xckb的雑記帳

身の回りにあったことを雑多に語ります。

ついに「大正・昭和琉球諸島地形図集成」を入手

先日、ブラタモリ那覇編にかこつけて長虹堤のことを書いたときに参照した資料に、「大正・昭和琉球諸島地形図集成」(1999)というものがあります。こちら、戦後沖縄が米軍占領されたときにGHQによる押収を免れた、貴重な大正・昭和初期の沖縄県の1/25000, 1/50000縮尺の地図をまとめた地図集なわけです。ごく普通のあの国土地理院が発行しているようなサイズの地図が製本された巨大な本です。

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この本、かれこれ10年ほどずっと手に入れたいと探していたのですよ。ただ、こんな巨大(45.5 × 62cm、A2とB2の間)かつ高価(定価・税抜70,000円)な書籍の性質上、おそらく買ったのはほぼ図書館のみと想像され、それ故にずっとヤフオクに入れていたアラートも一度も鳴らず、時々チェックしていたAmazonのマーケットプレイスにも一度も出品されているのを見たことがありませんでした。最初にこの本を発見したとき(たしか13年くらい前)はAmazonに普通に新品の在庫があったのですが、あの時価格にビビらずに買っておけばよかった!と思うのも後の祭りです。

結局、某大学図書館の禁帯出の大型書籍室で、製本されているためスキャナによる正確な複写も難しい状況で資料として扱わざるを得ず、色々と残念な感じだったのであります。

そんなわけで、すっかり諦めたいた昨年のクリスマス頃、ふとAmazonマーケットプレイスにこの本が入手可能になっていることを発見したわけです。多少のプレミア価格がついていたので少々悩んだのですが、やっぱりこれはクリスマスプレゼントfor myselfということでポチリ。というわけで翌日に早速届いたけれども、やっぱり自宅にあると図書館で見たときよりもさらにでかくて重い気がする!

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状態はかなりいい感じです。

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トンボまでついていたのですが、ここで残念なことに欠品発見。この本には解説の小冊子が添付されてきていたはずなのですが、それが付いていない。マーケットプレイスの古書店には連絡したのですが、入手時からなかったし、版元でも在庫がなく小冊子のみの販売は出来ないとのこと。まあ、これだけ希少なものだと返品する気もないし、小冊子は図書館で閲覧・複写可能だし、ちょい残念だけどまあいいか、的な感じです。

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いや、それよりなにより本体の内容ですよ。1/25000のある地域は沖縄本島中部から南部にかけての13枚。この概要図は1999年現在の地図に重ねて描かれているので、今の地形との対応が取りやすくなっています。

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全ての地図には「軍事極秘(戦地ニ在リテハ軍事秘密トス)」の文字が。まあ実際に、沖縄戦中に伊豆見小学校の校長が1/50000の地図を1葉持っていたことで、スパイとして処刑されたなどの事件もあったようです(こちらの資料によると、この本の添付の小冊子に書かれているらしいけど後で確認します)。住んでいる場所の地図が自由に手に入れられない状況というのは、現在ではなかなか想像ができないのですが、地図が自由に利用できるというのは、平和の証拠というわけですね。

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那覇界隈の1/25000図に関しては、先程も触れた長虹堤の話題の時に色々やってみたので省略します。那覇から少し南西側に目を向けると、現在那覇空港が存在している場所の大正時代の地形を見ることが出来ます。これを現在の地図と見比べて分かるのは、想像していたよりあまり大規模な埋め立てをしていないということ。滑走路南端先にある瀬長島を目印にしてみるとよくわかると思います。それにしても、大正時代だと瀬長島は正真正銘の離島だったのですね。

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そういえば最近瀬長島とか全然行ってないから、那覇空港に着陸する飛行機の綺麗な写真とか撮ってないなぁ。

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本島中部まで1/25000図はあるので、海中道路のない頃の平安座島、宮城島、伊計島あたりの図もあります。現在の図と見比べてみると、特に凄いのが平安座島の石油備蓄基地。ここに行く度に、宮城島との間の海、狭いなぁ、と思っていたら、実は宮城島ギリギリまで埋め立てしていたんですね。あと、平安座島の山の上の方までもタンクが並んでいる部分は、昔から島の一部だった場所だったのですね。

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あまり自分で撮った綺麗な平安座島の写真がなかった。しかも表側からなので石油備蓄基地がほとんど見えない。

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嘉手納基地のあたりも、まだ基地が存在しない状態を見ることが出来ます。現状では存在しない道筋や、聞いたこともない集落名が確認できます。嘉手納基地が飛行場として整備されたのは1944年9月、帝国陸軍の飛行場として開設されたのですが、翌年の沖縄戦で真っ先に米軍に占領されてしまったのですよね。大規模な飛行場として整備された現在より、地形の凸凹が結構あるように見えます。

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まあ、嘉手納基地は少なくとも当分の間は返還とかは考えられませんので、この滑走路の下に埋もれた街とか、もう少しよく地図を読み込んでみたいと思います。

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1/50000図では、離島も含めた沖縄県全体がカバーされています。こちらも、私が注目した場所をいくつか紹介してみましょう。

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まずは、離島もあるということで、尖閣諸島を見てみましょう。こちらは魚釣島と北小島、南小島。

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同じく尖閣諸島の久場島は、「黄尾嶼」と琉球王国時代の公式名(そして現在中国側が呼んでいる名前でもある)で記述されています。

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尖閣諸島・大正島も、「赤尾嶼」と琉球王国時代の公式名で記述されていますが、こちらは大正島の名前もカッコ付きで併記されています。

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池間島を見たいなぁ、ということで宮古島北部を見てみると…ぎりぎり外れてた。

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ということで、伊良部島の北を見てみると…ありました。現在の池間島の形とは全く異なった形となっており、日本最南端の湿原となっている池間湿原は、この頃ただの湾だったことがわかります。おそらくとても綺麗な湾だったんだろうなぁ。現在シュノーケリングポイントとしても有名なフナクス(船越)のあるあたりは非常に狭い陸地だったことが分かります。さらに以前はどうだったんでしょうね。独特の文化を持つ池間島の祭祀などは、現在の池間島の姿ではなく、この昔の姿をベースに考えたほうが良いのではないか、などと思います。

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池間島・フナクスの岩。多分聖地。

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ちょっと下を見るとこんな感じの海です。素晴らしいですね。

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前回行ったときは池間島に宿泊して色々と満喫したのですが、ぜひまた一度泊りがけで行ってみたいと思っている、色々と独自の文化を持った興味深い離島です。

池間島と同様、現在は宮古島に橋でつながっている来間島ですが、当然ながら橋はありません。これを見ると現在の前浜ビーチ辺りから渡し船があったんですかね? さぞかし綺麗だっただろうなぁ。

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来間大橋から前浜ビーチを望む写真がありました。また行きたいなぁ。

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などと、さらっと見るだけで色々な発見があります。ところでこの本の装丁、厚手のファイルみたいな感じなので、このネジの部分を外したら分解できるのかな?

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なんかドライバーか10円玉で外せそう。

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さすがに大学図書館の禁帯出大型本でこのネジをいじる勇気はなかったのですが、自分で買ったならありだよね。個人的な趣味として、きちんと正確な電子化をしておきたいのです。色々と面白いデータとして楽しめそうです。

というわけで、手に入ってよかった。最高のクリスマスプレゼントでした。