと名乗る円盤は、実に面白い。

  1. 円盤という形式ではなく、あくまで「ガイドブック」のおまけとしてBlu-rayを売る
  2. 書籍ルートなので値引きはないが、その代わり割引後の通常の深夜アニメ円盤の相場よりも一回り安い価格設定
  3. ありがちなイベント先行受付のような特典を付けない
  4. 表紙には当然サーバル(+カバンちゃん)を持ってくるかと思いきや、アニメに登場予定もない「トラ」を採用

色々と新しい試みを入れつつ、今回商業的にも成功しつつあるというのは、今後のアニメの「売り方」としても面白いサンプルになると思う。「円盤は安くしても売れない」というのは何度も言われ続けたことだけれども、単純に円盤を安くするんじゃなくて、一旦売り方自体をがっさり変えるような試みとともに値段を安くする、というのは確かにいい方法なのかもしれない。

そしてそれが一大ブームを巻き起こした感のあるこの「けものフレンズ」で行われたというのは、元々売れそうもないという企画だったゆえの偶然の産物なのか、それとも綿密に計算された上の高度な作戦だったのか。まあ前者だろうけれども、「けものフレンズ」という作品を作るにあたって、さまざまな実験が行われたことは明らかだし、おそらく製作者側はかなりの情熱をこの作品に注ぎ込んでいるように思う。

超エコノミーなCG作画とその裏側

円盤は無事に売れているようだが、一方でこのアニメは見るからに低コストだ。5話で猫パンチでバスを運転するサーバルちゃんシーンでも、ハンドルのポリゴンの少なさがよく見えて実に潔いし、よく見るとバスの各パーツも同様だ。

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だが、同じ画面でも決してキャラクターの作画品質が悪いわけではなく、むしろCG作画の他のアニメと比較してもこのサーバルちゃんとカバンちゃんは実に可愛らしい。つまり、低予算を適切に配分して、限られた環境で最大限効果的にコストを配分しているということだ。

また、随所で指摘されていることであるが、フレンズの「動物っぽい」動きに関しても、実に細かいこだわりが見られるのがこの作品の特徴だ。このように、決してやっつけ仕事とは思えない、エコノミーな中でのスタッフの最大限のこだわりが見えるところも、このアニメの人気を支えている一つの要素だと思う。

そういえば1話を最初に見たときでも、木陰でサーバルちゃんの息が上がってるところとか、動きが細かいなぁ、と思ったことを覚えてる。

EDのスタッフリスト見ると、少なくとも第1回から第6回まで、作画監督1人に作画のスタッフ5人と、美術のスタッフ4人の合計10人が、毎回全て一緒である(作監以外全員女子っぽい名前というのがなんかリアル「NEW GAME!」な光景を想像させられてゲフンゲフン)。

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つまりおそらくこの10人で、30分アニメ1クールのすべての作画関係を回しているということであり、実にエコノミーだ。CGを使えばここまで少人数で(つまり安く)それなりのクオリティのアニメを国内で制作することが可能で、さらにそれが商業的に成功した実例ができたということであり、所謂「万策尽きた」現象が昨今蔓延している深夜アニメの世界に、この新たなやり方の与えるインパクトは大きいのではないか。

CGWORLDの2017年3月号に、4ページではあるものの「けものフレンズ」のCGに関する記事が掲載されている。Kindle Unlimited対象なので、会員の人なら無料で読める(個人的には、CGWORLDとMdNが毎号読めるだけでKindle Unlimitedは十分ペイしていると思っている)。

読んでみると、少人数体制や2Dの活用など、いかにコストパフォーマンスを意識したアニメ制作がされているかがよくわかるが、ついでにメデイアミックスの裏側に関するコメントも多少あり、先述のねとらぼ的な素朴な疑問にもある程度答える内容になっている。

曰くこんな感じ。

  • メディアミックスプロジェクトとしてのけものフレンズは2014年春スタート。アニメに関しては2015年初めからR&Dやアセット制作に着手。
  • 吉崎観音氏は「コンテンツ形態に応じて自由に拡大解釈してもらって構わない」というスタンス。
  • 絵コンテは使わず、スタッフ総出でビデオコンテを作っている

制作プロセス・体制も少人数チームに合わせた機動性のある形で制作されているというのがわかって、なかなかに興味深い。それにしても本来は「ゲームが流行る!」→「漫画も受ける!!」→「シメにアニメ化!!!」を狙っていたのだろうけれども、実際は最初の段階でコケて敗戦処理的になるはずだったアニメ版がまさかの大受け、というねとらぼ説がほぼ正しいんだろうな感。

アニメに関しては2015年時点ではR&Dやアセット制作をしていたとのことなのだが、実際の脚本が作られたのがいつなのか気になるところ。ゲーム版が無料化したのが2016年春とのことなので、そのあたりではおそらくもうゲームの終了が決まっていたはず。仮にその場合だと「ゲーム版の終了を前提とした脚本」が書かれた可能性はかなり高いように思われるがどうだろうか。

だとすると、仕方なく「アニメ開始直前まで動かしておくか」的な感じではなく、やはりアニメの演出としてゲームを直前まで動かしておいた可能性もあるように思え、なかなか趣深い。何しろ、スマホ用ネットゲームのサービスなんて、いくら過疎化していたとしても、動かすだけでそれなりに金はかかっていくのだから。まあ、そういいつつも前者のパターンだとは思うんだけど(笑)。

4, 5, 6話、そして次の7話へ

さて、ストーリーの内容に軽く戻ることにする。前回は1〜3話までを語ったので、今度は4〜6話をいってみよう。起承転結の「承」、全12話の折り返し地点までだ。

先述の通り、4話ではいきなり不穏な背景設定が次々と顕在化した。スナネコの巣から繋がる「バイパス」は無味乾燥なトンネルで、おそらくジャパリパークというテーマパークのバックヤードとして作られた施設。真っ暗なトンネルで平然と「ここからも図書館に行けるよ」と語るボスがなんか怖い。

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ここから繋がる迷路でツチノコと会い、望まぬ脱出ゲームをすることになるのだが、出口がことごとく「溶岩」で塞がれている。この「溶岩」に関してはツチノコは「例の異変」と語っている。

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そしてこの過程でツチノコはカバンちゃんの正体に気がついたようで、「お前…もしかして」「あいつ…絶滅していなかったのか…」と恐ろしいことをつぶやく(ツチノコに絶滅を語られてしまう人間という構図…)。

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つまり、ヒトは既にこの世界では絶滅したと考えられている。それと関係あるかは分からないが、溶岩が大量に噴出する災害があった。溶岩と言えば火山だが、ジャパリパークにおける火山のイメージと言えば、謎のサンドスターを吹く山と関係あるかもしれない。また、脱出ゲームのアトラクションが始まる際のアナウンスは、終わった時にボスが喋った「普通の声」と似ているし、ボスの今度の「普通の声」は前回とは違いいかにも録音然とした感じだった。ツチノコは「ジャパリコイン」を発見して、かつてさまざまなものと交換できていたものであることを説明し、現在ではジャパリまんが同様の通貨の役目を果たしていることを示唆する。セルリアンって青い色から来たと思っていたら普通に赤いセルリアンが出て来るし、謎は増えるばかり。

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なにげにものすごい量の不穏な情報が与えられた4話だったので、ここからブームが加速したというのは実にうなずける(こちら↓の分析、なかなか面白い)。

ckworks.jp

その一方で、5話、6話はわりと平穏に過ぎていく。5話では得手不得手のある複数のフレンズに対して、カバンちゃんが2人でチームを組んで作業に当たることを提案して、その結果として見事なログハウスができあがる(カバンちゃんいいマネージャーだ)。6話では妙な闘いに明け暮れるフレンズたちに、危険な戦いをする代わりにスポーツで決着をつけることを提案する。

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…のだけれども、5話ではサーバルの猫パンチ運転でせっかくの材木を流されたアメリカビーバーが「はかせにジャパリまん3ヶ月分わたさないと…(カジカジ)」と謎のセリフを木を齧りながら喋る。

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そして6話ではついにハシビロコウがカバンちゃんに「あなた…もしかして…ヒト?」という、核心をついた質問を発してしまう(ついでに言うと、この背景の巨大なタイヤ状のオブジェも謎だ)。

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おまけにアライさんは5話では「お宝が呼んでいるのだ」と謎の発言をしているし、なんと6話ではカバンちゃんの帽子のもう1枚の羽根を持っている(アプリ版や漫画版でジャパリパークのガイドさんがかぶっている帽子には青と赤の羽根がそれぞれ1枚ずつ付いている)。

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緩急をつけつつも、毎回何らかの謎ネタを仕込んでくることは忘れない。実にいい脚本だ。

そして次回の7回はなんと「じゃぱりとしょかん」。起承転結の「転」。それにしてもてっきり終盤で図書館に着くのかと思えば、折り返した途端に図書館なのか。ストーリーは公式サイトによると…。

やっとこさ図書館へ到着。そこでフクロウ科のコノハ博士とミミちゃん助手に出会い「かばんのルーツを知りたいなら何か美味しいもの食べさせろ!」と突然の料理バトルに?

www.tv-tokyo.co.jp

ついに「はかせ」が出てくるのか…ってそんなことより、なんと「料理バトル」ですと! 料理っていうか、そもそも今までこの作品で食べ物らしきものってジャパリまんしか出ていないじゃん。とは言ってもさすがに、

「ビーフ!」
「それはフレンズだよー」
「チキン!」
「それもフレンズだよー」

なんてブラックなネタになることはないと信じているんだけれども、どうするつもりなのだろう。ベジタリアン料理にするのか、ジャパリまん料理にするのか…。そしてついに明らかになるのかジャパリまんの秘密が!? ジャパリまんはいわゆるマナなのか、それともソイレント・グリーンなのか。乞うご期待。

それにしてもロストテクノロジーとか世界の秘密とか知ってそうな図書館っていうと、やはりどうしてもこいつを思い出してしまうのだけれども。

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ミノシロモドキこと、国立国会図書館つくば館自走型アーカイブ
新世界より」第4話

不穏だ…。